アグリゲートEMS「Shizen Connect」がEVのスマート充電機能を搭載

~経産省令和3年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた 実証事業でのV2H機器などを用いた実証を完了~

2022.03.14[プレスリリース]

自然電力株式会社(本社:福岡県福岡市、代表取締役:磯野謙、川戸健司、長谷川雅也、以下「自然電力」)は、アグリゲート・エネルギー管理システム「Shizen Connect」が電気自動車(EV)のスマート充電機能を搭載したことを発表します。また、経済産業省の「令和3年度蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」(※1)による、本スマート充電機能および需給調整市場における一次調整力を想定したガバナフリー制御の実証(以下、「本実証」)を完了したことをお知らせいたします。

EVスマート充電機能について
EVの普及に伴い、電力小売事業者は、電力卸市場の価格が高い時間での電力需要が増加することで収益性を圧迫するおそれがあり、電力系統運用者は電力網の逼迫を送配電設備に巨額を投じることなく回避しなくてはならないという課題があります。

こうした状況を見据え、自然電力は経済産業省の「分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業」の一環としてアグリゲート・エネルギーマネジメント・システム「Shizen Connect」にてEVスマート充電機能を開発・実証しました。

図1:スマート充電機能のイメージ 

Shizen ConnectのEVスマート充電機能は、EV普通充電器やV2H機器(※2)を遠隔制御することで、以下の3点を達成することが可能です。

① 小売事業者の電力市場からの調達コストを軽減する
② 電力網の負荷を軽減し、再生可能エネルギーの利用を促進する
EVの所有者の電気代を節約する

1.EV普通充電器のスマート充電
EV普通充電器を遠隔制御することで、電力市場価格の高い時にEVと充電コンセントをつないでいても、料金の安い時まで充電しないようにする機能です。これにより小売事業者は電力市場からの調達コストを軽減できます。

2022年126日に実施した実証では、約57%の卸市場からの調達コスト削減を実現しました。

図2:EVスマート充電機能の実証によるコスト削減効果

本実証では、EV利用者は14時から17時の間EVを利用して外出して1.3kWh消費したのち、帰宅後の17時よりEV充電器へ接続しました。満充電には、通常では40.7円(17時からの卸市場価格は30.71/kWh)かかるところ、Shizen Connectのスマート充電機能を介すことで17.6円(2330分からの卸市場価格13.25/kWhで充電)に抑えることができました(※3)。

2.V2H機器のスマート充電
V2H機器の遠隔制御では以下の3つの機能を搭載し実証しました。

① 電力市場価格の値差を利用した充放電制御
市場価格が安い時に充電し、高い時に放電を行う制御です。普通充電器が充電を切り替えるだけなのに比べ、V2H機器のスマート充電は放電もでき更に高いメリットを創出できます。

2022年126日から27日に実施した実証では、EV充電分だけでなく全体の電力量使用料金に対して、約30%のコスト低減効果が実証されました。卸市場からの調達コストの低減が約20%で自家消費の増加による約10%の需要家のコスト削減を実現しています。


図3:V2H機器スマート充電機能の実証における全体の調達コスト削減効果

オール電化契約で一般的な季節別時間帯別料金に最適化する充放電制御
市場価格に対しての制御だけでなく、需要家の電気料金プランに対しての最適化も実証しました。

1月26日から127日に実施した実証では、V2H機器のグリーンモード(※4)に対して、約18%のコスト低減効果が実証されました。


図4:V2H機器スマート充電機能の実証におけるコスト削減効果(季節別時間帯別料金の場合)

季節別時間帯別料金を利用するV2H機器保有のオール電化家庭にて、両日とも14時から17時の間EVを利用して外出 (それぞれ1.1kWh1.5kWh利用)した際、V2H機器のグリーンモード(※4)での電気代が486円だったのに比べ、制御を行うことで399円に抑えることができました。

図5:V2H機器の遠隔制御

③ 一次調整力を想定したガバナフリー制御
ガバナフリー制御とは、数秒程度の周期の負荷変動に対し、自端で周波数(回転数)の変化を検出し、発電機の充放電の出力を増減させる制御であり、需給調整市場の一次調整力に相当する制御を指します。本実証ではV2H機器を制御し、ガバナフリー制御の技術的実現性を達成しました。

今後の予定
Shizen Connectのスマート充電機能は需要家および卸市場からの調達コストに悩む小売電気事業者を主な対象としており、更にインバランス(※5)回避や容量拠出金(※6)の低減といった機能も、今年中に正式機能として搭載することを計画しています。

自然電力は、自然エネルギー100%の世界を目指すため、デジタル技術を活用した分散電源の制御によるVPP(※7)やマイクログリッド(※8)の構築などのEnergyTech事業を推進しています。今後も地域における分散型電源の普及を通じて、“自然エネルギー100%の世界”の実現を加速させてまいります。

 

※1 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業:採択時のリリース(https://www.shizenenergy.net/2021/06/25/feasibility_study_der/
※2 V2H (Vehicle to Home) :EVへの充電だけではなく、EVから家庭へ電気を送ること。また、災害時にもEVから給電することにより普段と同じように家電等を使用することができる。
※3 EV普通充電器のスマート充電の実証は2022年1月26日に行い、同日の電力量料金で試算しています。
※4 グリーンモード:自家発電し充電した電気を、なるべく自家消費する運転モード。
※5 インバランス:計画値と実績値の差異のこと。その差分に対して支払う必要があるペナルティ要素を含んだ料金を「インバランス料金」という。
※6 容量拠出金:4年後の供給力(kW価値)を入札で確保する容量市場にて、落札された発電所の容量に応じて、一般送配電事業者および小売り電気事業者が負担し、発電事業者へ支払われる金額。
※7 VPP (Virtual Power Plant):分散する電源(発電設備、蓄電池、EVなど)や需要設備をあたかも一つの発電所のように集合制御するデジタル技術の総称。
※8 マイクログリッド:平時は電力系統に接続するが、災害時には遮断して内部の電力設備で自立できるように設計された小規模な電力設備および需要設備の電力システム。

 

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