サーキュラーエコノミーとは|意味・企業への影響・国内の事例を紹介

サーキュラーエコノミー(循環経済)は、限られた資源を持続的に利用し、廃棄物を最小限に抑える新しい経済モデルとして注目を集めています。企業にとっては、事業活動が環境へ与える負荷を減らすだけでなく、資源効率の向上や新たなビジネスチャンスの創出にもつながる重要な戦略です。本記事では、サーキュラーエコノミーの基礎知識と企業にもたらす影響、国内企業の事例を紹介します。

サーキュラーエコノミーとは

循環経済とも呼ばれるサーキュラーエコノミーは、資源の投入量や消費量を抑えて効率的に活用しながら、廃棄物の最小化につなげる経済活動です。ここではサーキュラーエコノミーの重要性や基礎知識について解説します。

サーキュラーエコノミーの重要性

サーキュラーエコノミーでは、これまで取り組まれてきた3R(リデュース・リユース・リサイクル)に加えて、Renewable(バイオマス化・再生材の利用など)の取り組みによって資源循環を目指します。これにより、製品のライフサイクル全体における温室効果ガスの排出低減につながり、カーボンニュートラルへ近づくことが期待できます。
資源の効率的・長期的な利用は、新たな天然資源の投入量・消費量の抑制にもつながります。資源を採取したり、製品を生産したりする際の生物多様性や大気・水・土壌などの汚染を防ぎ、自然環境への影響を最小限に抑えられることから、サーキュラーエコノミーが重視されています。

サーキュラーエコノミーの3原則とは

イギリスのサーキュラーエコノミー推進機関であるエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーについて3つの原則を定義しています。

・Eliminate waste and pollution:廃棄物と汚染をなくす
・Circulate products and materials (at their highest value):製品・材料を循環させる
・Regenerate nature:自然を再生する
出典:サーキュラーエコノミーとは(エレン・マッカーサー財団)

従来のリニアエコノミー(線形経済)は、使い捨てを基本とする大量生産・大量消費型の経済であり、廃棄物も大量に排出されることから、気候変動問題・天然資源の枯渇・大規模な資源採取による生物多様性の損失などのさまざまな環境問題の原因になり得ると指摘されてきました。
一方、サーキュラーエコノミーでは、まず廃棄物の発生を止めるプロセスから入り、資源の循環利用を基本としています。廃棄を前提としていない点がリニアエコノミー(線形経済)と異なる部分であり、今までの経済社会活動に代わるものとして世界中で注目されています。


出典:資源循環政策の現状と課題 p.1(経済産業省)

サーキュラーエコノミーに取り組まない場合の損失

近年の世界人口の増加と経済成長に伴い、資源の需要はますます増え、将来的な資源の高騰や安定確保が難しくなる可能性が指摘されています。また海洋環境が悪化し、「2050年には海の中のプラスチック量が魚よりも多くなる」という推計もあります。国内外のごみは今後も増え続ける見通しで、自然資源の枯渇や水質悪化は喫緊の課題となっているのです。
サーキュラーエコノミーに取り組まないと、近い将来に資源が底をつき、自然環境の破壊による異常気象の発生なども考えられます。企業が製品・サービスを提供するうえで必要な材料の確保が難しくなるなど、企業活動にも深刻な影響を及ぼす可能性があるため、環境問題に対する企業のコミットメントはますます重要となっています。

サーキュラーエコノミーに向けた日本政府の取り組み

サーキュラーエコノミーの実現に向けて、日本ではどのような取り組みが進んでいるのでしょうか。


出典:資源循環経済政策の現状と課題について p.41(経済産業省)

1900年代から、日本はリサイクルに着目した政策を進めてきました。1999年からはさらに規制が進み、ごみの削減(リデュース)・製品などの再利用(リユース)が推奨され始め、2020年からはサーキュラーエコノミーへの転換が明確な方針として示されています。以下で代表的な3つの取り組みについて解説します。

「循環経済ビジョン 2020」策定

地球環境の持続可能性を損なう事業活動を長く続けると、将来的な事業継続の重大なリスク要因になる可能性があると指摘されています。循環性の高いビジネスモデルへの転換は中長期的な競争力の確保にもつながるため、政府はあらゆる産業がサーキュラーエコノミーを視野に入れた事業戦略の実践を行うことが重要だと位置づけています。そこで経済産業省は「循環経済ビジョン 2020」を策定し、企業に対しては、下図のような循環性の高いビジネスモデル構築を促します。


出展:循環経済ビジョン2020について(経済産業省)p.7

今後はサーキュラーエコノミーに対する企業の取り組みを評価する指標を設けたり、「サーキュラーエコノミー投資ガイダンス」を通じた投資家への呼びかけなどを行い、さらなる循環型経済への移行促進を目指します。

「循環経済パートナーシップ(J4CE)」

循環経済パートナーシップ(J4CE)は、循環経済への流れが世界的に加速する中で、国内企業の循環経済へのさらなる理解促進、および取り組みの加速化を目指して、官民連携の強化を目的として発足しました。2021年3月に環境省・経済産業省・経団連が創設団体となってスタートしたパートナーシップです。
会員は主に経団連の会員企業・団体と、それ以外の企業・団体でも会の目的に賛同すれば参加が可能です。2024年9月30日時点で、企業187社と20団体が参加しています。国内の先進的なサーキュラーエコノミー実践事例の共有や参加者同士のネットワーク形成などを通して、循環経済の効果的な実施に向けた情報を幅広く提供しています。
2023年には、経団連から「サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言」がなされました。サーキュラーエコノミーに向かう上では、環境に配慮した製品設計のガイドラインが必要不可欠ですが、未だガイドラインが未整備の製品分野も多くあります。また再生材料の品質や安全性に関する基準も検討の余地があり、今後も経済団体と政府が連携して道筋を作り上げることが期待されます。

「プラスチック資源循環法」施行

2021年6月公布、2022年4月施行の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」は、2019年5月に公開されたプラスチック資源循環戦略に基づき、プラスチック製品の包括的な資源循環体制を強化することを目指しています。製品の設計から廃棄に至るまで、あらゆるプラスチック資源に対する循環の取り組み(3R:リデュース・リユース・リサイクルに加え、Renewable:バイオマス化・再生材の利用など)を促進します。

国内企業のサーキュラーエコノミー取り組み事例

サーキュラーエコノミーを実現するため、企業には循環性の高いビジネスモデルの構築が求められています。従来のリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ移行するにあたっては、さまざまなビジネス機会も考えられるでしょう。国内でも、すでにサーキュラーエコノミーの先駆けとなる取り組みが始まっています。ここでは3つの事例について紹介します。

食品テイクアウト容器のシェアリングサービス

NISSHA株式会社とNECソリューションイノベータ株式会社は、2021年から食品テイクアウト容器のシェアサービス「Re&Go(リーアンドゴー)」を開発しました。すでに東京都で実証実験を進めています。飲み物や料理のテイクアウト容器を加盟店で回収し、洗浄・再利用することでまた別の加盟店が利用できるシェアリングエコノミーの考え方に基づいた取り組みで、プラスチックごみと容器を製造する際のCO2排出量削減を目指します。
シェアリングエコノミーとは、物品や空間・個人のスキル・時間などを売買・貸出・共有するモデルです。サービスの利用者である加盟店は、自社でプラスチック容器を所有しなくても清潔な容器で食品を提供でき、環境に配慮しながらテイクアウト事業を継続できるメリットがあります。

衣料品の回収とリサイクル衣服の販売

衣料品店のユニクロは、顧客が着なくなった自社製品を店舗の専用ボックスで回収し、ダウンジャケットなどへのリサイクルや難民キャンプ・災害支援などへのリサイクルなどを実施しています。
ダウンジャケットの場合、回収した服からダウンとフェザーを取り出してリサイクルすることで、生産過程におけるCO2排出量をおよそ20%削減できます。資源を無駄にせず、ごみの量を減らしながら環境負荷を軽減する取り組みとして注目を集めています。

プラスチック製化粧品容器の循環モデル構築

株式会社資生堂、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社の3社は、2022年より、化粧品のプラスチック製容器を回収し、資源化・原料化を経て化粧品容器として再生する循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。
デザイン性・機能性が重視される化粧品容器は、多種多様なプラスチックから作られており、分別が難しいためにプラスチック資源として循環利用しづらいという課題がありました。3社の技術の強みを活かし、微生物の力でプラスチックの原料であるエタノールへの資源化を行い、化石燃料を使わない容器の製造の実現に向けた技術の確立を進めています。資生堂では、容器回収スキームの構築、化粧品容器への再生ポリオレフィンの活用を行っています。

まとめ

サーキュラーエコノミーは、資源の循環利用を通じて環境負荷を軽減し、持続可能な社会を目指す経済モデルです。企業にとっては、廃棄物の削減と環境負荷の軽減、ひいては自社の事業の継続性が向上するといった多くのメリットがあります。
すでに日本国内でも複数の企業がサーキュラーエコノミーの取り組みを進めており、今後のビジネス環境ではサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れることが、企業の持続可能な成長と競争力の向上に欠かせない要素となるでしょう。まずは自社でできることからサーキュラーエコノミーへの取り組みを開始してみてはいかがでしょうか。

【参考】