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CO2排出係数は、脱炭素経営を実現するためにおこなうCO2削減活動の中で重要な意味を持つ数値です。世界中でCO2削減の取り組みが加速する昨今、企業の規模にかかわらず環境に配慮した経営をおこなうことが一般的となりました。この記事で解説するCO2排出係数の意味と企業にもたらす影響、そして具体的なCO2削減策について理解して、自社の取り組みへとつなげてください。
目次
CO2排出係数とは
CO2排出係数とは、様々な事業活動における単位生産量・消費量等あたりのCO2排出量を示す数値です。例えば電力の場合、「電力会社で1kWhの電気を作る際にCO2をどれくらい排出したか」を表す数値です。電力会社が使用する石油・石炭・天然ガスなどのエネルギー源の違いや、地域ごとの電力の需要によって排出係数が決められています。
CO2排出係数が注目される背景
近年、世界的にCO2排出量削減の取り組みが広がっています。日本国内では、政府が2020年10月の総理大臣所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という方針を発表しました。この高い目標を実現するために、産業界も脱炭素に向けた取り組みを加速させることが求められています。
脱炭素に向けた具体的な施策を考えるとき、自社のCO2排出量を把握することは避けて通れません。CO2を排出する事業活動は様々なパターンがありますが、ここでは、一般的に電力に関するCO2排出係数を例として、自社が調達している電力のCO2排出係数がどれくらいなのかを知り、現状を理解することから始めましょう。
CO2排出係数の確認方法(例)
自社が利用する電力会社のCO2排出係数は、環境省のWEBサイトから確認できます。以下は主要な電力会社の排出係数一覧です。自社が契約している小売電力事業者の電力プランごとに確認してみましょう。
電力会社名(抜粋) | 基礎排出係数(t-CO2/kWh) ※2021年度実績、複数メニューの場合は事業者全体 |
北海道電力 | 0.000549 |
東北電力 | 0.000496 |
東京電力エナジーパートナー | 0.000457 |
中部電力ミライズ | 0.000449 |
北陸電力 | 0.000480 |
関西電力 | 0.000299 |
中国電力 | 0.000529 |
四国電力 | 0.000484 |
九州電力 | 0.000296 |
沖縄電力 | 0.000717 |
上記の表で示した数値は「基礎排出係数」といい、電力会社が電気を作る際に排出したCO2の量を、販売した電気の量で割って求めた数値です。一方で、CO2排出係数には「調整後排出係数」という概念も存在します。これは、電力会社が導入したカーボンクレジットや非化石証書などによってカーボンオフセットをしたCO2排出量が差し引かれた係数です。企業がCO2排出量を算定するときは、基礎排出係数と調整後排出係数の両方を使う必要があるため、自社が使用する電力会社のCO2排出係数を把握しておくといいでしょう。
CO2排出係数の把握はなぜ必要?企業経営に与える影響
CO2排出係数は企業の脱炭素経営にどのような影響を与えるのでしょうか。企業に求められる省エネ法・温対法といった温室効果ガス排出量の報告義務についてもあわせて解説します。
脱炭素経営にはCO2排出量の把握が必要
企業のCO2排出量は、Scope1・Scope2・Scope3の3種類の数値を合算して算出されます。
Scopeとは、温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際基準である「GHGプロトコル」の中で設けられている区分です。企業が事業活動で排出する温室効果ガスについてサプライチェーン全体を3つの区分に分けて計算し、CO2排出量を正しく把握するという考え方です。
Scope1:企業が事業活動において直接排出するCO2
Scope1の排出量=活動量✕排出原単位
Scope2:他社から供給された電気・熱などの使用に伴い間接的に排出するCO2
Scope2の排出量=活動量✕排出係数
Scope3:企業の事業活動に関連して他社が排出するCO2で、輸送・通勤・出張・廃棄物処理などの15カテゴリでそれぞれ計算する
Scope3の排出量=活動量✕排出原単位(カテゴリ別)
上記の計算式からもわかる通り、CO2排出量を正しく求めるためにはCO2排出係数の把握が欠かせません。自社のどの部門でどれくらいCO2が排出されているかがわかれば、温室効果ガス削減への具体的な計画の策定ができ、脱炭素経営に一歩近づきます。
「CO2排出量の計算」について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
【関連記事】 CO2排出量を計算するには?計算式とおすすめの排出削減策も解説 |
省エネ法で「エネルギー使用状況報告」が義務化された
省エネ法は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」の略称で、原油換算で年間1,500キロリットル以上のエネルギーを使用する企業に対して、エネルギーの使用状況を報告する義務を定めています。
主な対象は工場などの設備を持つ企業と輸送業を事業の中心とする企業で、エネルギー使用をおさえるための具体策を定め、環境に配慮した事業活動の実現が求められます。省エネ法の対象となるエネルギーは熱・燃料・電気の3つですので、普段からそれぞれのCO2排出係数を把握しておくことが重要です。
温対法で「温室効果ガス排出量の報告」が義務化された
温対法も省エネ法と同じく、年間1,500キロリットル以上のエネルギーを使用する事業者などに対してCO2排出量の報告を義務化した法律です。省エネ法とよく混同されがちですが、それぞれ目的が異なります。省エネ法は「エネルギー使用の合理化」を目指しているのに対して、温対法は「地球温暖化対策の推進」を掲げています。温対法は政府の掲げる「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標により即した取り決めといえるでしょう。
CO2排出係数を知って温室効果ガス削減につなげるには
自社が出す温室効果ガスを削減するには、以下2つのアプローチがあります。
・CO2排出量を減らす取り組みをする
・CO2排出係数を下げる取り組みをする
ここでは、上記2つの視点から、温室効果ガス削減の取り組み方法の例をご紹介します。
再生可能エネルギーの利用
再生可能エネルギーとは、太陽光や地熱、風力、水力などの地球資源の一部からエネルギーを取り出しても短期間に再生するため、永続的かつ繰り返し利用できるエネルギーを指します。自然に存在するエネルギーのため、CO2排出がゼロであることが最大の特徴です。太陽光発電設備の導入など、自社で使用する電気を再生可能エネルギーを使った電気で賄い、直接的にCO2排出量を減らす行動を通じて、環境に配慮した経営をしているとの社会的イメージの向上や、投資家・金融機関などからの信頼度が上昇するなどのメリットがあります。
CO2排出係数の低い電力プランを選ぶ
近年は電力の自由化により、企業も電力会社を選べる時代になりました。それぞれの電力会社が独自のプランを発表しており、CO2排出係数をおさえたものや環境に配慮したものが 存在します。複数のプランを比較し、自社の経営戦略にとって最適なものを選ぶといいでしょう。
エネルギー効率の向上
自社が使用するエネルギーの効率を高めることも、CO2排出量削減につながります。
- 照明や冷暖房は必要な場所、時間帯のみ使う
- 断熱材や遮光カーテンなどを用いて効率的に電気製品を利用する
- 事務所や工場などへの省エネ設備の導入
まずは普段使用している設備の稼働時間を調べ、勤務時間の実態に沿って適切に使用されているか把握しましょう。また社用車や配送トラックをEV車などの環境にやさしいものに変えるのも効果的です。当たり前に使用しているものほど無駄が生まれやすいため、一度チェックしてみるのも一つの選択肢です。
環境証書・クレジットの活用
2021年11月からこれまで小売電気事業者のみに限定されていた非化石証書の購入が電力需要家も可能になったことを受けて、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)」において、電力会社から供給された電気の使用に伴って発生するCO2排出について、環境証書を使って控除を受けられるようになりました。自社でさまざまなCO2排出削減の取り組みをおこなったうえで、さらにCO2排出量を削減して環境保護に貢献したいと考える企業にとっては効果的な手法になり得ます。
自然電力株式会社では、非化石証書やJ-クレジットなどの環境証書の購入をご支援するサービスを提供しています。より具体的な脱炭素の取り組みをおこなうために、環境証書の種類や導入方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
まとめ:脱炭素経営実現に向けて、まずはCO2排出係数を把握しましょう
企業が持続可能な経営を目指すうえで、CO2排出係数を把握し、温室効果ガス削減に向けた具体的な取り組みへと進むことは必要不可欠です。環境保護への貢献は、自社の競争力を高めるだけでなく顧客や取引先の信頼向上にもつながります。今回の記事で解説したCO2排出係数の基礎知識を活かし、自社にできる範囲から取り組みを開始しましょう。