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二酸化炭素(CO2)を回収・吸収し、貯留・固定化するネガティブエミッション技術にはさまざまな手法があります。なかでも海水からCO2を回収する「DOC(直接海洋回収)」に対する期待が高まっています。
本記事では、DOCの仕組みや意義、さらに「DAC(直接空気回収技術)」との違いまで具体的に解説します。ぜひ一読しDOCについて知見を深め、気候変動対策推進の一助としてください。
目次
ネガティブエミッション技術の重要性
ネガティブエミッション技術について基礎的なところから、どのような技術があるのかまで詳しく解説していきます。
ネガティブエミッションとは
2050年カーボンニュートラル目標の達成を促す技術として、近年注目されているネガティブエミッション技術は、英語で「Negative Emissions Technologies」であり、略して「NETs」と呼称されます。光合成などによる生物機能を利用した固定化と、工学的に貯留、または固定化する手法を組み合わせることにより、CO2排出量を実質マイナスにするさまざまな技術のことです。ネガティブエミッション技術は、成熟度や費用などにより大きく異なりますが、CCUやCCUSなどで最終的にCO2貯留を行うものは、すべて該当すると言われています。
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DOC(直接海洋回収技術)とは?DAC(直接空気回収技術)との違いを解説
ネガティブエミッション技術のなかで、近年注目されているのがDOC(直接海洋回収技術)です。ここではDOCの具体的な仕組みや、DACとの違いを解説していきます。
DOCとは海洋からCO2を回収する技術
DOCの正式名称は「Direct Ocean Capture(ダイレクトオーシャンキャプチャー)」といい、海水面表層からCO2を安定的に直接回収するための手法です。海水は大気中のCO2を化学平衡になるまで取り込むため、海水面表層のCO2を人為的に回収することで平衡がCO2を吸収する方向に移動し、再度大気からのCO2吸収が促されます。これを繰り返すことで、DOCによって海水を介して大気中のCO2を回収します。
DACとは大気からCO2を直接回収する技術
DACは、大気中のCO2を物理的または化学的に分離・濃縮する技術で、正式名称は「Direct Air Capture(ダイレクトエアキャプチャー)」です。大気のある場所なら限定的な土地でも活用でき、森林によるCO2吸収の土地面積と比較すると圧倒的に小面積ですむという特徴があります。
【関連記事】 DAC(直接空気回収技術)とは?仕組みや種類、動向や市場規模まで解説 |
DOC(直接海洋吸収)の仕組み
DOCの手法は、大きく分けて次の2つになります。
電気透析型手法
海水の pHを下げてCO2ガスを回収する手法で、透析膜の安定運用技術や異常検出技術の開発が進んでいます。
低エネルギー型手法
自然の力や触媒を利用し、低エネルギー・低コストで海中からCO2を回収する手法です。
DOCとDACの具体的な違い
DOCはDACと言葉が似ており、混同されやすいため注意が必要です。それぞれの具体的な違いは以下のようになります。
名称 | 詳細 |
DOC(直接海洋吸収) |
|
DAC(直接空気回収技術) |
|
DOC(直接海洋回収)の意義
ここではDOCの意義について詳しく解説します。
なぜ海水からCO2を除去するのか
近年の研究で、海はCO2を吸収して酸性化していることがわかっています。海の酸性化はサンゴ礁を破壊し、多くの海洋生物を傷つけます。海からCO2を除去することで酸性化が緩和されるだけでなく、大気中の二酸化炭素の濃度を下げることも可能です。前述したようにCO2を除去した海は、大気中のCO2をより吸収するからです。
また、海水中の二酸化炭素の濃度は大気中の100~150倍だと言われており、大気中から二酸化炭素を直接吸収する技術よりも、低コスト、エネルギー消費を抑えて実現可能なことも期待の高い要因です。
海がCO2を吸収する3つの仕組み
海がCO2を吸収する仕組みには、次の3つが挙げられます。
- 海水の物理化学的性質によるもの。これは「溶解ポンプ」とも呼ばれる大気中のCO2が海面で海水に溶け込む過程のこと
- 海草や海藻などの海洋植物が光合成によってCO2を吸収する生物活動によるもの
- 海水が地球の海洋を長い時間をかけて循環する海洋大循環現象
海洋国日本のポテンシャル
日本は四方を海にかこまれた島国で、海の面積(領海およびEEZ)は、約447万km2と世界有数の広さを誇ります。そのためDOC開発に対して非常に高いポテンシャルがあります。また現在日本で開発促進されている洋上風力発電と組み合わせ、余剰電力でCO2を回収するシステムの研究も進んでいます。
DOC(直接海洋回収)の課題
ここではDOCの課題についてご紹介していきます。
社会受容性の問題
DOCの実証例はまだ少なく認知度が低いため、開発において海洋関係者や環境への懸念が想定されます。三菱総合研究所の市民意識調査によれば、技術やリスク・便益、実施責任意識についての説明や取り組みを行うことで、市民の理解を得られる可能性が示唆されています。社会実装を見据え、開発者は社会との丁寧な対話の場を構築することが重要です。
海外と日本のDOC(直接海洋回収)技術動向
DOCに対する海外と国内の技術開発の動向を解説していきます。
企業開発事例
海外と国内のDOC開発事例をご紹介します。
オランダ:Brineworks(ブラインワークス)社
アムステルダムを拠点とするBrineworks(ブラインワークス)社は、電気分解を用いて水分子を酸素と水素に分解するDOC技術を開発。大規模に稼働した場合は、二酸化炭素1トンあたり100ドル以下で回収できると発表しています。
アメリカ:Captura(キャプチュラ)社
カリフォルニア工科大学(Caltech)から独立したCapture(キャプチュラ)社は、海水からCO2を抽出する方法として電気透析の技術を採用しています。電気透析は、海水を酸性化して海水中に溶解しているCO2を放出させ、膜で回収する仕組みです。米国エネルギー省や、ノルウェーの企業などから支援を受けており、ハワイで年間1,000トンのCO2を除去するパイロット・プロジェクトに取り組んでいます。
オランダ: Sea02社
Sea02社は、電気透析を利用してCO2を海水から分離するDOC技術を開発しています。一度回収したCO2は隔離、もしくは再利用をしています。2024年中に250トンの炭素を除去し、2045年までに除去量を100万トンまで増加させることが目標です。
日本:三菱電機
三菱電機株式会社は、グローバルレベルでの気候変動問題の解決に向けて、海水から積極的なCO2の除去・回収を行うDOC技術の開発を推進することを発表しました。そのため北欧最大の総合研究所である「VTT Technical Research Centre of Finland Ltd.(VTTフィンランド技術研究センター)」と協業し、開発を推進します。
まとめ
ネガティブエミッション技術のひとつとして期待の高いDOC(直接海洋回収)について、詳しく解説しました。ネガティブエミッション技術の基礎的な知識からDOCの仕組み、DACとの違いまでご理解いただけたのではないでしょうか。
カーボンニュートラルを達成するためにも、ネガティブエミッション技術の研究・開発はますます重要になります。DOCにおける海洋国日本のポテンシャルは高く、将来的な技術や市場の拡大が期待されます。