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EV(電気自動車)市場は、カーボンニュートラルの実現に向け世界各国で拡大を続けており、市場規模は2023年時点で、5,004億8千万米ドルに達しました。 一方、日本のEVの普及はまだ伸びしろがあり、自動車市場のEV販売の占める割合は低い状況が続いています。
今回はモビリティ分野の脱炭素推進に重要であるEVの市場について、世界や日本の動向から、今後の市場拡大に期待が持てる商用EVの状況など、網羅して解説します。
目次
世界と日本のEV市場の動向
自動車産業の100年に一度の産業変革を表す言葉として「CASE」が注目されています。「CASE」とは、「Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)」のことです。車の新領域を表す言葉であり、これにより車の概念は大きく変わろうとしています。
なかでもEV(電気自動車)の導入は急激に加速しており、各国の環境政策や産業政策と密接に関連し、めまぐるしい変化を遂げています。
EV(電気自動車)とは
電気自動車のEVとは「Electric Vehicle」の略であり、広義には動力の一部に電気を使用している自動車全般を指します。EVは大きく分けて次の4つのタイプがあります。
BEV(Battery Electric Vehicle) | バッテリータイプ |
HEV(Hybrid Electric Vehicle) | ハイブリットタイプ |
PHEV(Plug in Hybrid Electric Vehicle) | プラグインハイブリッドタイプ |
FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle) | 燃料電池使用タイプ |
なぜEV(電気自動車)なのか
2021年に行われたCOP26では、2050年のカーボンニュートラル実現と、さらに2030年に向けての野心的な対策が求められました。これにより世界の主要各国はさまざまな取り組みを開始しており、EV推進もその一つです。例えばアメリカは2030年にEV・PHV・FCV 導入50%達成、英国は2030年にガソリン車、2035年にハイブリッド車の新規販売禁止などのEV比率目標を掲げています。環境省の資料ではEVはガソリン車と比較すると、CO2排出量を52%削減可能な試算結果が出ています。さらにEVの使用電力を再生可能エネルギーにすることで再エネ設備導入の促進にもつながります。これらの要因からEV普及は、地球温暖化対策の鍵の一つと言われており、各国で開発が進んでいます。
世界のEV普及率
自動車産業調査マークラインズが2023年実施した世界62カ国900万台以上のEVを対象にした調査では、世界の大手メーカーEV販売台数トップ5は、次のようになっています。
【2023年世界の大手メーカーEV販売台数シェア】
順位 | 国名 | 企業名 | シェア(%) |
1 | アメリカ | テスラ | 19.3% |
2 | 中国 | BYD | 16.0% |
3 | ドイツ | VWグループ | 8.0% |
4 | アメリカ | GMグループ | 6.6% |
5 | 中国 | 広州汽車集団 | 5.2% |
世界の主要EVメーカーは、現時点でアメリカと中国が約35%を占めています。次に世界の新車販売台数に占めるEVの比率を見てみましょう。2023年時点で世界のEV普及率は18%で、上位5ヶ国はEU諸国が占めています。
【2023年各国新車販売台数におけるEV普及率】
順位 | 国名 | EV普及率 |
1 | ノルウェー | 93% |
2 | アイスランド | 71% |
3 | スウェーデン | 60% |
4 | フィンランド | 54% |
5 | デンマーク | 46% |
1位のノルウェーは2025年に新車販売をすべて、ガソリン車からEVまたは燃料電池車(FCV)へとシフトする予定です。EU諸国だけではなく、アメリカや中国、日本もガソリン車の販売を規制し、EVをはじめとしたゼロエミッション車を導入する目標を立てています。
日本のEV普及率は?
一方、日本のEV普及率は2023年時点で1.66%(約4万4,000台)に留まっています。PHEVを含めても3%台で推移しました。要因としては、EV自体の購入価格が高いことや、航続距離が短い、充電インフラの不足などが挙げられます。EV車を運転するドライバーは多くの場所に公共充電施設を必要としていますが、現状日本は約4万口( 2024年3月時点)しかありません。こちらは詳しく後述します。
EV市場の現状とインフラ普及率
EV市場の中でも近年拡大しているのが、商用EV市場です。またEVの普及には充電設備などのインフラの整備が欠かせません。ここでは、需要向上が期待される商用EV市場や世界のEVインフラ普及率について解説します。
商用EV市場の拡大
世界でEV市場が拡大するなか、特に商用EVの市場の伸びには目を見張るものがあります。2022年、小型商用EVの世界販売台数は前年比2倍の約31万台に増加し、小型商用車市場でのEVシェアを拡大しました。アジアにおいてその傾向が強く、韓国は27%、中国では15%の販売シェアを示しています。欧米においても、ドイツの「メルセデス・ベンツ」やスウェーデンの「ボルボ」、アメリカの「ゼネラルモーターズ(GM)」などの主要メーカーが新モデルを開発し、EV小型トラック、EVバス、EVトラックなどの商用EVの投入が行われています。
各国の主要メーカーがこぞって商用EV市場に参入する理由として、経営コストの削減が挙げられます。電気はディーゼル燃料よりも安価なため、長期的に見て企業利益の向上が可能です。またEV車両は騒音や振動、排気ガスが少ないことや、ディーゼル車に比べて部品点数が少なく機構がシンプルであることから、低床・フルフラット構造での設計がしやすく、運転するドライバーにとって快適性・利便性の高いEV車が選択されるようになっているという背景もあります。
世界と日本のEVインフラの現状
EVは電気を動力とするため充電のためのインフラが不可欠です。ここでは海外の主要国と日本のEVインフラの現状を解説していきます。
アメリカ
充電インフラの不足がアメリカのEV普及の停滞要因と言われていますが、2024年時点で約14万5,000の公共充電施設あり、アメリカ全土での公共充電施設は着実に増加しています。またテスラ以外のEV所有者が、テスラのスーパーチャージャー(NACS)を利用できるようになったことで、EV販売台数の伸びが期待されています。
中国
EV大国である中国は、世界で最も充電インフラの設置数が多い国です。さまざまなタイプの充電インフラシステムを構築しており、「中国電気自動車充電インフラ促進聯盟(EVCIPA)」によると、2023年時点における全国の充電インフラは累計720.8万基、そのうち公共充電スタンドが227.2万基、個人用充電スタンドが493.6万基にも上ります。
EU
EV普及率が高いEUではEV充電インフラ網も非常に発達しており、2023年にはEU27カ国では前年比で38.0%増の59.2万基に拡大しました。充電器のほとんどは、EVの急速充電器を管理する国際標準通信プロトコルに対応しています。またほとんどの充電器には、EV充電時に電力負荷をかけ過ぎないなどの、エネルギーマネジメントシステムが搭載されています。
日本
日本では、2023年度末(2024年3月)時点で、約4万口の充電器が整備されています。急速充電器は、前年度末と比較して約1,100口増加し、1万口を超えました。また普通充電器は、集合住宅などで前年度末から約5,800口増加するなど、合計3万口が整備されています。さらに政府が掲げる「グリーン成長戦略」において、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」ことを目指しています。
EV市場の将来的な見通しは
EV市場はすでに導入期から普及期へと急拡大しています。各国の政策や日本の政策から、EV市場の将来的な見通しについて解説します。
中国製EVへの関税強化
2024年アメリカはこれまでの25%から100%に関税を引きあげ、中国製EVの大量流入を防ぐ予定です。カナダ政府もこの動きを追い、同年8月中国のEVに対して100%の関税を追加で課すことを発表しました。これにより中国のEV市場席捲を防御するのが両国の狙いです。中国はこのような「一方的な関税の引き上げに一貫して反対する」姿勢を示しており、対抗措置をとることを示唆しています。
欧州電池規則
欧州電池規則の目的は、EU内で販売される電池のライフサイクルの流れを規制し、サステナブルな製品供給を可能とすることです。対象となる製品は、自動車用・産業用・携帯用などのEU域内で販売される全てのバッテリーで、電池だけでなく蓄電池も含まれます。規則の目的はバッテリーの環境負荷低減ではありますが、背景にはEUがEVバッテリーの主導となってEV市場を席巻したいという思惑があることは否めません。
このように各国はこぞってEV市場の主導権を狙っています。世界のEVシフトは着々と進行しており、将来的にEVが自動車市場の中心に位置づけられる可能性は高いといえます。
【関連記事】 欧州(EU)電池規則とは|内容・日本企業への影響をわかりやすく解説 |
日本のEV市場対策は
日本政府は新車販売の100%電動化を目指し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円の「グリーンイノベーシ ョン基金」を造成することで企業支援を計画しています。ここでは日本のEV支援対策についてご紹介します。
日本は2035年に新車販売を100%電動車に
日本はグリーン成長戦略において、乗用車は2035年までに、新車販売でEV100%の実現を掲げています。小型の商用車については、新車販売で2030年までにEV20~30%、2040年までに水素で走る燃料電池自動車なども含むゼロエミッション車100%を目指します。大型車については、2020年代に5,000台の先行導入を目指すとともに、2030年までに2040年のEVの普及が目標です。
日本の商用車の電動化促進事業
国土交通省・経済産業省との連携事業として、「商用車の電動化促進事業」を実施。商用車の電動化のための車両及び、充電設備の導入に対して補助を行うことにより、車両の価格低減やイノベーションの加速を図ります。それにより、自動車から排出されるCO2量を削減し、価格競争力を向上させることが目的です。
まとめ
EV市場について、世界の動向や現状、日本のEV支援対策まで網羅して解説しました。EV市場は、今後ますますグローバルに競争が激化することが予想されます。地球規模の環境政策や、日本経済の未来を考えたとき、EVについての動向や現状を知ることは企業にとって非常に重要です。
【参考】 |