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グリーンファイナンスとは、企業が地球温暖化対策などの環境への取り組みを行う際に資金調達ができる債権や借入のことです。近年の脱炭素経営への意識の高まりから、国内でも導入する企業が増えています。今回はグリーンファイナンスの概要とメリット、導入事例について解説します。
目次
グリーンファイナンスとは
グリーンファイナンスは、環境問題への取り組みに特化した資金調達方法として近年注目を集めています。政府によって「2050年までにカーボンニュートラル化を目指す」という目標が掲げられる日本においても、グリーンファイナンスの発行数は年々増加しています。
グリーンファイナンスが注目される背景
グリーンファイナンスは、2015年に採択された「パリ協定」を踏まえた温室効果ガスの排出削減活動を支援する取り組みの一つです。日本では、パリ協定の水準の達成を目指して「2050年カーボンニュートラル」および「2030年度までに温室効果ガスを46%削減(2013年度比)、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」という目標を掲げました。
この高い目標を達成するには、積極的な投資による環境分野の新しい技術開発が必要不可欠です。環境問題への意識の高まりとともに、近年ではESG投資も加速傾向にあります。キャッシュフローや利益率ではなく、非財務情報である「企業の社会的責任や環境問題への取り組み」を評価するESG投資は、グリーンファイナンスの普及にも影響を与えるでしょう。グリーンファイナンスは、企業の温室効果ガス排出抑制のための資金調達手段としてさらに拡大すると考えられます。
グリーンファイナンスの種類
グリーンファイナンスにはいくつかの種類があります。それぞれ特徴を解説しますので、自社に合ったものを選ぶ際に参考にしてください。
グリーンボンド
グリーンボンドとは、企業がグリーンプロジェクト(地球温暖化対策などの環境課題の解決に取り組む事業)にかかる資金を調達するために発行する債券です。企業が自ら債券を発行し、投資家などから資金を集めます。主に次の3つの特徴があります。
1.調達資金の使途はグリーンプロジェクトのみに限定されている
2.調達資金は追跡管理される
3.調達資金の使途はレポーティングにより透明性が保たれる
自社のグリーンプロジェクトを社内外に発信しながら活動資金が調達できる方法として、200以上の企業・団体・自治体が取り組んでいます。グリーンボンドが発行される例は、以下の通りです。
- 再生可能エネルギー発電所への出資
- 廃棄物焼却時の熱エネルギーを活用する施設の建設
- ZEBやZEHに対応したビル、住宅の取得や建設資金 など
自然電力株式会社では、2019年にグリーンボンドの発行を行い、2011年の設立以来携わってきた太陽光発電事業の開発費用を調達しました。エネルギーのみならず、既存事業をグリーンビジネスにつなげていくことにより、多種多様な企業・自治体がグリーンファイナンスを実行・活用しています。今後、新たなプロジェクトの組成や資金調達を検討する場合、環境の観点からビジネスを俯瞰し、グリーンファイナンスの有効活用につながることが重要です。
サステナビリティボンド
サステナビリティボンドとは、グリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトへの初期投資、またはリファイナンスのみに活用できる資金調達方法です。2017年に国際的な「サステナビリティボンドガイドライン」が策定され、発行は増加傾向にあります。
グリーンローン
グリーンローンとは、グリーンプロジェクトで必要となる資金について、金融機関から融資を受けることです。用途がグリーンプロジェクトに限定される点や、レポーティングが義務付けられるといった特徴はグリーンボンドと共通しています。
金融機関からの融資のため、安定的なキャッシュフローを得られるのがポイントです。環境改善効果については認証機関などによる外部レビューを受ける必要がありますが、正しく活用すれば自社の信頼性を高めることにもつながります。
サステナビリティ・リンク・ボンド
サステナビリティ・リンク・ボンドとは、企業が持続可能な経営を達成するために発行する債券です。グリーンボンドとは異なり、資金の使い道はグリーンプロジェクトのみに限定されていません。債券の発行者はあらかじめ評価指標(KPI)とサステナビリティ目標(SPTs)を公表し、その達成度合いに応じて債券の金利が変動する特徴があります。
サステナビリティ・リンク・ローン
サステナビリティ・リンク・ローンとは、企業がサステナビリティな活動を野心的に追い求めるために金融機関から受ける融資です。サステナビリティ・リンク・ボンドと同じく、あらかじめ設定した評価指標(KPI)とサステナビリティ目標(SPTs)をもとに、進捗状況などに応じて利率・借り入れ条件が変化します。
グリーンファイナンスの発行数の推移
国内ではグリーンファイナンスの発行数が年々増加しています。
グリーンボンドでは、2020年に発行総額が1兆円を突破し、2023年にはその約3倍の3兆円に迫る規模にまで拡大しました。
またサステナビリティ・リンク・ローン、サステナビリティ・リンク・ボンドも年々増加傾向にあり、国内でのガイドライン策定が進んだこともあり、今後も拡大すると予想されています。
企業がグリーンファイナンスを活用するメリット
企業がグリーンファイナンスを活用するメリットは、主に3つあります。
- 脱炭素経営、持続可能な経営の実現
- 資金調達基盤の安定につながる
- ステークホルダーとの信頼関係構築
以下で詳しくみていきましょう。
脱炭素経営、持続可能な経営体制の強化
グリーンファイナンスによって企業が資金を得て環境問題への取り組みを加速させると、持続可能な未来を創る活動がますます進みます。それにより、企業の中でも環境保護を念頭に置いた経営戦略の立案、将来の気候変動を視野に入れたリスクマネジメント、社内ガバナンスの体制強化が期待できるでしょう。
資金調達基盤の安定につながる
グリーンプロジェクトの遂行を通して、企業はその進捗状況や資金の使途、経営戦略との整合性などの情報発信が求められます。透明性の高い情報を開示できれば、ESG投資を好む投資家や金融機関との新たな出会いにつながり、資金調達がスムーズになる可能性があります。それにより経営基盤が安定し、長期的に環境問題に取り組める良い循環が生まれます。
ステークホルダーとの信頼関係構築
グリーンファイナンスの調達を通して、企業はグリーンプロジェクトの推進に対して積極的な姿勢をアピールすることができます。この姿勢は、投資家はもちろん取引先や顧客にも信頼感を与えます。結果的に社会的な支持の獲得、企業価値の向上へとつながるプラス要素になるでしょう。また、投資家も資金の供給を通じて持続可能な社会の実現に貢献できます。グリーンファイナンスは、資金を貸す側・借りる側、そして地球環境にとって三方よしの制度だといえます。
国内のグリーンファイナンス活用事例
国内では、すでにグリーンファイナンスを活用した環境活動に踏み出している企業があります。そのうち特徴的な取り組みを進める企業・自治体を3つご紹介します。
三井不動産株式会社
三井不動産株式会社は2023年、500億円のグリーンボンドを発行し、同社が東京都に持つ「日本橋室町三井タワー」「日本橋三井タワー」のリファイナンス(借り換え)資金として調達しました。同2棟のビルでは、DBJ Green Building認証(不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価した制度)において5つ星を取得しています。
東京都
東京都では、2050年までに「世界のCO2排出量実質ゼロ」に貢献するため、「ゼロエミッション東京」を目標に掲げています。この取り組みの中で2017年に全国の自治体で初となる「東京グリーンボンド」を発行しました。環境負荷の少ない次世代の交通手段の導入や、大気汚染・土壌汚染の軽減、都市の気温上昇の予防などを目的とし、2023年度は200億円の東京グリーンボンドを発行しました。
株式会社日本郵船
株式会社日本郵船は2018年、海運業界で世界初のグリーンボンドを発行しました。100億円の資金をもとに達成を目指すのは、液化天然ガス(LNG)燃料船やバラスト水の処理装置(大型船がバランスを取るために船内に貯めておく海水に海洋生物が入らないようにする装置)の導入など、海の環境保護を視野に入れた取り組みです。世界中の海を移動する物流企業として、生物多様性の保護や海洋汚染の防止に力を注いでいます。
まとめ
グリーンファイナンスを正しく理解し活用することは、企業の持続的な成長と地球環境の保護につながります。この記事で解説したグリーンファイナンスの意味や企業へのメリットを参考に、環境に配慮した経営活動を一歩前進するきっかけとしてください。