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GX2040ビジョンとは、日本が2040年までに脱炭素成長型経済に移行するための長期的な方向性を示すものです。
具体的には、 GX(グリーントランスフォーメーション)加速に向けて、政府が策定したさまざまな施策のことを指します。エネルギー政策やカーボンプライシング、イノベーションの革新などを通し、国内産業の競争力を向上させることが狙いです。
本記事ではGX2040ビジョンについて、概要から具体的な戦略内容、エネルギー基本計画との関連まで詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。
GX2040ビジョンとは
GX2040ビジョンとは、日本が2040年までに脱炭素成長型経済に移行するための長期的な方向性を示すものです。ここではGXについて基礎知識から策定された背景や、推移などを解説していきます。
GXとは
GXとは「Green Transformation (グリーントランスフォーメーション) 」の略です。脱炭素化を通して経済構造の根本的変革を促し、さらに経済成長を両立するための取り組みを指します。
GX2040ビジョン策定の背景
GXは、2021年に経済産業省で設立された「グリーントランスフォーメーション推進小委員会」で初めて政策として検討されました。次いで2022年、当時の岸田内閣総理大臣を議長とするGX実行会議が開催され、GX基本方針が策定されます。背景にはウクライナ侵略以降の、エネルギー安定供給確保の課題がありました。
2023年には「GX推進法」、「GX脱炭素電源法」が成立。そして国際的にエネルギー安定供給の不確実性が高まるなか、GXの取り組みの中長期的な方向性を官民で共有するため、2025年2月に「GX2040ビジョン」が策定されました。
GX2040ビジョンの目的と意義
GXの目的と意義はエネルギーの安定供給と、脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていくことです。そのため以下が重視されています。
- エネルギー安定供給の確保に向け徹底した省エネの実施、再生可能エネルギー(以下再エネ)の主力電源化、原子力の活用などを通し、エネルギー自給率の向上を行う。それにより脱炭素電源への転換など、GXに向けた脱炭素の取り組みを推進。
- GXの実現に向け、長期に渡るGX経済移行債を活用した先行投資支援、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行。さらに国際戦略・公正な移行・中小企業のGXの推進。
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GX2040ビジョンの7つのポイント
GX2040ビジョンは次の7つのポイントを掲げています。それぞれを詳しく解説していきます。
GX産業構造
GX分野の投資を通し脱炭素エネルギーの利用や、DXの活用で高度化された革新技術による新たなGX事業の創出を行い、日本の強みを活かした産業構造を目指します。これにより、国内外の有能な人材・企業が日本で活躍できる経済社会を構築していきます。
GX産業立地
GX産業立地のポイントは、脱炭素電源などの活用を見据えた産業集積の加速です。脱炭素に資する再エネなどの供給拠点は、地域によって偏りが見られます。そのため「エネルギー供給に合わせた需要の集積」が必要です。GX産業の推進で、脱炭素技術を持つ企業を誘致し、「新たな産業用地の整備」と「脱炭素電源の整備」を行い、地方創生と経済成長に繋げることが目的です。
脱炭素先行地域との違い
GX産業立地と似た言葉に「脱炭素先行地域」がありますが、目的と対象が異なります。「脱炭素先行地域」は、自治体や地域が主体となって実情に合わせた脱炭素化を推進し、地域活性化を図ることを目指します。
現実的な状況を踏まえつつ、世界の脱炭素化へ貢献
日本は世界と協調しつつ、カーボンニュートラルの実現に向かいます。一方、グローバル化が進んだ現代において、日本と諸外国との相対的なエネルギー価格差は自国産業の維持や発展にとって大きな課題となります。GXとDXの取り組みにより、相対的なエネルギー価格差を縮小させ、投資を呼び込むとしています。
また、優れた脱炭素技術のうち、海外市場をいち早く獲得できる可能性のあるものについては、国際的なルールを踏まえつつ、政策的な支援を行っていきます。あわせて、将来的な日本国内市場の拡大や温室効果ガスの排出削減につなげるため、現実的な投資促進策を講じることが重要です。
GX加速における各分野への取り組み
エネルギー分野をはじめとする産業や暮らしなどの個別分野、脱炭素化が難しい分野について分野別投資戦略、エネルギー基本計画などに基づき、GXの取り組みを加速していきます。また日本の高度な資源循環技術をいかして、国内に強固なサプライチェーンを確立し、さらに資源を安定的に確保することで経済安全保障に繋げます。
成長志向型カーボンプライシング構想
規制・支援一体型の成長志向型カーボンプライシング構想により、今後10年間で150兆円超の官民GX投資を実施します。20兆円規模のGX経済移行債を発行、GXのための先行投資支援、2028年度から化石燃料賦課金導入、2026年度から排出量取引制度を本格稼働します。2033年度からは発電事業者への有償オークションを導入と、段階的にカーボンプライシングを導入予定です。
公正な移行
GX推進には、新たに創出される産業への労働移動を公正に適切に進めていくことが不可欠です。従来の労働者が 、GXにより技術が高度化されたサプライチェーンで引き続き活躍できるよう、キャリアアップやリスキリング、また新たなスキル獲得などの支援を実施する必要があります。
GXに関する政策の進捗と見直し
GXを実現するための政策イニシアティブの進捗状況は、適切な場で報告され見直されます。具体的には適切なモニタリング、官民でのGX投資の進捗状況、グローバル経済への影響、技術開発の動向などが、GX実行会議を中心に適宜報告され修正が行われます。
エネルギー基本計画との連携
2040年度に向けて、第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンは一体的な遂行を目指しています。ここからは GX2040ビジョンとエネルギー基本計画の連携について解説していきます。
第7次エネルギー基本計画の概要
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、再エネの主力電源化が公表されました。「 S+3E」の原則に基づき、脱炭素化に伴うコスト上昇を最大限抑制し、特定の電源や燃料に依存しすぎないバランスの取れた電源構成を目指しています。
また専門機関が、「化石燃料の供給」「脱炭素の動向」「技術進歩」「エネルギー需要」の不確実性の高さを考慮する形でシナリオ分析を行い、電源構成の土台としています。
エネルギー安定供給実現の重要性
日本は資源に乏しくエネルギー安定供給上の脆弱性を抱えており、エネルギー自給率は2022年度時点で、約12.6%とG7加盟国で最低でした。そのため、特定のエネルギー源に依存しない分散化を行うことで、エネルギー安定供給の確保に努めてきました。
経済産業省の「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」では、エネルギーの自給率は3~4割程度が見込まれています。グローバルなエネルギー情勢の変化も踏まえ、エネルギー安定供給の確保に重点を置いた政策を再構築しています。
再生可能エネルギーの主力電源化
2040年度における電源構成の見通しでは再エネが40〜50%、火力は30〜40%、そして原子力は20%となっており、再エネの主力電源化が明確に謳われています。太陽光発電においては「次世代型太陽電池戦略」の推進など、2040年には約20GWの導入を目標としています。
また将来的にコスト低減が見込まれる洋上風力発電への期待は高く、政府は2030 年までに 10GW、2040 年までには浮体式洋上風力を含めて30GW~45GWの案件を形成することを目指しています。
原子力についても、国内の電力需要増加が見込まれる中、脱炭素電源として再生可能エネルギーとともに最大限活用していく方針です。火力発電については、「供給力」「調整力」として安定供給に必要な発電容量を維持・確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていくとしています。
【関連記事】 エネルギー基本計画とは?第7次エネルギー基本計画 についてわかりやすく解説! |
カーボンプライシングの具体的な構想
カーボンプライシングの具体的な取り組みについて詳しく解説していきます。
排出量取引制度の本格稼働
2026年から公平性や実効性に配慮しつつ、排出量取引制度が本格稼働します。一定の排出規模以上(直接排出10万トン)の企業は業種を問わず、一律に参加義務が課されます。ただし業種特性などを考慮し、対象事業者に排出枠を無償割当、排出枠の上下限価格を設定することによる取引価格に対する予見可能性の確保も行われます。
【関連記事】 排出量取引制度とは|基本情報と2025年最新情報、今後の展望を解説 |
化石燃料賦課金の導入
カーボンニュートラルの促進とともに、GXへの動機付けが広く可能となるよう炭素排出に対する一律のカーボンプライシングとして、「化石燃料賦課金」が導入されます。
GX2040ビジョンの課題と展望
GXビジョン2024の課題と展望、そして企業はどのような対応を行えばいいのかを解説していきます。
脱炭素化が困難な分野
脱炭素化の排出削減が技術的に難しい産業に対して、どのようにGXを推進していくかは大きな課題です。農業のようにCO2排出の規模は少ないものの削減が困難な業種や、自動車産業のように製品ライフサイクルでの排出削減が難しいという業種もあります。これらの脱炭素推進には莫大なコストと時間を要するため、さまざまな政策や支援を長期的に行う必要があります。
新たなイノベーションの推進
政府は「グリーン成長戦略」において、脱炭素化促進を図るために重要な14の産業分野に対して支援実施を開始しています。特にエネルギー分野においては、以下のような技術推進に向けた支援が実施されています。
再生可能エネルギー技術 | ペロブスカイト太陽電池・浮体式洋上風力 |
次世代エネルギー技術 | 水素など |
ネガティブエミッション技術 | CO2の回収や有効利用、貯留技術を行うCCUS・DOCなど |
GX市場の創出
GX市場の創出には、排出量取引やカーボン・クレジット取引だけではなく、排出削減の成果を製品・サービスそのものの付加価値としていくことが求められます。そのためには製品のGX価値(環境価値)を消費者に見えやすくするなど、官民一体となった工夫が必要です。
政府はGX製品市場創出に向けたロードマップの策定や、将来的にGX価値の視覚化や指標の活用で需要者側のインセンティブを増やし、GX市場創出や拡⼤を目指します。
企業はどう対応していくべきか
GX2040ビジョンの中長期的な目標達成のために、エネルギー基本計画では、具体的な計画が示されました。企業は、これらに対応するため、積極的な省エネ化や再エネの導入が求められます。そして自社の経営・事業・投資戦略などへの影響を見定めるため、カーボンプライシングや個別分野の取り組み動向を、注視していくことが重要です。
まとめ
脱炭素成長型経済に移行するための長期的な方向性 「GX2040ビジョン」について、概要からエネルギー基本計画との関連まで詳しく解説しました。
企業は、GX施策の進展に注目し、自社の経営・投資戦略に適用することが重要です。本記事で「GX2040ビジョン」についての知見を深め、企業としてどのような対策を講じていくか、ぜひ情報を共有してください。
【参考】 |