二国間クレジット制度(JCM)とは?概要と課題を解説

二国間クレジット制度(JCM)は、日本と開発途上国が協力して温室効果ガスの排出削減に取り組む仕組みです。海外事業で省エネ技術や再エネ設備を導入し、削減できた温室効果ガスの一部を「クレジット」として日本国内の排出削減に活用することができます。

企業にとっては新興国市場への進出チャンス拡大、政府にとってはNDC(削減目標)の達成手段として活用されてきましたが、近年は民間資金を活用したプロジェクトが拡大しています。本記事では、二国間クレジット制度の概要や課題、注目が集まる民間資金を中心とするJCMプロジェクトについてわかりやすく解説します。

二国間クレジット制度(JCM)とは?


二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)は、日本が他国と協力して温室効果ガスを減らす取り組みです。同制度を通じて日本は、技術や資金を提供して開発途上国などで温室効果ガス排出削減を行い、その削減量の一部を自国の実績として使えるようになります。

この制度は日本政府(環境省・経産省など)が主導し、2013年に始まりました。現在ではアジアや中南米など30カ国と協定を結んでいます(2025年5月時点)。

日本は2021年に、2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減し、さらに50%を目指すというNDC(国が決定する貢献)を国連に提出しました。2025年には、2035年度に60%削減、2040年度に73%削減という新たな中長期目標も加えられています。こうした高い目標を実現させるために、JCMには大きな期待が寄せられています。

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カーボンクレジット需要の高まり

カーボンクレジット市場は、世界的なカーボンニュートラルへの関心の高まりと法整備の進展を背景に、堅調に拡大しています。特に日本では、カーボンクレジット市場の参加社数と取引量が急速に拡大しています。2022年度の実証事業では登録社が145社・売買量約14.8万tCO2でした。その後に登録企業は増加し、2025年1月時点で登録社は312社、累計売買量は約72万tCO2に達しました。

こうした市場の成長に伴い、JCMクレジットはGX-ETS※1や温対法対応※2での活用、国内企業間での取引など用途の幅が広がり、企業の脱炭素経営を支える重要な手段となっています。

※1 GX-ETS(排出量取引制度)は、日本政府が主導する新しい排出量取引システムです。GXリーグを基盤として2023年にスタートし、2026年度以降に本格稼働が予定されています。

※2 温対法(おんたいほう:正式名称「地球温暖化対策の推進に関する法律」)は、温室効果ガスの排出削減と吸収の強化を目的とした日本の法律です。

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カーボンクレジットの用途拡大

国内で利用できるカーボンクレジットはJCMクレジットだけではありません。他にJ-クレジット、Jブルークレジットなどもあり、種類や市場規模は拡大を続けています。

クレジット名主な用途
JCMクレジット・温対法に基づくSHK制度への利用

・GX-ETSにおける自社排出量オフセット

・GXリーグにおける自社排出量オフセット

J-クレジットJCMと同じく、SHK制度、GX-ETS、GXリーグに利用

・製品・サービスのカーボンニュートラル化

・イベントのカーボンオフセット

Jブルークレジット藻場の再生などによるカーボンオフセット(自主的オフセット)

・海洋環境保全活動の支援によるPR

JCMクレジットは前述した通り、GX-ETSや温対法での活用など、制度対応に活用されます。J-クレジットは、温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、「クレジット」として認証し、売買できる制度のことです。伊藤忠エネクス株式会社の「カーボンニュートラル給油カード」のように燃料使用と同時に排出量を相殺できる民間サービスにも導入が進んでいます。Jブルークレジットはブルーカーボン(海中・海面付近にある生態系によって吸収・貯留された炭素)を対象としたクレジット のことで、藻場の再生やコンブ養殖によるCO2吸収量をクレジット認証して発行されています。

カーボンクレジットは企業のCO2削減ソリューションのひとつ

カーボンクレジットは、自社のみの削減努力では実現が難しい温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて、柔軟かつ経済合理的な手段として活用されています。特に、技術・コスト的な制約で排出削減が困難な企業にとって、カーボンクレジットを活用したオフセットはすぐに実践できる有効なソリューションといえます。

JCMプロジェクトは民間中心のプロジェクトへ

JCMプロジェクトは、もともと日本政府の資金支援を受けた官民連携の取り組みが中心でしたが、近年は民間資金を活用したプロジェクトが拡大しています。政府はパートナー国との間で民間JCMを制度化し、資金調達の柔軟性を確保するための規則やガイドラインを整備しています。これにより、企業は独自資金でプロジェクトを立ち上げ、カーボンクレジットを取得して自社のネットゼロ達成に活用する動きが加速することになります。

民間資金活用の広がりでどうなる?

民間資金の活用によって、政府資金で制約されがちだった対象事業やスケジュールの柔軟性を確保できます。

さらにプロジェクト開始前に実施可否やクレジット配分を確認できるPIN(Project Idea Note)制度が導入されました。このように、予見性が高まったことで将来の調達計画やコスト見通しを立てやすくなり、需要家になる企業にとっても戦略的に脱炭素化に取り組むことができるというメリットがあります。

2026年度から本格始動する排出量取引制度「GX-ETS」では、カーボンクレジット量の供給不足が懸念されています。民間資金活用拡大によるクレジット創出促進は、需給ギャップを埋める重要な役割を果たします。

プロジェクトの信頼性と管理体制

民間JCMプロジェクトは、政府主導のプロジェクトと同様に厳格な審査・認証プロセスが適用されます。合同委員会と第三者機関(TPEs)による妥当性確認・検証に加え、パリ協定第6条に基づく二重計上防止措置も組み込まれています。このため、カーボンクレジットの質が確保されます。

CDMの課題を解決するJCM

項目CDMJCM
主体国連日本と相手国の二国間
特徴多国間、手続きが複雑二国間、手続きが簡単
クレジットの分配基本的に先進国が取得両国で分け合う
日本の関与参加国の一つ主導国(制度設計・運営)
対象事業再エネ、省エネ、森林など同様(再エネ・省エネ中心)

CDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メカニズム)は、先進国が開発途上国で温室効果ガスを減らすプロジェクトを行い、その成果(クレジット)を自国の削減分として使える仕組みです。JCMと同じような仕組みですが、制度の運営管理は国連が主導で行います。JCMは、日本と相手国が直接協定を結び、排出削減の成果を両国で分け合う仕組みを採用しています。

CDMは審査や承認のプロセスが複雑かつ時間がかかるという課題があり、日本企業にとって参入しづらい状況でした(査開始からCERの発行に至るまで約2. 5年)。そこで、日本独自により柔軟かつ迅速にプロジェクトを進められる制度としてJCMが考案されたのです。

二国間クレジットは途上国の脱炭素化にも寄与

二国間クレジット制度は、優れた脱炭素技術、製品、システム、インフラなどを提供することを通じて、途上国の脱炭素化に貢献します。

多くの途上国では、温室効果ガスを削減したいと考えていても、技術的な制約や資金不足が障壁となり、対策を十分にとれないケースがあります。しかし二国間クレジット制度を活用することにより、温室効果ガスの削減事業が推進することができ、さらに現地でのグリーン分野における人材の技術的スキル向上と能力開発にも貢献します。

二国間クレジット制度はプロジェクトの参加に限らず、購入することも間接的に途上国への支援につながっているのです。

二国間クレジット制度の課題

二国間クレジット制度は構造的な欠点が少ない一方、購入者にとって以下のような実務上の課題があります。

①数量・タイミング・価格が読みにくい
②制度ごとに使えるクレジットが違う
③パートナー国の広がり不足

JCMは相対取引が多く在庫と価格が見えにくいため、期末直前に必要量をそろえにくいなど調達量や時期をコントロールしづらい傾向があります。また、GX-ETS、GXリーグ、SHK制度など各制度ごとに使えるクレジットや条件が異なります。さらに、パートナー国の広がり不足(2025年5月時点でパートナー国は30カ国)によって、対象国や案件で選択肢が限られる場合があるため、JCMを利用する際は、早めの計画と分散調達が求められます。

まとめ

二国間クレジット制度は、日本が主導する国際的な脱炭素戦略の一環として、開発途上国と協力しながら温室効果ガス削減を実現する仕組みです。脱炭素技術の国際展開とクレジット獲得を両立でき、設備補助やリース支援など日本企業の初期投資を後押しする制度も整っています。

2026年度よりの本格的に稼働する排出量取引制度(GX-ETS)にも活用が可能な二国間クレジットは、今後ますます需要が高まると予想されます。企業は最新動向を把握し、実効性のある削減対策を計画的に進めることが必要です。規制強化や市場環境の変化に備え、自社の状況を正確に把握し、戦略的に対策を講じましょう。

【参考】