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非化石証書とは?企業の脱炭素担当者必見のポイントを解説
非化石証書とは、非化石電源で発電された電力が持つ「CO2を排出しない」という環境価値の部分を分離して取引ができるように証書化したものです。企業の脱炭素施策のアピールや、RE100の技術基準を満たす再エネとして活用できます。
近年、需要家・仲介事業者の購入が認められるようになったことなどから、取引量も増え、注目を集めている環境証書です。
今回は、非化石証書の概要・種類・メリットや注意点・活用方法など、企業が非化石証書を有効利用する上で必須となるポイントを紹介します。脱炭素に取り組むすべての企業に必見の内容ですので、ぜひご一読ください。
目次
非化石証書とは
非化石証書とは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーや原子力発電といった非化石電源で発電された電力が持つ「二酸化炭素(CO2)を排出しない」という 環境価値の部分を分離して取引ができるように証書化したもののことです。
非化石証書を購入することで、自社で利用する電気に関するCO2排出量を間接的に削減したこととみなすことができ、CO2削減に貢献しているという価値を得られます。
以前は、小売電気事業者のみが購入できる環境証書でしたが、2021年11月からは、電力需要家や仲介事業者でも非化石証書を直接購入することができるようになりました。
また、サービス提供者が増加したことで、取引量が大幅に拡大し、さらに最低価格も1.3円/kWhから0.3円/kWhに大幅に引き下げられました。
このように、脱炭素に取り組むすべての企業担当者は、今注目すべき非化石証書について、基本的な仕組みや他の環境証書との違いなどを確認しておきましょう。
非化石証書の仕組み
電気には、石炭や石油・天然ガスなどの化石燃料で発電したものや、太陽光・風力・水力・地熱などの再生可能エネルギーや原子力といった非化石燃料で発電したものがありますが、電気としての価値には変わりがありません。
しかし、化石燃料で発電するとCO2が多く発生しますが、非化石燃料であればCO2の発生が削減できるため、環境保全の観点で価値が生まれます。
そこで、非化石電源で発電された環境価値を見える化し、電気とは切り離して売買できるようにしたのが非化石証書です。この非化石証書を購入することで、非化石燃料で発電したクリーンなエネルギーを利用しているとみなします。
出典:資源エネルギー庁「非化石価値取引について―再エネ価値取引市場を中心に―」(自然エネルギー財団)
以上のとおり、非化石電源の環境価値を適正に有効利用するために整備されたのが、非化石証書の仕組みです。
非化石証書とグリーン電力証書・J-クレジットとの違い
CO2を排出しない電源が持つ環境価値を売買できる環境証書には、非化石証書の他に、グリーン電力証書やJ-クレジットがあります。各環境証書の特徴は、以下のとおりです。
非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットの特徴 | |
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非化石証書 |
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グリーン電力証書 |
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J-クレジット |
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上記の通り種類の異なる環境証書が取り引きされていますが、中でも国内でもっとも発行量が多い証書が非化石証書です。
また非化石証書の一つであるFIT非化石証書については、2021年11月から、最低価格が従来の1.3円/kWhから0.3円/kWhに引き下げられた ことなどもあり、他の証書に比べて安価であることも特徴です。(2023年8月からは0.4円/kWhに変更予定)
非化石証書の種類
非化石証書には、大きく分けて3つの種類があり、それぞれ特徴や使える用途などが異なります。
非化石証書には3つの種類がある | |
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FIT非化石証書 | ・FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受ける電源の環境価値に関する証書 【例】太陽光発電、風力発電、バイオマス発電など |
非FIT非化石証書(再エネ指定) | ・FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受けない再生可能エネルギーの環境価値に関する証書 【例】大型水力発電など |
非FIT非化石証書(再エネ指定なし) | ・FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受けない再生可能エネルギー以外の環境価値に関する証書 【例】原子力発電など |
以下では、それぞれの内容について、大事なポイントに絞って説明します。
FIT非化石証書
FIT非化石証書とは、FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受ける電源の環境価値に関する証書です。電源の種類としては、太陽光発電や風力発電などが挙げられます。
電源の種類や発電場所が紐づけられたトラッキング付FIT非化石証書であれば、RE100でも活用できるなど、用途が幅広いのが特徴です。
非FIT非化石証書(再エネ指定)
非FIT非化石証書(再エネ指定)とは、FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受けない、再生可能エネルギーの環境価値に関する証書のことです。大型水力発電やFIT期間が終了した電力(卒FIT)が含まれます。
非FIT非化石証書(再エネ指定)については、バーチャルPPAの実証や導入などが行われています。
バーチャルPPAはオフサイトコーポレートPPAの一種で、発電の事業者と需要家の間で、直接、電力供給とは切り離して非FIT非化石証書を取引できる仕組みです。
需要家側からすると、電力契約を変更しなくても、非化石証書だけを新たに購入できるのが利点といえます。
なお、オフサイトコーポレートPPAには、フィジカルPPAという形態もあります。こちらは、電力と環境価値をセットで移転させることが特徴です。
出典:バーチャルPPAとFIP非化石証書の直接取引(自然エネルギー財団)
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)とは、FIT(固定価格買い取り制度)の適用を受けない、再生可能エネルギー以外の環境価値に関する証書のことです。
化石燃料は使用されませんが、原子力発電など再エネ表示価値を持たない発電に関する証書で、高度化法の目標達成などに利用されます。
非化石証書のメリット・注意点
非化石証書を利用することで、脱炭素を推進する企業にとって大きなメリットがある反面、利用にあたっては、念頭に置いておくべき注意点もあります。メリット・注意点を正しく押さえた上で、適切に取り入れていくことが、非化石証書を有効利用するために重要です。
非化石証書を利用するメリット・注意点 | |
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メリット |
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注意点 |
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非化石証書のメリット
非化石証書を脱炭素の取り組みに取り入れることで、利用する電力に関しても、実質的に環境負荷を低減させることが可能です。
また、証書を活用すれば、電力契約を変更せずとも、再生可能エネルギー由来の環境価値を得られます。事業の性質上、自社の設備投資や脱炭素の取り組みだけでは報告書などの目標達成が難しい場合、追加の取り組みとしても有効です。
以上のことから、非化石証書を脱炭素の取り組みに取り入れることで、環境問題に配慮していることのPRになる上、ESG経営の施策の1つとしても有用といえるでしょう。
非化石証書の注意点
非化石証書を利用するときは、種類によって発電方法が異なり、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)には原子力発電も含まれることを、理解しておきましょう。
自社の取り組み内容に照らして、電気の種別や産地などを選ぶ必要がある場合は、きちんと確認することが必要です。
また、当然のことながら、非化石証書の購入にはコストが発生します。取引価格も変動しますので、市場の動きやトピックを把握して値動きを考え、予算を確保する必要がある点に注意しましょう。
なお、あくまでも環境証書は他者が削減したCO2を価値として購入するものです。脱炭素の取り組みにおいては、まず自社の活動を通してCO2を含む温室効果ガス削減に取り組むことが前提であることを理解しておくことは重要です。
企業が非化石証書を活用する方法
企業が非化石証書を活用するシーンの代表例が、
- クリーンエネルギー利用を脱炭素施策としてアピール
- さまざまな報告書で活用
です。
各シーンで、具体的にどのように活用していくことになるのか、イメージをつかんでおきましょう。
クリーンエネルギー利用を脱炭素施策としてアピール
非化石証書を活用することで、事業における実質的な再生可能エネルギーの利用割合を高め、脱炭素施策を実行している企業としてイメージアップに利用することが可能です。
例えば、以下のような活用方法が挙げられます。
- 店舗や社屋・工場などの使用電力について、非化石証書を導入し、再生可能エネルギー率実質100%を実現
- 自動販売機の消費電力分を、非化石証書で実質再生エネルギーでの運用とする
- 復興支援が必要なエリアなどに由来する非化石証書を選び、クリーンエネルギー利用と復興支援の双方をアピール
- イベントなど大規模な電力量に対する、短期的なオフセット方法として活用
さまざまな報告書などに活用
非化石証書は、さまざまな報告書に活用できます。一例を挙げると、以下のとおりです。
【非化石証書の活用例】
- 温対法に関する報告
- 省エネ法に関する報告・CDP質問書
- SBTへの報告
- RE100への報告 など
報告書によっては、非化石証書が活用できる範囲などに、条件があります。利用時は、どの部分に証書が使えるのか、確認してから活用しましょう。
自然電力株式会社では、非化石証書やJ-クレジットなどの環境証書の購入をご支援するサービスを提供しています。より具体的な脱炭素の取り組みをおこなうために、環境証書の種類や導入方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
まとめ
非化石証書とは、発電時にCO2を排出しない環境価値だけを分離して、証書化したもののことです。購入することで、事業の性質などから再生可能エネルギーの導入が難しい工場や設備においても、実質的に再生可能エネルギーを取り入れることができます。
近年、制度が変更され、需要家でも手軽にコストを抑えて入手しやすくなっています。脱炭素化への一つの手段として活用を検討してみましょう。