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太陽光発電は発電時にCO2を発生しません。そのため脱炭素やカーボンニュートラルの実現に対し、効果的なエネルギー調達方法として注目を集めています。また原子力発電所や火力発電所と異なり、小規模からでも容易に発電できることから、エネルギーの地産地消ができ、地域活性化につながるといわれています。ここでは太陽光パネル設置に義務化や太陽光発電の現状について解説していきます。
目次
太陽光発電は日本を代表する再生可能エネルギー
SDGs持続可能な開発目標などの観点から、近年、再生可能エネルギーに注目が集まっています。再生可能エネルギーとは、発電などエネルギーを作る際に使用した資源が、比較的短期間で再生するエネルギーをいいます。例えば風力発電で利用する風は、石炭や石油のような燃料とは異なり、使ったらなくなるものではありません。間伐材を利用したバイオマス発電なども、化石燃料に比べれば数年単位という非常に短い時間で再生します。このように、資源が尽きないもの、あるいはすぐに再生するものを利用した発電を再生可能エネルギーといい、現在日本では、太陽光や地熱、バイオマス、風力などの発電が再生可能エネルギーに指定されています。
中でも太陽光発電は日本を代表する再生可能エネルギーで、2019年度には、再生可能エネルギー全体の3割以上を担い、その後もさらに発電量を増やしています。
太陽光発電システムが広まったのは1990年代の後半です。日本では2009年に余剰電力買い取り制度が施行されたのをきっかけに、一般家庭での太陽光発電が広がり始めました。その後太陽光発電は、2011年の東日本大震災による原子力発電所の停止に伴う電力不足の解消や、災害時の電源などとしても注目を集めました。さらに2015年に採択されたパリ協定を受け、日本では2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを決めました。それに伴い、発電時にCO2を発生しない太陽光発電への注目度はさらに増します。公共施設や個人の住宅、遊休農地などに太陽光パネルを設置するケースも増え、国内における太陽光発電量はさらに伸びていきました。
日本での太陽光発電量を具体的に数値でみてみると、2009年には284万kWであったものが2011年には531万kW、2015年には3605万kW、2020年には6476万kWと、急速な伸びを見せています。2020年の日本国内における太陽光発電による発電量は、世界全体の太陽光発電のうち、およそ9%を占め、中国やアメリカに次いで世界第3位の発電量になっています。
また外国に目を向けてみると、ヨーロッパにおける再生可能エネルギーの主力は風力発電です。安定した偏西風を利用し、大きな風車を回す発電方法が適しているためです。しかし日本は平地が少なく山がちな地形のため、安定した風が得にくい性質があります。またヨーロッパのような安定した偏西風ではなく、夏と冬で向きが変わる季節風が主な風になります。さらに台風による強風も多く、安全のために風力発電を停止しなければならない日が多く、事故の可能性も高いのです。そのためヨーロッパ諸国に比べて風力発電にはあまり適していないのです。
このような事情もあり、各国がさまざまなエネルギー対策を打ち出す中、日本では太陽光発電が再生可能エネルギーの中心になっているのです。
太陽光発電を早期設置に導くために必要なポイント
発電量を順調に伸ばしている太陽光発電ですが、国内にはまだまだ多くの太陽光パネルを設置できるスペースがあります。日本政府もさまざまな形で太陽光パネルの設置を支援しています。
とはいえ太陽光パネルを設置しようとすれば、その規模に応じた費用が発生します。自治体などで太陽光パネルの設置を望んでおり、早期の設置を実現するためには、太陽光発電のメリットや設置に際して受けられる支援などを整理し、地域住民の理解を得る必要があります。
例えば自治体における太陽光発電のメリットには、次のようなものがあります。
・発電した電気の自家消費による電気代の削減
・余剰電力の売電による収入
・SDGs未来都市やゼロカーボンシティに指定されることによる国の支援
・災害停電時でも電力供給が行える
・電力の地産地消による地域活性化
また、自治体が太陽光発電をはじめるにあたって利用できる支援には次のようなものがあります。
・再生可能エネルギー事業者支援事業費
・脱炭素先行地域募集・交付金
・「SDGs未来都市」モデル事業への選定
ここに挙げたメリットは、どのような条件でもあまり大きくは変わりません。しかし利用できる支援については、設置の条件やそれに伴う事業の進め方により大きく変わります。そのため都度ていねいに確認する必要があります。
全国初!東京都は2025年4月から太陽光パネル義務化の方針
日本では2021年6月に公共施設に対して太陽光パネルの設置が義務付けられました。2030年までに50%、2040年までには100%の公共施設の建物に対して太陽光パネルを設置することを目標としています。しかし2022年11月の時点では、一般住宅に対しての設置義務化は国としては行われていません。
一方、東京都では2022年9月に、一般住宅を含む中小規模新築建物に対し太陽光パネルの設置を義務づける計画を発表しました。東京都では2025年4月から、およそ50社の大手住宅供給事業者に対し、新築される建物に太陽光パネルの設置が義務付けられます。
東京都が全国に先駆けてこのような取り組みを行った背景は、東京都のCO2排出の特徴にあります。日本全体では事業所や住宅などの建物から排出されるCO2の量は全体のおよそ3割です。しかし東京都では事業所や住宅から排出されるCO2が東京都全体から排出されるCO2のおよそ7割強にも及びます。そのため、他の都道府県に比べ、建物に対する対策が強く求められているのです。
東京都が太陽光パネルの設置を義務付けるのは、延床面積2,000平方メートル未満の建物で、大手メーカーが施工するものになります。しかしこれは全ての建物に設置が義務付けられているわけではなく、建物の日照や屋根の大きさなどからメーカーが判断し、設置を行う決まりになっています。メーカーには、供給した住宅の量に対し一定の発電容量の太陽光パネルの設置が求められるため、例えばある建物にはあまり多くの太陽光パネルが設置しなかった場合には、他の建物には多くの太陽光パネルを設置するような調整が求められることになります。
消費者は、太陽光パネルが設置された建物を購入するメリットやデメリットを考え、発注するハウスメーカーや購入する建物を選ぶことが求められるようになります。
住宅への太陽光発電の義務化は?
2022年11月の時点では、国としては一般住宅への太陽光パネルの設置を義務化してはいません。しかし2021年に公共施設に対して太陽光パネルの設置が義務付けられた際に、一般住宅への義務化も提言されてはいました。また、東京都だけでなく京都府京都市や群馬県でも、一定の大きさ以上の建物に対しては太陽光パネル設置を義務化することが決定するなど、他の都市の動きもあります。そのため、今後、日本として住宅に太陽光パネルの設置が義務化される可能性は十分にあり得ます。そのため、住宅での太陽光発電についても関係ないとは思わず、あらかじめ情報を入手しておくといいでしょう。
住宅での太陽光発電方法
住宅での太陽光発電には、主に2つの種類があります。一つは住宅の屋根を利用するもの。もう一つがソーラーカーポートの導入です。住宅の屋根に太陽光パネルを設置する方法は非常に一般的ですが、日本では多くの住宅の屋根は切妻屋根や寄棟屋根のような、中央で傾斜が合流する形になっています。そのため屋根の片側にしか太陽光パネルを設置できないなどのデメリットがあります。一方でカーポートの屋根は比較的フラットな形状をしているケースが多く、屋根全体に太陽光パネルを設置できるのがメリットです。とはいえ都市部ではカーポートや駐車スペースを持たない住宅も少なくありません。また住宅の屋根であっても郊外ほどには日照が確保できないなどの問題もあります。そのため、個々の住宅の状況を鑑みながら太陽光発電を導入する必要があります。
個人で導入する際のメリット・デメリット
住宅など、個人で太陽光発電を導入する際のメリットとデメリットを下記の表にまとめました。
メリット | デメリット |
自家消費による電気代の削減 | 設置費用がかかる |
余剰電力の売却による収入 | メンテナンス費用がかかる |
電気自動車との組み合わせによる ゼロカーボンドライブ | 家族が家で過ごすことが多い夕方や 夜間には十分な発電が難しい |
電気自動車との組み合わせによる ゼロカーボンドライブ | 台風などによる破損の際の修理費用 |
まずは自治体が見本となり、実践可能な手段を提示
個人住宅への太陽光パネルの設置も、特に新しい家屋を中心に進んではいます。しかし一方で、デメリットに対する不安や、まだまだ太陽光発電自体を身近なものと感じていないなどの理由から、太陽光パネルの導入に対して慎重な姿勢を示す人も少なくありません。
SDGsや脱炭素、カーボンニュートラルの実現ためには、日本では今後もさらなる太陽光発電の導入が進められるでしょう。中でも、住宅への太陽光パネルの設置は、小規模な場所でも設置することができ、都市のレジリエンスを高める効果もあるなど、メリットの多い方法と考えられています。そのため近い将来、個人の住宅にも太陽光発電が義務付けられるような、更なる政策が行われる可能性も多いにあります。
地域の住民に対し太陽光発電導入を促すためには、自治体が見本となり、実践可能な手段を提示するのが近道です。
例えば広島県では、EVカーシェアリングと完全自立型ソーラーカーポートが連携したサービスが提供されています。県が所有するソーラーカーポートで作られた電気で走るEVが、公用車として県に利用されるだけでなく、カーシェアリングという形で地域の住民にも利用できるようになっているのです。このような取り組みを通して、太陽光発電を使った設備を身近に感じてもらうことで、一般住宅での太陽光パネル設置も、より一層進んでいくと考えられます。
まとめ
日本では2009年に施行された余剰電力買い取り制度を皮切りに、太陽光発電の導入が進められてきました。現在国内で生産されている再生可能エネルギーのうち3割以上が太陽光によって賄われているなど、太陽光発電は日本の再生可能エネルギーの中心を担っています。日本では公共施設への太陽光パネルの設置が義務付けられており、東京都をはじめとするいくつかの自治体では個人の住宅を含む小規模の建物への設置も義務になりはじめています。今後、住宅への設置を進めていくためにも、まずは自治体が見本となり、太陽光発電のモデルケースを住民に示していくことが求められます。
【参考】 |