RE100が2025年3月に要件変更―改定内容と企業への影響を詳しく解説

再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際イニシアティブ「RE100」は、2025年3月に要件変更を行いました。企業のカーボンニュートラル対応が世界的に加速する中で、RE100の要件も適宜見直されています。

本記事ではRE100の内容を簡単に振り返りつつ、改定前後でどのような変更があったのか、今後どういった影響が予想されるかについてまとめました。脱炭素経営を推進するうえで見逃せない最新情報をしっかりと押さえておきましょう。

RE100とは

RE100とは、企業が事業で利用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすることを目標とする、国際的なイニシアティブです。ここではRE100について簡単に概要を説明します。

RE100加盟条件と参加企業

RE100は、2014年に欧米の多国籍企業を中心に結成されました。結成当時の参加企業は数十社程度でしたが、今では世界中から445社もの企業が加盟しています(2025年6月時点)。加盟した企業は、自社が設定した期限(最長2050年まで)の目標達成を目指し、再エネ導入・活用に取り組みます。

RE100の参加対象となるのは、年間消費電力量が100GWh以上の企業です。ただし、特例として日本企業は50GWh以上に緩和されています。また、年間電力消費量が100GWh未満(日本企業では50GWh未満)でも、RE100が定める条件を達成することで例外的に加盟できる場合があります。

RE100の認定を受けるためには、2050年までの任意の目標年を宣言し、事業全体を通じた100%再エネ化達成に向けて取り組むことが必要です。この活動を行うことにより世界各国での気候変動対策につながることはもちろん、企業にとっては投資家からのESG投資の呼び込みに役立つというメリットもあります。企業が再エネの導入を進め、需要を創出することで、発電事業者の投資が促され、市場の規模拡大や供給体制の整備につながります。これにより、中長期的にはコストの低下や供給の安定化が期待されます。

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RE100に適合する再エネ調達方法とは

RE100に適合する再エネ調達方法には、以下の4つがあります。

再エネの自家発電
自社の敷地内に設置した発電設備によるオンサイト調達、もしくは敷地外の設備にて発電するオフサイト調達において再エネ電力を直接調達する方法です。

再エネ発電事業者との電力購入契約(PPA)
再エネ発電事業者と直接契約で再エネ電力を調達する方法です。この調達手法には、再エネ価値と電力の両方を発電設備から調達するフィジカルPPAと、再エネ価値のみを調達するバーチャルPPAがあります。

電力小売事業者との契約
電力小売事業者から省エネ電力を調達する方法です。電力小売事業者が特定の発電プロジェクトから調達した電力を購入する方法と、電力小売事業者が提供する再エネ電力メニューを購入する方法があります。

再エネ証書(環境証書)のみの調達
再エネ電力証書の購入は、電力の購入先を変更せずに、再生可能エネルギーの「環境価値」のみを証書として取得する方法です。再エネの環境価値のみを手に入れることができます。そのため企業は契約をしている電力会社を変更しなくて良いというメリットがあります。

RE100技術要件の改定内容

RE100技術要件は定期的に見直しが行われています。以下では2025年3月に行われた要件変更を中心に、関連する項目についてもあわせて解説します。

2022年10月の改定における「再エネ調達15年ルール」

2022年10月に行われた改定では、いわゆる「再エネ調達15年ルール」が公表されました。この中では、2024年1月以降に調達する電力に対し、新設の発電設備または運転開始から15年以内の設備から電力や証書を購入することが規定されています。

RE100に適合する4つの再エネ調達方法(再エネの自家発電/再エネ発電事業者との直接契約/電力小売事業者との契約/環境証書のみの調達)から企業が選択する際に新設の設備を重視するルールを設けることによって、加盟企業のCO2排出削減を促進する狙いがあります。

ただし2024年1月以前に締結した契約は「15年ルール」の適用外です。また年間電力使用量のうち15%までは、運転開始から15年以内の要件を満たさない発電設備からの電力・証書の使用が例外的に認められています。

2025年3月の改定内容① 石炭混焼による電力の使用禁止

RE100は2025年3月、石炭と自然エネルギーの混焼による発電を認めない方針を発表しました。対象となるのは、加盟企業が2026年1月以降に使用する電力です。
発電方法の中でもCO2排出量が多い石炭火力発電は、カーボンフリーの目標とは相反するものです。そのため、今後は加盟企業に対して石炭を使った電力の使用を禁止し、さらにその他化石燃料についても使用の制限を検討するとしています。

2025年3月の改定内容② 証書の償却確認の徹底

同じ証書が何度も利用されるのを防ぐため、証書を使用したことを証明する償却(無効化)の手続きが必要です。しかしRE100事務局が加盟企業へ証書に関する調査を行ったところ、2022年時点で証書の使用・償却を確認できていない比率が全体の18%を占めていることがわかりました。

日本ではこの比率は34%にものぼり、その多くは小売電気事業者から購入したケースということもわかっています。そこで、2026年1月以降に使用する電力に対して証書の償却確認を徹底することで、自然エネルギーによる電力の使用を正しく証明することを加盟企業に要求しています。

2025年3月の改定内容③ コーポレートPPAにおける15年ルールの緩和

2022年10月に行われた前回の改定では、コーポレートPPAにおける15年ルールが公表されました。今回新たに15年ルールの例外規定として、再エネ発電設備をリパワリング(増強)した場合も適用できることが明記されました。リパワリングを行った発電設備の運転開始時点から電力・証書を購入し、かつその実績が確認できる場合に15年を超えて使用することが認められます。
日本では風力・水力発電を中心に、老朽化した設備のリパワリングが進められています。RE100に加盟した企業が最初の購入者になると、15年ルールの例外規定を受けられることから、RE100企業が長期需要を示すことで発電事業者がリパワリング投資に踏み切りやすくなる効果が期待されています。

RE100改定で予測される影響

RE100の改定によって、今後どのような変化が予測されるのでしょうか。考えられる影響について、以下でわかりやすく解説します。

調達可能な電力の選択肢が狭まる

2025年3月の技術要件改定により、石炭と自然エネルギーの混焼による電力がRE100で認められなくなりました。そのため、これらの電力を利用していた企業や今後の活用を検討していた企業は、今後新たな調達先を確保することが求められます。

また日本政府はこれまで、火力発電所の脱炭素策としてアンモニアと石炭の混焼発電を推進してきました。しかし、RE100が石炭の混焼を禁止したことで従来の日本政府の戦略に影響が出る可能性があります。

証書の償却確認の義務化による事務負担の増加

再エネ電力証書の償却(無効化)確認が今回の改定によって必須となったことで、企業内での証書管理や報告業務の厳格化が進むと予想されます。このため、証書を管理する部署の事務負担が増加する可能性があります。
非化石証書では従来、価値の保有のみで価値認定を行っていましたが、2024年度より証書化しなければ価値として有用にならないと定められました。利用確定処理と呼ばれるこの手続きは、法人の需要家が利用する場合には自社の法人番号の明示が求められます。また非化石価値を付与する小売電気事業者側では、事業者の登録番号と電力小売メニュー名を明らかにして手続きを行います。利用確定処理を徹底することで、証書のダブルカウントや償却漏れを未然に防げるでしょう。

サプライチェーン全体への影響拡大

RE100加盟企業は、自社の事業活動における再エネ比率100%を目指すだけでなく、サプライチェーン上の取引先にもRE100に準拠した電力調達を求める傾向があります。

2020年のCDP(環境情報の開示を求める国際的な非営利団体)による調査では、RE100企業の44%がサプライヤーの再エネ調達を促しているとの結果が出ています。現時点で自社がRE100対象企業でないとしても、大手取引先とのやりとりがある場合は、将来的なRE100対応が求められることも視野に入れておく必要があります。

まとめ

RE100による2025年3月の要件改定は、単なる基準の強化ではなく企業の再エネ調達における透明性・信頼性・実効性を高めるための大きな一歩です。参加企業は証書の償却に関する対応や、化石燃料を用いない再エネ電力への切り替えなどの取り組みが求められます。
RE100の要件は、今後も国際的な再エネ基準や市場の動向、各国のエネルギー政策に応じて変化していくことが予想されます。RE100参加企業だけでなく、サプライチェーン全体でイニシアティブや要件改定に関心を持ち、主体的に対応していくことが大切です。

【参考】