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近年、再生可能エネルギーが注目を集めています。CO2排出の抑制や、エネルギーの自給自足などの効果が見込めるからです。そのため国でもさまざまな政策を行い、再生可能エネルギーの利用を促進しています。この記事では再生可能エネルギーの必要性と、再生可能エネルギー普及のためにできることについて解説します。
目次
再生可能エネルギーが必要とされる背景
再生可能エネルギーの利用促進が求められる理由はさまざまですが、大きく分けて次の3つが挙げられます。
・エネルギーの自給率を上げる
・CO2の排出を抑制する
・エネルギー資源の枯渇に備える
日本では現在、エネルギー資源のおよそ90%を海外からの輸入に頼っています。電力をはじめとしたエネルギーのおよそ8割は、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料です。これらのエネルギー資源は日本ではあまり採取できないため、そのほとんどを海外からの輸入に頼らざるを得ません。化石燃料以外のエネルギー資源としては、原子力発電に使用するウランが挙げられますが、これも日本ではほとんど採掘できず、海外から輸入しなければいけません。日本は、従来の発電方法では、エネルギー資源をほとんど自給できないのです。
エネルギー資源を海外からの輸入に頼っていると、疫病の蔓延や国際情勢によって貿易がスムーズに行われなくなった際に、国内のエネルギー供給が滞る恐れがあります。エネルギーの供給は人々の暮らしをはじめ、産業や医療、防衛などといった、国民の安全にも直結するため、日本では長い間、エネルギーの自給率向上が一つの大きな課題になってきました。このような中、 国内でエネルギー源を調達できるものが多いのが、再生可能エネルギーが求められる理由の一つです。
再生可能エネルギーのもう一つの大きなメリットが、CO2の排出を抑制できる点です。従来のような化石燃料をエネルギー源とした発電方法は、発電時にCO2を発生します。CO2は温室効果ガスの一種であるため、地球温暖化や異常気象を引き起こすとされ、世界中でCO2の排出を削減する活動が行われています。2015年にはパリ協定が採択され、日本でも2050年までにCO2の排出を実質ゼロにする、カーボンニュートラルの実現を目指すことが決まりました。再生可能エネルギーには太陽光発電や風力発電、地熱発電など、発電時にCO2を排出しない発電方法もあります。CO2排出量の抑制は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成や地球温暖化対策として必要なだけでなく、国際社会において日本が引き続き評価されていくためにも、欠かせない項目の一つです。そのため再生可能エネルギーの導入促進を行っていく必要があるのです。
現在日本で主なエネルギー供給源になっているのは石炭や石油などの化石燃料ですが、これらの資源はあと50年程度で枯渇してしまうといわれています。化石燃料は植物や動物が地中で長い時間をかけて錬成されたものであるため、一度使ってしまうとなくなってしまうからです。エネルギー供給を化石燃料に頼ったまま資源が枯渇してしまえば、私たちの生活や経済活動が成り立たなくなってしまいます。そのため、私たちは今「使ってもなくならない」エネルギー源への切り替えが求められています。再生可能エネルギーとは、エネルギー源を利用しても比較的短い時間で再生するものを意味しています。太陽光や風力は発電に利用してもなくなることはありません。バイオマス発電に使用する間伐材や農業廃棄物なども、化石燃料とは異なり、比較的短い期間で再生します。つまり再生可能エネルギーであれば、エネルギー源枯渇の心配がなく、持続可能な経済活動が可能になるのです。そのため、化石燃料が枯渇する前に、できるだけ多くのエネルギーを再生可能エネルギーに切り替えていくことが求められているのです。
再生可能エネルギー促進させるためには
再生可能エネルギーの大きな特徴の一つは、太陽光パネルの設置のように、小規模な発電所を地域の各地に作る必要があるケースが多いことです。従来の火力発電所や原子力発電所のように、大規模な発電所を地方に作り、そこで大規模な発電を行い、それを遠く離れた都市部に送るスタイルではありません。エネルギーの地産地消ともいわれるように、電力の消費地の近くで小規模な発電をいくつも行い、エネルギーマネジメントなどと組み合わせて効率的に電力を活用することが求められます。そのため、それぞれの地域において発電設備を設置に対し住民の理解を得ていく必要があります。
前述のような理由により、今後日本では再生可能エネルギーの利用は避けて通れません。再生可能エネルギーが求められる背景に加え、再生可能エネルギー導入によるメリット、デメリットも含めて情報を適切に開示し、地域住民の理解と承認を得るのは、今後、自治体にとって重要な責務の一つになっていくでしょう。
地域住民の理解を得る方法としては、自治体が所有する公共施設において、再生エネルギー利用のモデルケースを提示する方法があります。
再生可能エネルギーを知る(知識編)
日本では、再生可能エネルギーの定義を「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるものとして政令で定めるもの」としています。再生可能エネルギーの種類や特徴などを次に紹介します。
太陽光発電
日本の再生可能エネルギーにおいて、最も発電量が多いのが太陽光発電です。光が当たると電気を発生させる半導体をパネル状にし、それを太陽光が当たる場所において発電を行います。太陽光パネルの設置場所には、工場や公共施設、住宅やカーポート、農業用地の上部など、現在活用されている場所の他、遊休農地のような活用されていないスペースなどが利用されます。
発電設備を作るために、わざわざ土地を用意する必要がなく、都市部でも発電が行いやすいのがメリットです。さらに電気を使うその場所で発電しやすいため、遠隔地の発電や災害時の電源としても利用できます。一方で、夜間の発電はできないことや、天候や季節によって発電量が少なくなってしまうのがデメリットです。
風力発電
特にヨーロッパにおいて発電量が多いのが、風力発電です。大きな風車を回す方法の他に、小規模の小さな風車を回す方法があります。
安定した風が必要なため、沿岸部や山の稜線沿い、大きな川の川岸、さらに海洋上に風車が作られるケースが多いです。そのため、どちらかというと郊外での発電が主になります。環境への影響が少なく、高効率なのがメリットですが、台風のような強い風が吹く際には安全のために設備を止めなければならないなど、天候の影響を受けやすいのがデメリットです。
バイオマス
動物や植物に由来する生物資源を燃やし、それらから発生したガスを利用して発電する方法です。間伐材をチップにして燃やしたり、家畜の排泄物から出るガスを利用したりしています。太陽光や風力と異なり、発電時にCO2が排出されてしまうものの、それらは元々その場にあったものとしてカーボンニュートラルに分類されるのが特徴です。また、一般には廃棄物として扱われる資源を利用するため、資源循環にもつながるのもメリットです。
バイオマス発電に使われる資源は林業や農業、畜産業から出るものが多く、さらに発電所を建設しなければならないため、そのような産業が盛んな地域の郊外で発電が行われるケースが多いです。
水力発電
近年では、大規模なダムを用いた水力発電に代わり、河川や農業用水、下水道を流れる水を利用した中小規模の水力発電の建設が活発になっています。
日本は降水量が多い国であるため、水資源が豊かで、エネルギー供給源が安定しているのがメリットです。一方でまだ国内では導入実績が多くはなく、水利権の調整が必要など、課題も残されています。
その他の発電方法
再生可能エネルギーを利用した発電方法には、地熱発電もあります。日本に多く存在する火山の熱を利用するため、日本の特徴を活かした発電方法と考えられています。安定した電力供給が可能な一方、火山地帯は国立公園や自然公園に指定され、温泉として活用されているケースが多いため、地域住民との調整が欠かせません。
発電は行わないものの、再生可能なエネルギーとして太陽熱を利用して湯を沸かし、地中熱を利用して冷暖房を行う方法もあります。今後、エネルギー問題を解決していく上では、発電だけでなく他の形でエネルギーを利用するケースもさらに増えていくでしょう。
再生可能エネルギーをつくる(実践編)
これまで電力は大手電力会社が遠くにある大規模発電所で作り、そこから送られてくるものでした。しかし再生可能エネルギーを用いた発電では、エネルギーの消費地の近くで、小規模な発電設備をいくつも作って発電を行うケースが増えていきます。そのため、自治体などにおいては、地域住民のモデルケースになるためにも、どのように再生可能エネルギーで電気を作り、どのように活用していくかが課題になります。
自治体の取り組みで地域を豊かに
再生可能エネルギーを利用した電気の利用は、エネルギーの地産地消が行え、地域活性化につながります。地域住民から支払われる電気の利用料が、従来は大手電力メーカーに支払われて地域外に流出していたのに対し、地元企業による新電力や地域新電力に電気料金が支払われるようになり、地域で経済が回るようになるからです。
例えば広島県ではソーラーカーポートとEVを活用したカーシェアリングにより、太陽光発電のモデルケースを地域住民に示すと共に、カーシェアリングという形でEV利用の経験や利益を生み出すプロジェクトを成功させています。また、福岡県みやま市の自治体新電力「みやまスマートエネルギー株式会社」は、使い道がない土地を利用してメガソーラーを立ち上げ、高齢者の見守りサービスも併せて行うなど革新的な取り組みを次々と行っています。
再生可能エネルギーを利用した発電のメリットの一つに、地域の特徴を活かし、地域の課題解決と並行しながら発電プロジェクトが行えることがあります。自治体が率先して再生可能エネルギーを活用した発電を行うことで、地域が豊かになった取り組み事例が、すでにいくつも存在しているのです。
まとめ
日本はエネルギー資源の9割を輸入に頼っています。日本のエネルギー自給率を上げ、CO2の排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの導入促進が避けられません。再生可能エネルギーには太陽光や風力、水力、地熱などがあり、日本では特に太陽光発電が主に行われています。再生可能エネルギーの利用を促進するためには、自治体がモデルケースとなって地域住民にメリットを体感してもらうのが近道になるでしょう。