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2011年の東日本大震災をきっかけに、エネルギーのあり方について見直す動きが強まりました。さらに2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では17個の持続可能な開発目標が掲げられており、その中には環境やエネルギーに関する項目も含まれています。そのため、近年、再生可能エネルギーへの注目度がますます高くなっています。この記事では再生可能エネルギーとはどのようなものであるかに始まり、導入方法や政府が提示する再エネガイドブックについて解説していきます。
目次
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、発電などに使用したエネルギー源が比較的短期間に再生し、繰り返し利用できるエネルギーのことです。これまでエネルギー源として多く使われてきた石炭や石油、天然ガスは化石燃料とよばれ、元々は地上にあった動植物が地層の中に埋まり、地中で長い時間をかけて変成されたものです。そのため再生不可能で、いまある化石燃料はあと50年程度で使い切られてしまうのではないかといわれています。そのような事態になれば、当然ながら電力などのエネルギーの供給が途絶え「持続可能な社会」ではなくなってしまいます。そこで今、化石燃料とは異なり、比較的短期間にエネルギー源が再生する「再生可能エネルギー」が必要とされているのです。
また日本では化石燃料の供給のほとんどを輸入に頼っているため、疫病や戦争によって外国との繋がりが絶たれれば、エネルギーの供給が立ちゆかなくなります。そのため、エネルギー安全保障と持続可能性、両方の観点からも化石燃料から脱却し、国内でもエネルギー源が調達可能な再生可能エネルギーへの切り替えが求められているのです。
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)では、再生可能エネルギーを「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるものとして政令で定めるもの」と定めており、具体的には太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力などが指定されています。
再生可能エネルギーの導入や切り替えは、日本だけで行われているわけではなく、ドイツやカナダなど、多くの諸外国でも同時に進められています。またSDGsへの取り組みや2015年のパリ協定などもあり、各国がどの程度真剣にこの問題に取り組んできたかが、国際的な場で試される場面も少なくありません。そのため日本でも、国内の環境や安全という観点だけでなく、国際的な影響力を持ち続けるという意味でも、再生可能エネルギーの導入が急がれているのです。
再生可能エネルギーの導入方法
前述のように、今、自治体や企業にとって再生可能エネルギーの導入は、ただ環境への配慮やエネルギーの自給率アップにつながるだけではありません。「その自治体や企業が、環境に対してどのような姿勢をとるか」が、世界や消費者、そこに住む人々からの、大きな評価ポイントになっているのです。
このような中、2014年にRE100が発足しました。RE100とは、「Renewable Energy 100%」の略で「企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ」を意味します。国際的なイニシアティブとは、さまざまな解釈があるものの、国際的な場面で、他を先導するに足りる推進努力を行うことと考えるとわかりやすいでしょう。2022年11月のデータでは、23カ国387社がこれに参加しています。RE100では、その基準に準拠するものとして、再生可能エネルギー調達に際し8つの手法を挙げています。
1. 企業が保有する再生可能エネルギー発電設備による発電を行う
2. 企業の敷地内に設置した、他社が保有する再生可能エネルギー発電設備からの電力購入する
3. 企業の敷地外に設置した再生可能エネルギー発電設備から専用線を経由して直接購入する
4. 企業の敷地外に設置した再生可能エネルギー発電設備から系統を経由して直接調達する
5. 電力小売との契約を行う
6. 再生可能エネルギー電力証書を購入する
7. 電力供給者が供給量と同量の再生エネルギー電力証書を購入している系統から調達する
8. 再生エネルギー由来電力の割合が高い系統から調達する
1つめの「企業が保有する再エネ発電設備による発電を行う」は企業による自家発電を意味します。2~5は外部から購入する電力です。6はグリーン電力証書やJクレジットなどを購入する方法で、立地条件や周辺環境などの都合上、再生可能エネルギーの調達が難しい場合などに使われます。使った化石燃料と同量の再生可能エネルギーが流通できるよう、証書を通じてお金を払うことにより、再生可能エネルギーに付加価値を添付する仕組みです。
このように、再生可能エネルギーの調達には、さまざまな方法があるのです。
日本の自治体においても、政府はSDGs未来都市の選定や脱炭素先行地域の選定を通じ、再生可能エネルギーの導入を促しています。そして他のモデルとなるケースには助言や補助金などの支援も行っています。そのような中で、自治体でも企業と同様に自らの事業の使用電力を100%再エネで賄う取り組みがスタートしています。そのためには、RE100に参加しているような企業の取り組みを参考にし、その再生可能エネルギー調達方法としてRE100に準拠した方法を選択するのが近道になります。
自治体の再生可能エネルギー導入おいてよく使われるのが、以下の3種類です。再生可能エネルギーの導入にあたっては、地域の自然や産業、人の暮らしなど、地域の特性に合った手法を選ぶ必要があります。続いては日本でよく導入される再生可能エネルギー3つについて、導入方法を解説します。
太陽光発電
太陽光発電は光が当たると電気を発生する半導体を利用した発電方法です。化石燃料も使わず、CO2も発生しない、非常にクリーンな発電方法の一つです。
太陽光発電は、カーポートの屋根や、建物の屋根、放置されている空き地などを利用して発電できるので、発電設備のための土地をわざわざ用意する必要がないのがメリットです。そのため、人口が多く、土地が少ない都市部などでも導入可能です。また地方においては、都市部同様にカーポートや建物の屋根に太陽光パネルを設置する以外にも、使い道のない空き地を利用して大規模な太陽光発電設備を作ることも可能です。
自治体の再生可能エネルギーの導入にあたっては、自治体が管理する建物の屋根に太陽光パネルを設置したり、公共施設の駐車場を利用したソーラーカーポートを導入したりすることにより、保有する再生可能エネルギー発電設備による発電が可能になります。また太陽光発電で作られた電気の購入、地域内の家庭や企業に太陽光パネルの設置を促す施策と併せて、再生可能エネルギー電力証書をやり取りする方法もあります。
風力発電
風力発電は、風の力を利用して風車を回し、発電する方法です。大きな風車を回すものと、縦型の小さめの風車を回す小型風力発電があります。
大きな風車を回す風力発電は、強い風を得やすい海岸線沿いや川沿い、山の稜線などでの発電に向いています。風車を設置するスペースも必要なため、都市部での導入にはあまり向いていません。また季節風などで、方角が比較的安定した風が吹きやすい場所のほうが向いています。一方で小型風力発電は、小さいものであれば街灯のポール程度の大きさのものから設置できるため、市街地であっても比較的設置しやすくなります。
自治体の再生可能エネルギーの導入にあたっては、風力発電を用いて発電した電気の購入を行う方法が多いです。一方で小型風力発電であれば公園など公共施設の敷地内でも発電でき、施設内の発電設備で作られた電気として利用することも可能です。
バイオマス発電
バイオマス発電とは、動植物から生まれた生物資源を燃やしたりガスにしたりして発電する方法です。日本では間伐材やもみ殻、家畜の排泄物を利用しているケースが多く、下水汚泥なども利用されています。
バイオマスは林業や農業、畜産業がさかんな地域のほうが入手しやすいため、適した産業がある地域での導入に向いています。都市部よりは郊外のほうが導入しやすいでしょう。
自治体の再生可能エネルギーの導入にあたってはバイオマス発電所の建設が欠かせません。そのため自治体が発電所を所有するのではなく、地域新電力や新電力などが保有する施設で作った電気を購入する方法が主になります。
再生可能エネルギー導入事例3選
日本では、すでに再生可能エネルギーを導入している自治体も少なくありません。またそれらの取り組みをもってSDGs未来都市やゼロカーボンシティに選定されている自治体も多くあります。ここでは実際に再生可能エネルギーの導入に成功した自治体の事例を3つ紹介します。
広島県の事例:世界初!EVカーシェアリング×ソーラーカーポート
広島県広島市にある広島県立広島産業会館では、2022年4月からEVカーシェアリングと完全自立型ソーラーカーポートが連携したサービスをはじめました。完全自律型ソーラーカーポートとは、外部からの電源が接続されておらず、太陽光で発電した電気のみを使ってEVを充電するものです。太陽光のみで充電されたEV社は広島県の公用車として利用される他、地域住民にカーシェアリングという形で提供されます。
これは自治体が保有する施設において、使用電力を100%再エネで賄っている事例の一つです。
大阪府吹田市の事例:日本初!再エネ100%タウン
大阪府吹田市にはSuita サスティナブル・スマートタウンがあります。分譲マンションの他に、ウェルネス複合施設や複合商業施設、交流公園などを備えた世代スマートタウンです。
関西電力が管轄内で、太陽光や風力を用いて発電した電気の他に、固定価格買取制度の期間が満了した個人太陽光パネルオーナーから購入した電気を一括受電。さらに非化石証書を利用し、実質再生可能エネルギー100%で街の電力を担うことに成功しました。この取り組みは日本で初となり、今後他の地域でも同様の取り組みが進んでいく計画が立てられています。
新潟県の事例:エネルギーの地産地消の実現を目指す!
新潟県新潟市では、再生可能エネルギーを利用した、電力の地産地消を実現するため、地域新電力「新潟スワンエナジー株式会社」を設立しました。新潟スワンエナジーでは、地域の再生可能エネルギーを活用するための電気プランを用意しています。このプランでは地域の産業廃棄物を利用したバイオマス発電や、市内や近郊の太陽光、風力、水力といった再エネ発電所から調達した電気などを供給します。このプランの利用により、市内の区役所や新潟市中央卸売市場において、特定の日のみではあるものの実質再生可能エネルギー100%を実現しています。
再エネガイドブックとは
再エネガイドブックとは、再生可能エネルギーの導入にあたって事業者や自治体が受けられる国や地方自治体の支援や、再生可能エネルギーの導入に関わる法律関係の情報をまとめたものです。資源エネルギー庁が公開しています。これを見ることで、それぞれの自治体が用意している補助金や、国からの固定資産税に対する特別措置など、有用な情報を一度に得られます。
自治体などで再生エネルギーの導入について検討している場合には、必ず一度は目を通しておいたほうがいい資料です。
・再生可能エネルギー事業支援ガイドブック 令和4年度版(資源エネルギー庁)
・再エネガイドブックweb版(資源エネルギー庁)
まとめ
再生可能エネルギーとは、化石燃料などとは異なり、比較的短期間に再生して何度も利用できるエネルギー源を元に作られたエネルギーのことです。主に太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などがこれに該当します。SDGsや安全保障の点から欠かすことができないものとして、政府も企業や自治体に対し、再生可能エネルギーの導入をすすめています。
【参考】 |