台湾の環境証書T-RECとは?導入メリットと仕組み、事例を解説

脱炭素化に向けた動きが世界全体で加速している中、台湾政府も野心的な目標を掲げ、脱炭素化に取り組んでいます。その中で、再生可能エネルギーの調達方法の一つとして需要が高まっているのが、再生可能エネルギーの利用を証明する「T-REC」です。T-RECを活用することで、企業は環境配慮の実績を示し、地域の信頼や取引先からの評価向上などのメリットを得られます。

台湾に進出する日本企業にとっても、T-RECの仕組みと活用方法を理解することは重要です。本記事では、台湾のエネルギー事情やT-RECの概要、課題、取得によって得られるメリット、そして実際の導入事例をわかりやすく解説します。

台湾の環境証書「T-REC」とは?

台湾環境証書(T-REC:Taiwan Renewable Energy Certificate)は、再生可能エネルギーの利用を証明するための証書です。台湾のBSMI(経済部標準検験局)が主導し、2017年に導入されました。制度の運営は国家再生能源憑証中心(T-REC Center)が担います。

台湾の脱炭素4大戦略と2大基礎

台湾は2022年3月に発表した「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」において、4大戦略と2大基礎を脱炭素の柱に掲げています。4大戦略は、エネルギー・産業・生活・社会の4分野で脱炭素を進める具体的な取り組みです。2大基礎はその4大戦略を支える土台となる研究や法整備です。

脱炭素4大戦略

戦略具体的な内容主要な目標
エネルギー転換再生可能エネルギー導入最大化
ゼロカーボン燃料の拡充
再エネ比率: 60〜70%
(2050年)
産業転換高効率設備・水素技術導入で産業競争力強化長期的には脱炭素エネルギーを100%利用
持続可能な生活への転換省エネ住宅・EV普及
グリーンライフスタイル促進
新築住宅のネットゼロ化: 100%
(2050年)
社会の強靭化インフラ強化・電力供給の安定化電力輸入依存度: 97.4%(2021年)→50%以下に(2050年)

台湾は2021年時点で 発電構成の83.4%を化石燃料である火力に依存し、再エネ比率はわずか6%でした。このように温室効果ガス排出増加が深刻化する中、台湾政府は「4大戦略」を柱に脱炭素化を推し進めることになります。

エネルギー転換目標としては、再生可能エネルギーの割合を2050年までに60〜70%へ引き上げを掲げています。産業転換では高効率設備や水素エネルギーなどの新技術を活用して、製造業のCO2削減を目指します。社会生活面では、EV普及や省エネ住宅のネットゼロ化、また電力輸入依存度を2050年までに50%以下に低減することでエネルギー安全保障の強化を図ります。

脱炭素2大基礎

基礎テーマ主な施策
技術研究開発持続可能・低炭素・循環技術の革新
社会科学分野の発展
CCUS設備の炭素吸収能力向上
水素エネルギー供給体制構築
次世代洋上風力発電機の基幹部品国産化
法制度の整備気候変動対応法
ESG金融支援
炭素税導入
グリーン金融行動計画2.0

台湾は4大戦略を支える2大基礎として、持続可能エネルギーやカーボンネガティブ技術の研究開発強化、気候変動対応法の制定をはじめとする法制度改革を進めています。

すでに2025年からは炭素税が導入され、GHG排出総量が年間2万5,000トン以上の製造業社が徴税対象となりました。また、グリーン金融行動計画2.0では企業投資の促進を図っています。

台湾のエネルギーミックス

2023年の台湾の発電構成は、石炭火力が42.2%で最も多く、次いで天然ガス火力が39.5%となっています。原子力は6.3%、再生可能エネルギーは太陽光・風力が合計で6.8%、水力が1.4%、バイオ燃料・廃棄物が1.3%でした。その他、石油火力は1.3%、揚水発電は1.1%の比率です。(經濟部能源局『112年度全國電力資源供需報告』)。

石炭火力の割合は依然として高いですが、2020年から2023年で約6%減少しています。一方で、ガス火力は同期間に約11%増加しています。これは台湾が…

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