ベトナムで日本企業がI-RECを導入するメリットとは?エネルギー事情・導入事例も紹介

ベトナムは脱炭素社会の実現に向けて、GXを国家戦略レベルで進めています。環境配慮やCO2排出削減は、現地に進出する日本企業にとっても軽視できないテーマといえます。そこで注目されているのが「I-REC」です。I-RECは現地で取得が容易なだけでなく、国際的な環境イニシアティブに利用できるメリットがあります。

本記事ではベトナムのエネルギー事情やGX、日本企業がベトナムでI-RECを導入するメリット、事例を解説していきます。

I-RECとは

I-REC(International Renewable Energy Certificate)は、再生可能エネルギーで発電された電力の「環境価値」を証明する国際的な証書です。オランダのI-TRACK Foundation(International Tracking Standard Foundation)が発行・認証・標準化を担い、60以上の国と地域で利用されています。

I-RECはベトナムにおいて、再生可能エネルギーの普及と企業の脱炭素化を支援する上で重要な役割を果たします。​2023年、ベトナムでのI-REC発行量は約1,769万MWhに達し、前年から2倍以上に増加しました。

ベトナムでは再生可能エネルギーの導入が進み、2022年末時点で27.3%(発電設備容量ベース)を再エネが占める一方で、送電線の整備や価格体系の設計の遅れから、電力需給が逼迫した状況が続いています。I-RECの普及を進めるためにも、発電設備と需要地とを結ぶ電力インフラの整備が重要になります。特にベトナム北部の電力インフラ整備は遅れており、発電に適した気候条件であるベトナム中部・南部で開発された再エネ電力を北部に供給し、再エネ利用が促進できるような抜本的な電力インフラ改革が求められています。

ベトナムのエネルギー事情

ベトナムのエネルギーミックスは依然として化石燃料に依存しています。再生可能エネルギーや原子力発電などの比重も高めようとしていますが、急激な伸びを見せる電力需要に対応するため、ベトナムの主力電源である石炭火力発電を縮小することは難しいといえます。

エネルギー需要の増加

ベトナムは今、経済発展の真っただ中にいます。外資系製造業の進出も続いており、2024年GDP成長率は7%以上と高水準です。

経済発展に伴い、電力需要も高まっています。2024年の国内発電量は前年比9.4%増の30万8,732GWhとなり、高い増加率を維持しています。ベトナム工商省が策定したシナリオによると、2025年の電力需要は前年比で11~14%増加すると予測されています。

一方で、2024年8月には中部から北部への送電線(2,500MW分)が完成し、広域での電力融通が強化されています。また、2025年からは三菱商事などが出資するブンアン2火力発電所や新水力発電所の導入で、約2,013MWの発電容量が増える予定です。

エネルギーミックス

ベトナムの2024年時点における電源構成は、火力(主に石炭)43%、水力28.7%、再エネ26%(太陽光19.9%、風力6.1%)という比率です。

最大の課題は、石炭火力がエネルギーの中心を担っていることです。2024年のピーク発電時では、石炭火力が48.7%を占めました。

また、再エネ発電施設の偏在といった課題もあります。北部は外資系製造業が集中するエリアですが、この地域の再エネ導入率は南部中部よりも低くなっています。中部や南部で発電された再エネを北部に送電するためのインフラ整備が進められていますが、これからは発電施設自体の増強も重要になってくるでしょう。

ベトナムのGX戦略

ここでは、ベトナムのGX戦略のポイントを解説します。ベトナム政府は具体的な数値目標を掲げ、2050年の脱炭素を目指します。

2050年までにカーボンニュートラルを達成

ベトナムは2021年11月、英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、2050年までにネットゼロを…

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