【自治体担当者必見!】ゼロカーボンシティ宣言とは?

SDGsや環境への関心が高まる中、日本では2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。エネルギーを作ったり使ったりすることで、多くのCO2が排出され、それが地球環境に大きな影響を与えているからです。例えば石油を燃やすと、石油に含まれるC(カーボン)がO2(酸素)と結びつきCO2となります。CO2は温室効果ガスの一つであり、地球温暖化の原因の一つになります。そのため、排出されるCO2を減らし、さらに森林などによってCO2を吸収することで、排出されるカーボンの量をトータルで0にしようという取り組みが行われています。それがカーボンニュートラルという考え方です。

今回はカーボンニュートラルに向けた取り組みの一つであるゼロカーボンシティについて解説します。

ゼロカーボンシティとは?

ゼロカーボンシティとは、カーボンニュートラルの実現を2050年までに目指すことを宣言した自治体のことです。環境省の定義では「2050 年に CO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自らが又は地方自治体として公表された地方自治体」となっています。

私たちが生活し、経済活動を行うためには、電気や燃料といった多くのエネルギーが必要ですが、例えば太陽光発電や風力発電で作られた電力のような再生可能エネルギーを利用し、省エネに取り組み、燃費のいい自動車を利用するなどの工夫により排出するCO2の量は減らせます。しかしCO2の排出を完全になくすのは不可能です。そこで植林や森林保全を行い、植物の光合成を利用して排出されたCO2を吸収してもらいます。このような形で、排出されるCO2をトータルで0にするというのが、カーボンニュートラルの考え方です。

2015年に合意された「パリ協定」という国際的な取り決めを受け、日本では2050年までに国としてカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。そこで日本では国としてだけでなく、各自治体にもカーボンニュートラルを目指してもらうため「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」を実施。2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明し、取り組みを行っている自治体を「ゼロカーボンシティ」とし、さまざまな支援を行っていくことにしたのです。

ゼロカーボンシティとして取り組むべき目的とは?

日本では2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、まずは2025年までに脱炭素先行地域の構築を目指し、重点的な対策を行うと決めました。脱炭素先行地域とは、地方自治体や地元企業が中心となって、地域課題の解決や住民の暮らしの質の向上を実現しながら、同時にカーボンニュートラルに向けた取り組みを先行的に行う地域のことです。これによりカーボンニュートラルの先行モデルを作り、さらにその取り組みを全国に広げていくという作戦を立てたのです。つまりゼロカーボンシティの目的は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、他の自治体の手本となることなのです。

この取り組みでは、地域の特性に合わせたCO2排出削減や、再生可能エネルギーの利用、地域の自然資源等を生かした吸収源対策などが掲げられています。

さらに、各家庭での太陽光発電の活用や公共施設などでの省エネの徹底、再生可能エネルギーによって作られた電気を利用したEV(電気自動車)などの利用などを含めた8つの重点対策が定められました。

各自治体の事例

政策開始後、多くの自治体がゼロカーボンシティの宣言を行い、2022年9月末の時点では785の自治体がこの取り組みに参加しています。2020年の4自治体から飛躍的に増えていることがわかります。
ゼロカーボンシティを宣言すると、環境省や経済産業省資源エネルギー庁からの支援が受けられるのに加え、地域の活性化や自治体のイメージ向上など多くのメリットがあります。ここでは実際の事例をいくつか紹介します。

図1:ゼロカーボンシティ宣言 自治体人口・数の推移
出典:2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体(環境省)

熊本県阿蘇市:ソーラーカーポートの導入

熊本県阿蘇市では、2017年、公民館や物産館などの公共施設の駐車場を利用し、ソーラーカーポートの導入を行いました。ソーラーカーポートとは、カーポートの屋根に太陽光発電パネルを備えたものです。太陽光による発電は、再生可能エネルギーの一つであり、発電時にCO2を排出しません。ここで作られた電気は、公共施設で使用、または電気自動車の充電に使われ、自治体のCO2排出削減に役立ちます。

また阿蘇市は2020年に熊本連携中枢都市圏のひとつとして、ゼロカーボンシティ宣言を行っています。

岡山県真庭市:バイオマス発電事業

岡山県真庭市では2015年からバイオマス発電事業に取り組んでいます。林業や製材業の盛んな真庭市では、間伐材や未利用材、製材所から出る端材など、多くの木材が産業廃棄物として排出されていました。そこで、廃棄される木材を真庭市が買い取り、バイオマス発電の燃料に加工する事業をはじめました。特にこの燃料の調達や流通体制を市が率先して整えた実績は、他の自治体からも高い評価を受け、燃料の加工所を見学するバイオマスツアーも行われました。

そして2020年、真庭市はバイオマス発電やそれによって作られた電気を利用したEVステーションの設置などを軸に、ゼロカーボンシティ宣言を行いました。

兵庫県神戸市:公共交通利用促進でCO2削減

兵庫県神戸市では2005年からエコファミリー制度を導入しています。これは公共交通機関の利用を促進するための制度で、土日祝日などに保護者が同伴してバスや地下鉄を利用する小学生以下の子どもの運賃が無料になるものです。この制度の狙いは、現在の公共交通利用を促進するだけでなく、次世代を担う子どもたちに公共交通機関を利用する経験や習慣を身につけてもらい、将来的にも公共交通を利用してもらう部分にあります。

神戸市はこの他にもシェアリングエコノミーの促進などを行い、化石燃料に依存する社会をかえる取り組みに力を入れています。神戸市は2020年にゼロカーボンシティの宣言をした他、市内でゼロカーボンにチャレンジする団体や個人に対し補助金を交付するなどの政策を行っています。

愛知県豊田市:ゼロカーボンバンク

愛知県豊田市は2019年に全国に先駆けてゼロカーボンシティ宣言を行い、市民と企業、行政が一丸となった取り組みを行っています。

豊田市では地元企業のアイシンと共に家庭用燃料電池システム(エネファーム)を用いた、一般家庭からのCO2排出量削減に取り組んでいます。エネファームを導入する家庭に補助金を交付するのと引き換えに、J-クレジットという「削減や吸収できたCO2の量」を市に譲渡します。市はこのJ-クレジットを、CO2排出をどうしても0にするのが難しい市内の企業に販売し、補助金の支出分を補填するというモデルです。

さらに企業向けに脱炭素経営や削減対策の基礎知識を学ぶための脱炭素スクールも開講し、地元企業と共にゼロカーボンシティを目指しています。

ゼロカーボンシティ宣言とは?

ゼロカーボンシティになるためには、ゼロカーボンシティ宣言を行わなければいけません。カーボンニュートラルの実現に向けたさまざまな取り組みを行っていても、宣言をおこなわなければ、ゼロカーボンシティにはなれないのです。

ゼロカーボンシティ宣言とは、自治体がカーボンニュートラルの実現を2050年までに目指すことを公式に宣言することをいいます。市町村単位だけでなく、阿蘇市が熊本連携中枢都市圏として宣言を行ったように、複数の自治体と共に連名で宣言することもできます。また県としての宣言も可能です。

ゼロカーボンシティ宣言方法

ゼロカーボンシティ宣言を行うには、さまざまな方法がありますが、環境省からは次のような表明方法が提示されています。

・記者会見やイベントで首長が表明する
・議会で首長が表明する
・報道機関へのプレスリリースで首長が表明する
・自治体のホームページで表明する

基本的に自治体の首長などによる表明が必要になります。
また表明後は環境省大臣官房環境計画課への連絡が必要です。

環境省から受けられる支援について

環境省では「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」により、ゼロカーボンシティ宣言を行う自治体を支援しています。
単純に補助金などを交付するのではなく、各地域の強みや課題、地域のニーズなどを元に人材や情報、技術の面からも継続的で包括的な支援を行うとしています。

例えば、温室効果ガス排出量の現状把握(見える化)に対する支援や、ゼロカーボンシティの実現に向けたシナリオ作成に対する支援などもあります。

まとめ

ゼロカーボンシティとは、2050年までにゼロカーボンを実現することを宣言した自治体のことで、この宣言をゼロカーボンシティ宣言といいます。2022年9月末の時点では785の自治体が宣言を行っています。各地域の強みや課題に応じて、さまざまな取り組み方法があり、環境省からもそれぞれに合った方法での支援が行われています。

【参考】