カーボンフットプリント(CFP)とは│意味や算定の流れ、取り組み事例も解説 | 自然電力の脱炭素支援サービス – 自然電力グループ

カーボンフットプリント(CFP)とは│意味や算定の流れ、取り組み事例も解説

気候変動対策における脱炭素化推進はすでに企業の社会的責任となりつつあります。そのため近年、国内外で企業によるカーボンフットプリントの取り組みが広がっています。

カーボンフットプリントとは、製品やサービスのライフサイクルにおける温室効果ガスの排出量をCO2に換算し可視化する手法です。

本記事ではカーボンフットプリントの意味から算定の流れ、ガイドラインまでわかりやすく解説しますので、企業担当の方はぜひご一読ください。

カーボンフットプリント(CFP)とは

カーボンフットプリントとは、製品やサービスのライフサイクルにおける温室効果ガスの排出量を二酸化炭素(CO2)に換算し、数値化し表示する手法です。可視化されることで環境負荷の大きさを把握することができます。

カーボンフットプリント(CFP)の意味

カーボンフットプリントは英語で「Carbon Footprint of Products」と表記され、「CFP」と略されるため本記事でも以下はCFPと呼称します。

フットプリント(Footprint)とは「足あと」を意味します。つまり「カーボンフットプリント(Carbon Footprint)」とは「炭素の足あと」のことで、温室効果ガスの足あとをたどるという意味です。

このほかにも環境に関連する用語として「エコロジカルフットプリント」や「ウォーターフットプリント」などがあります。

カーボンフットプリント(CFP)の役割

例えばここに紙パックのオレンジジュースがあります。この製品が製造されてから消費されるまでにどれくらいの工程があるでしょうか。

①【原材料調達】紙パックに使用する原材料の調達・ジュースに使用するオレンジの生産
②【生産】商品の製造・容器の製造
③【流通・販売】商品が消費者にわたるまでの輸送
④【使用・維持管理】使用するまでの保管・冷蔵
⑤【廃棄・リサイクル】消費後の紙パックの廃棄・リサイクル

このように商品の製造には複数の工程がありそれぞれで燃料が使用され、温室効果ガスが排出されています。CFPはサプライチェーンのどの部分でどのくらいのCO2を排出しているのか可視化するため、脱炭素への具体的な道筋を検討することができます。

カーボンフットプリント(CFP)が注目される背景とは

カーボンフットプリントが注目されている背景には、自社製品における地球温暖化への影響を把握する必要が生じている現状があります。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、1970年以降、世界の平均気温は、過去2000年にわたって経験したことのない速度で上昇したと報告しています。有効な気候変動対策が取られなければ、地球の平均気温は2050年までに2℃近く上昇する危険性も示唆されています。

気候変動は豪雨や干ばつ、熱波などの異常気象を招き世界各地に甚大な被害を及ぼすため、早急な対策が必要です。地球温暖化を誘発する温室効果ガスの発生は、GDPと人口増加に伴って増え続けており、化石エネルギーによるCO2排出量の増加が要因と言われています。

企業は自社製品やサービスの提供による温室効果ガスの排出削減が世界的に求められるようになりました。そのため、CO2を始めとした温室効果ガスの排出量を把握できるCFPの取り組みが注目されています。

LCA(ライフサイクルアセスメント) でCO2排出量を可視化可能

CFPの特徴として、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment:LCA)を通じてCO2排出量を把握できるということが挙げられます。LCAで排出量を把握できれば、事業活動において最も大量にCO2を排出している部分を把握することができ、適切なCO2削減につなげることが可能です。

ここではLCAについて簡単に解説し、CFPとの違いについてもご紹介しましょう。

LCAとは

LCAとは「ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)」の略です。ライフサイクルとはもともと生物の誕生から死までの一生のことであり、アセスメントとは「評価」や「査定」を表す単語です。

LCAとは製品やサービスの資源調達から生産や流通、そして消費や廃棄、再生にいたるライフサイクル全体の環境負荷を定量的に可視化する手法です。CFPはLCAの手法を通じてCO2排出量を算定するものです。

【関連記事】
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは|意味・企業への影響を知って脱炭素経営に役立てる

CFPとLCAの違いとは

CFPはLCAの手法を活用するため、両者の違いがよくわからないという方もいるようです。CFPは温室効果ガス排出量をCO2に換算して数量を把握できます。つまり気候変動対策に特化した評価を算定するために必要な手法です。

以下に参考としてLCAとCFPの違いをまとめました。

LCA製品の一生を通じて、あらゆる環境領域(オゾン層破壊、酸性化、森林破壊、生態系破壊、海洋汚染、水質汚染等)の評価を行うため、企業の環境活動に幅広く活用が可能
CFPLCAの仕組みを通じて製品やサービス単位の「CO2排出量」の定量化を行う。製品やサービスの脱炭素化、低炭素化を推進するために有効な手法で消費者にもアピールしやすい

カーボンフットプリント(CFP)のガイドライン

CFPを実践するためのガイドラインは経済産業省と環境省により定められています。
ここでは実際の算定とCFP申請の流れを解説します。

算定方針検討:目的を明確化する

CFPにおいて何より重要なのは、目的を明確にすることです。
算定する対象の製品を何にするのか。対象製品のどの過程の算定を行うのか。算定するライフサイクルステージをどこにするのか。さまざまな点を考慮して具体的な目的と方針を検討し、自社にとって有効な温室効果ガス削減を実施する必要があります。

算定範囲の設定:ライフサイクルステージで把握する

算定方針が確定したら次は算定対象を明確にするためのバウンダリーの設定を行います。具体的な取り組み方法としては、ライフサイクルステージを対象としたライフサイクルフロー図の作成が挙げられます。これにより対象製品の温室効果ガス排出源を広範に把握することができ、算定する範囲を明確にすることが可能です。

算定結果の開示:企業の取り組みを公開する

CFPの情報を消費者にむけて広く公開するために表示・開示に関するルールを確認し、CFP算定報告書を作成します。改めて自社の目的を確認し、効果的な表示・開示方法を検討することが大切です。発信方法としては、プレスリリースなど報道機関向けにサステナビリティへの取り組みを印象付けるニュースとして説明したり、投資家向けにレポートを公開したりといった自社ツールを活用する方法、パッケージや販売店での店頭表示など製品に表示する方法、テレビや新聞・雑誌といったメディアを活用する方法などがあり、ターゲットと訴求内容に応じて効果的に発信できるよう各社様々な工夫が見られます。

CFPを公開する際には、算定情報の確実性を保証するために CFP 算定報告書を分かりやすく表示します。

カーボンフットプリント(CFP)の申請の流れ

国内のCFPは主に「SuMPO環境ラベルプログラム」によります。そのためここでは「SuMPO環境ラベルプログラム」の申請方法を簡単にご紹介していきます。

CFP申請

CFP申請を行った後、PCR(Product Category Rule)に基づきCFPを算定します。PCRとは、同一商品種に関して、CFPを算出・表示するためのルールや要求事項、指示などがまとめられたものです。PCRによる第一次データを収集したら、活動量に排出原単位を掛け合わせCO2排出量を計算します。

第三者機関による検証

算定内容を検証するための申請書等をCFPプログラム事務局に提出し、その後製品に応じて選任されたCFP検証員より検証が実施され合否の判定がされます。

CFPマーク取得公開

検証に合格したら登録・公開手続きおよびCFPマーク使用許諾契約を行うことで、自社の製品にCFPマークが付与されます。

カーボンフットプリント(CFP)の国際動向と課題

CFPの国際動向に関しては、欧州バッテリー規則について理解しておくことが必要です。また国内に関してはルールの整備などの課題が存在します。

欧州で進むカーボンフットプリント(CFP)の義務化とは

気候変動対策のルール形成におけるリーダー的存在である欧州連合(EU)は、2024年からCFPの申告義務を含む「欧州バッテリー規則」が適用されることになりました。
今後は第三者検証機関が証明したバッテリーでなければ、EU域内ではバッテリーはおろかEV(電気自動車)を販売できなくなる恐れがあります。

EU域内で事業活動を行う企業は注視していく必要があるでしょう。

【関連記事】
欧州(EU)電池規則とは|内容・日本企業への影響をわかりやすく解説

カーボンフットプリント(CFP)の課題

脱炭素化推進で注目されるCFPですが、現状では次のようなさまざまな課題も存在します。

  • CFPの算定・検証に関する共通ルール整備の遅れ
  • グリーンウォッシュを 防ぐルールなどの整備の遅れ
  • 第三者検証の仕組みの構築等
  • 消費者の認知度の低さ

今後は国際的にも国内的にもこれらの課題を解決していくための積極的な議論が必要です。

カーボンフットプリント(CFP)企業・商品事例紹介

ここからはCFPに取り組んでいる企業事例をご紹介していきます。

Allbirds合同会社(ファッションブランド)

「Allbirds」は靴のデザインと販売を行うアメリカのファッションブランドです。2020年ファッションブランドとして世界で初めて全製品にCFPを表示することを発表しました。「Allbirds」はCFPの取組で昨年比10%以上のCO2削減に成功し、メディアや消費者の問い合わせが増加したと報告しています。

出典:カーボンフットプリントを表示した製品販売の取組事例(環境省)

明治ホールディングス株式会社(食品)

チョコレートで有名な製菓会社「明治」は、明治ミルクチョコレートを対象としたCFPを実施しました。チョコレート製造過程でCO2を大量に排出するホットスポットを確定し排出量を可視化することで、CO2削減策目標を大きく推進したのです。

出典:令和5年度 製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業 p.3(環境省)

まとめ:カーボンフットプリントでCO2排出量を可視化して脱炭素化を推進しよう

脱炭素化に有効な手法であるカーボンフットプリント(CFP)についてさまざまな角度から解説しました。

世界は脱炭素推進に向けて大きく動き出しているため、それに乗り遅れることは企業にとって大きな損失を招くことになるでしょう。

ぜひ本記事でカーボンフットプリントの知見を深め、自社の脱炭素化推進の一歩としてください。

【参考】