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CO2排出量を計算するには?計算式とおすすめの排出削減策も解説
近年、世界中でCO2の排出量削減の動きが加速しており、日本国内でも多くの企業が取り組みを始めています。CO2を削減するためには、まず自社がどれくらいのCO2を排出しているのかを把握する必要があります。この記事ではCO2排出量の具体的な計算方法と、計算をすることで得られるメリット、計算結果をもとに次に取るべきアクションを解説します。
目次
CO2排出量の計算はなぜ必要なのか
CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を知ることは、削減への第一歩です。ここでは国内の温室効果ガス排出量の実情と、CO2排出量の計算が求められる背景についてまとめます。
温室効果ガス排出量の現状
2020年に日本国内で排出された温室効果ガスは、CO2換算で11億5,000万トンでした。前年より約6,200万トン減少した2020年については、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞が要因の一つとして考えられますが、それ以前の年を見ても、CO2排出量は2014年以降減少傾向にあるといえます。
出典:2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要(環境省)
「減少を続けているなら問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、日本政府は2013年度を基準として温室効果ガスの削減目標を「2030年までに46%減(約7.6億トン)」と掲げています。さらに「2050年までに排出実質ゼロを目指す」という高い目標もあることから、国内での温室効果ガス排出削減の取り組みはますます求められています。
温室効果ガス排出量の報告が義務化された
2006年4月1日より、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づいて、一定以上の温室効果ガスを排出する企業は排出量の報告が義務付けられました。この情報は経済産業省・環境省によって集計され、誰もが閲覧できる形で公開されます。
温対法の対象となるかどうかは、企業の年間エネルギー使用量や業種、年間輸送量などによって決まります。広く温室効果ガス排出量を公表することを通して、企業のCO2削減の取り組みを加速する狙いがあることから、企業責任としてCO2排出量の計算が求められるようになりました。
企業の環境活動は機関投資家の判断基準になる
昨今は企業へ投資をおこなう際、「環境保全活動をしているか否か」が重要な評価点の一つとなっています。機関投資家や金融機関は企業の取り組み状況を知るために、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)という国際機関がまとめた質問項目に沿って情報開示された内容を重視しています。日本においても、 東京証券取引所のプライム市場ではTCFDと同等程度の情報開示が求められるようになりました。中には「CO2を多く排出する企業であること」を理由に持ち株を手放したり、融資を停止したりする機関投資家も存在します。企業が気候変動に対するリスクを把握し、経営戦略に盛り込んでいるかどうかは、国内外の機関 投資家や金融機関が注目しているのです。
CO2排出量を計算するメリット
企業がCO2排出量の計算をおこなうと、どのようなメリットがあるのでしょうか。温室効果ガス削減の取り組みに関する面と、社会的信用獲得の面から解説します。
CO2の削減対象が明確になる
CO2排出量の削減は、具体的な数値目標を持たずに実施したり、他社で上手くいった事例を自社に取り入れたりしても、思ったような成果は得られません。自社に合った対策を効果的に打つためには、CO2排出量の計算は欠かせないということです。CO2排出量の計算をし、一定の水準を満たす目標を立てると、SBT(Science Based Targets)認定を受けることが 可能となります。SBTとは環境問題に対する企業の取り組み姿勢を示す目標設定です。パリ協定の求める「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑える努力をする」という水準に合致した温室効果ガスの削減を目指す活動を指します。SBTに加盟することで企業として環境問題に取り組む姿勢を示せるだけでなく、CO2排出に向けた無駄のない削減目標の立案・実行ができるメリットがあります。
企業の信頼性が向上する
CO2排出量の情報を公開することは、取引先や顧客はもちろん、金融機関の信頼度を高めることにもつながります。昨今のSDGsへの意識の高まりから、多くの投資家や金融機関は「地球環境を守り、持続可能な経営活動をしているかどうか」を大きな評価基準とする流れが生まれています。CO2排出量の計算をおこない、「どういった対策で、いつまでにどのくらい温室効果ガスの排出を減らすのか」を具体的に示し実践しましょう。
CO2排出量を計算する方法
CO2排出量は、環境省の定める方法で計算します。ここでは計算に関連する用語の意味と、具体的な計算式について解説します。
CO2排出量の計算に必要な「CO2排出係数」とは
CO2排出係数とは、様々な事業活動における単位生産量・消費量等あたりのCO2排出量を示す数値です。例えば電力の場合、電力会社が1kWhの電気を発電するためにどのくらいのCO2を排出したかを表します。温室効果ガスの排出量を計算する際の国際的な基準に「GHGプロトコル」がありますが、日本のCO2排出係数もこのガイドラインに基づいています。電力の場合では地域の電力需要や発電のために使用されるエネルギー(石油・石炭・天然ガスなど)の違いによって排出係数が決められており、環境省のホームページで算定方法と排出係数の一覧表を見ることができます。
サプライチェーン排出量を計算する方法
サプライチェーン排出量とは、企業活動において工場などの設備から直接排出される温室効果ガスだけでなく、原料の調達や製造、物流・販売などの一連の流れから発生するCO2までを含んだ排出量のことです。サプライチェーン排出量は「Scope1の排出量+Scope2の排出量+Scope3の排出量」の合計で算出されます。以下でScope1から3の概要説明と計算方法について詳しく解説します。
図:サプライチェーン排出量全般
・Scope1の概要と計算方法
サプライチェーン排出量を構成するScope1とは、企業が事業活動で直接排出するCO2を指します。例えば工場での燃料の燃焼や、オフィスで使用するエアコンから出る温室効果ガスなどです。Scope1のCO2排出量は、以下の計算式で算出します。
Scope1の排出量=活動量✕排出原単位
活動量は電気の使用量や貨物の輸送量のことで、排出原単位は電気使用(1kWhあたり)のCO2排出量、貨物の輸送量1トンキロあたりのCO2排出量などが該当します。
・Scope2の概要と計算方法
サプライチェーン排出量を構成するScope2とは、他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴った間接的なCO2排出です。Scope2のCO2排出量は、以下の計算式で算出します。
Scope2の排出量=活動量✕排出係数
活動量はScope1と同じく、電気や蒸気の使用量です。複数の工場や支社がある企業の場合は、それぞれの拠点での使用量を合算して計算します。排出係数については、環境省が公表する「排出係数一覧」から、自社が契約する電力会社などの排出係数を確認しましょう。
・Scope3の概要と計算方法
サプライチェーン排出量を構成するScope3とは、企業の事業活動に関連する他社が排出したCO2のことです。Scope3は物品の輸送や社員の通勤・出張、廃棄物処理など15カテゴリに分類されます。
区分 | 該当する排出活動(例) | |
1 | 購入した製品・サービス | 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達 |
2 | 資本財 | 生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上) |
3 | Scope1,2に含まれない 燃料及びエネルギー活動 | 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等) 調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等) |
4 | 輸送、配送(上流) | 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主) |
5 | 事業から出る廃棄物 | 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理 |
6 | 出張 | 従業員の出張 |
7 | 雇用者の通勤 | 従業員の通勤 |
8 | リース資産(上流) | 自社が賃借しているリース資産の稼働 (算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半) |
9 | 輸送、配送(下流) | 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売 |
10 | 販売した製品の加工 | 事業者による中間製品の加工 |
11 | 販売した製品の使用 | 使用者による製品の使用 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理 |
13 | リース資産(下流) | 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働 |
14 | フランチャイズ | 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動 |
15 | 投資 | 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用 |
その他(任意) | 従業員や消費者の日常生活 |
Scope3のCO2排出量は、以下の計算式で算出します。
Scope3の排出量=活動量✕排出原単位(カテゴリ別)
活動量・排出原単位の考え方はScope1と同じです。Scope3では、この基本式を15カテゴリでそれぞれ計算し、それを合算することで自社のサプライチェーン排出量が得られる流れです。
Scope3の削減に取り組むメリットとは
企業がScope3のCO2排出量を算定し、削減に取り組むことにはいくつかのメリットがあります。
・複雑なサプライチェーンの流れを棚卸しできる
・CO2削減のためどこから着手すべきかがわかる
・グループ会社や取引先へ現状を説明し、協力を要請しやすい
事業活動のどの部分で特にCO2排出量が多いのかが把握できれば、具体的な次の一手が選択しやすくなります。例えば、販売店までの商品輸送における排出が多くの割合を占めている場合、環境負荷が少ない輸送方法への切り替えや貨物の積載率を向上させる施策を実施することで、Scope3のCO2排出量削減につながります。
CO2排出量の計算結果を受けた次のアクション
CO2排出量の計算を実施した後、次はどのような行動をとればよいのでしょうか。具体的なCO2削減の施策としておすすめの方法を3つご紹介します。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーとは、太陽光や太陽熱、地熱、風力、中小水力、バイオマスなどの地球資源を指します。石油・石炭・天然ガスなどの化石エネルギーとは異なり、常に存在するエネルギーのため「枯渇しないこと」「CO2を排出しないこと」が最大の特徴です。中でも太陽光発電は企業だけでなく一般家庭にも広く普及しています。再生可能エネルギーの利用は企業の脱炭素化の取り組みとして大きなアピールポイントとなります。加えて、地震などの災害時にもエネルギーが確保でき、事業の継続性という観点でも重要です。
設備などの省エネルギー化
自社のCO2排出量を削減するには、省エネルギー化に向けた活動も効果的な選択肢です。CO2排出量の計算によって明らかになった自社の課題に沿って、エネルギー効率の高い設備導入を推進しましょう。設備を選ぶ際に重要なのは、「コストの安いもの・取りかかりやすいもの」から手をつけるのではなく、「最もCO2を排出しているもの・無駄が多いものを改善すること」です。初期投資がかかったとしても、全体で見れば設備のランニングコストが下がれば、継続的なCO2排出量の削減につながります。
もし自社で設備投資の資金を用意することが難しい場合は、環境省が毎年展開している様々な交付金や支援事業を活用するといいでしょう。
参考:令和5年度予算 及び 令和4年度補正予算 脱炭素化事業一覧(環境省)
クレジット・環境証書の購入(カーボンオフセット)
カーボンオフセットは、CO2排出量を削減するために再生可能エネルギーや省エネルギー化を推進したうえで、「企業の事業活動において削減が難しい排出」について他の方法で埋め合わせをする考え方です。クレジットや環境証書を購入することで、自社が事業活動で出す温室効果ガスを相殺できます。
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まとめ:CO2排出量の計算をして自社の状況を把握しましょう
自社の排出するCO2量を把握することは、温室効果ガス削減活動の第一歩です。今回ご紹介した具体的なCO2排出量の計算方法をもとに、まずは自社の現状を知ることから始めましょう。そして見えてきた課題や目指すべき姿に向かって目標を立て、より効果の高いCO2排出量削減の施策を実行することが重要です。