I-RECとは?メリットや活用方法、非化石証書などとの違いを紹介

I-RECとは、50以上の国と地域で発行される国際的な再生可能エネルギー電力証書のことです。地球環境に対する危機感や関心が高まり続けるなか、企業に求められる責任もさらに増しています。こうしたなか、I-RECのような「地球環境に対する自社の貢献度を客観的に示すための手段」が注目されています。

ただ一方では、以下のような疑問や悩みを抱く企業も多いのではないでしょうか。
「I-RECと非化石証書などとの違いがよく分からない」
「I-RECを発行するメリットを知りたい」
「具体的にどう活用できるのかを理解したい」

そこで本記事ではI-RECについて、定義などの基本情報、非化石証書などとの違い、発行するメリット、具体的な活用方法までを紹介します。特にI-RECをはじめ、自社に適した証書の検討に悩む方にとっては、解決のヒントを得られる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

I-RECとは

I-REC(International Renewable Energy Certificate)とは、国際的な再生可能エネルギー電力証書です。企業などが「再生可能エネルギー発電で作られた環境負荷の少ない電気を使用していること」を、電気の産地や電源の種別といった「再エネ属性」とあわせて証明しています。オランダのThe International REC Standard Foundation (I-REC Standard) が標準化を担い、アジア、アフリカなど50以上の国と地域で発行・利用されています。日本では、NPOローカルグッド創成支援機構が発行主体となり、2021年7月から実証プロジェクトを開始、2023年1月から発行対象を拡大し、注目を集めています。

I-RECでは、「発電方法」と「電気の産地」といった電気がどこでどのように発電されたかを示す「再エネ属性」を明示することで、需要家がより環境負荷の低い発電方法を選べるようになるとともに、その他の証書との重複発行を防止できます。

I-RECの発行要件は各国で異なり、日本においては「自己託送を含む自家消費分でも発行できること」が特徴といえます。
ただし「太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス」のいずれかによって発電された電気であり、そして 次項目で紹介する「非化石価値証書」「グリーン電力証書」「J-クレジット」を発行していないことが条件です。

I-RECは、RE100、CDP、SBTといった国際イニシアティブの報告に利用可能ですが、日本の温対法や高度化法などの制度には現時点では利用できません。

【TIPS】

  • RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。
  • CDP(Carbon Disclosure Project)スコアとは、英国の非政府組織(NGO)による企業の環境貢献度を示す評価。
  • SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める⽔準と整合した5年〜10年先を⽬標年として、企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標。

I-RECと非化石証書などとの違い

I-RECと非化石証書等の違いを、各証書および認証制度の紹介により解説します。いずれもCO2などの温室効果ガスを発生しないという「環境に対する価値」を取引可能にする点は共通しています。一方で対象となる国やエネルギーに違いがありますので、その点にご注目ください。

REC

REC(Renewable Energy Certificate)とは、米国・カナダで発行される再生可能エネルギー電力証書です。目的・用途はI-RECと同様であり、対象国が上記2カ国に限定されています。

GO

GO(Guarantee of Origin)とは、EU加盟国とアイスランド・スイス・ノルウェーを対象とした再生可能エネルギー電力証書です。EUは加盟国に対して、消費者が電力に関する情報を把握できるトラッキングシステムの構築を義務付けています。そのシステム上で発行される証書です。

非化石証書

非化石証書とは、石炭や石油といった化石燃料を使わずに発電された電気がもつ「環境に対する価値」を取引できるようにした証書で、日本国内のカーボン・オフセットに利用できます。原子力発電も対象とします。

従来の非化石証書は、電気の発電方法や産地が紐づいておらず、証明が十分とはいえませんでした。そこで、政府主導で「トラッキング付き非化石証書」を発行できる仕組みの開発が進み、RE100に使用できる利点も後押しして取引数が伸びています。

また、もともとは電力会社のみが購入できるルールでしたが、制度の見直しにより2021年11月以降は一般企業も非化石証書を直接購入できるようになっています。

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グリーン電力証書

グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーにより発電された電気が持つ「環境に対する価値」を取引できるようにした証書で、日本国内のカーボン・オフセットに利用できます。原子力発電は対象外です。一般財団法人 日本品質保証機構による認証を受けて発行されます。

J-クレジット

J-クレジットとは、省エネ機器や設備の導入、再生可能エネルギーの利用、森林を増やす活動などによる「温室効果ガスの排出削減や吸収量」をクレジットとして国が認証する制度です。日本国内のカーボン・オフセットに利用できます。電気のみを対象としていない点がこれまで紹介したものと異なります。

創出者は発行したJ-クレジットを販売できます。また、購入者はカーボン・オフセットや経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成、RE100などに活用可能です。

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I-RECを発行するメリット

I-RECを発行するメリットについて紹介します。

脱炭素経営のPRにつながる

I-RECの発行は、脱炭素経営のPRにつながります。脱炭素経営を社外に対して有効にPRできれば、顧客や求職者からのイメージアップ、投資家による評価向上、金融機関から融資を受けやすくなるといったメリットを期待できます。I-RECを活用することで、脱炭素経営を客観的な証明をもってPRできるようになるのです。

世界的な認知度が高く信頼を得やすい

世界的な認知度が高く信頼を得やすい点もI-RECを発行するメリットです。I-RECは50以上の国と地域で発行・利用されており、環境に対する意識や関心が高い外資系企業も信頼を寄せているため、世界的な認知度が高い電力証書といえるでしょう。認知度の高さは、先に挙げたPRのしやすさにもつながります。

国際的なイニシアティブに活用できる

国際的には、発電方法や発電場所といった再エネ属性を証明する電力証書がスタンダートとなっていて、こうした再エネ属性が明示されているI-RECは、RE100、CDPスコア、SBTなどさまざまな国際的なイニシアティブに活用可能な点はメリットといえます。とくに海外で事業を展開している場合や将来的な進出を考えている場合は、よりメリットを享受しやすいでしょう。

一方、温対法に基づく報告など日本の制度におけるI-RECでのオフセットはできませんので適用範囲を確認しながらの活用が必要です。

 

I-RECの活用方法

I-RECの主な活用方法は、「自社で発行する」もしくは「他社から購入する」の2つです。

I-RECを自社で発行する

一つ目は、再生可能エネルギーを発電できる設備を活用または導入して、I-RECを自社で発行する方法です。

企業が導入する再生可能エネルギー発電設備で代表的なのは、太陽光発電です。自社が管理する事業所や工場の屋根、敷地などに太陽光パネルを設置して、発電を行います。本質的かつ直接的な脱炭素対策を講じられる点が、最大のポイントです。

その上で、I-RECの発行手続きを行います。I-RECの発行は、まず登録者(Registrant)となり発電設備を登録した上で、証書発行の申請を行うという手順で進めます。先述の通り、重複発行を避けるために「非化石価値証書」「グリーン電力証書」「J-クレジット」を発行した電力ではないことが条件となっています。

自社で手続きを進めるのが困難な場合は、仲介業者へ委託するとよいでしょう。発電設備の導入とあわせて検討したい場合は、設備導入と発行代行までを一気通貫で行える企業を選定するのがおすすめです。

I-RECを他社から購入する

二つ目は、他社が発行したI-RECを購入する方法です。

「脱炭素を行いたい・環境に貢献したい」と考える一方で、「再生可能エネルギー発電設備の導入など は難しい」という企業も多いのではないでしょうか。
こうした場合に有効なのが、I-RECの購入です。I-RECのような証書の取引を仲介してくれる業者に依頼して購入します。間接的ではありますが環境に貢献しつつ、脱炭素経営のPRにも活用できるでしょう。

ただし、あくまでもCO2排出削減策やカーボン・オフセット策の補助的な役割として捉えておくことが大切です。

自然電力株式会社では、I-RECやJ-クレジット、非化石証書などの環境証書の購入をご支援するサービスを提供しています。より具体的な脱炭素の取り組みをおこなうために、環境証書の種類や導入方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

 

まとめ: 地球環境に貢献している成果を明確に示す方法

I-RECとは、国際的な再生可能エネルギー電力証書です。日本を含む50以上の国と地域で発行・利用されています。「発電方法」と「電気の産地」を明示することで、信頼性を担保しつつその他の証書との重複発行を防止可能です。

I-RECの発行要件は各国で異なり、日本の場合は「太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスのいずれかで発電された電気であること」「非化石価値証書・グリーン電力証書・J-クレジットを発行していないこと」が条件です。

またI-RECのような証書はさまざまあります。本記事では、米国・カナダで発行される「REC」、EU加盟国を対象とする「GO」、トラッキング付きが普及し始めている「非化石証書」、I-REC同様に原子力発電は対象外とする「グリーン電力証書」、植林活動なども対象にできる「J-クレジット」を紹介しました。

そしてI-RECの活用方法は「自社で発行する」「他社から購入する」の2つです。実質的な脱炭素および環境貢献を行った上での「自社発行」を推奨しますが、どうしても困難な場合は「購入」という選択肢もあります。