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2024.5.16

【農家向け】規格外野菜に関する重要な背景と対策を解説

SDGsに関する取り組みや認識の広まりなどを背景に、規格外野菜への関心が高まっています。規格外野菜は、食品ロスの要因のひとつに挙げられており、農家としてはいかに有効活用できるかを問われます。

そこで本記事では規格外野菜について、理解すべき重要な背景や農家として取れる対策、具体的に販売・活用するための方法を紹介します。

01規格外野菜とは

規格外野菜とは、定められた規格(大きさ・形・色など)から外れた農産物のことです。例えば、大きすぎ・小さすぎ、形がいびつ、色あせている、キズがあるといった特徴をもつ野菜が挙げられます。

そもそも農産物の規格は、品質の安定化や流通の効率化を目的として定められています。規格を定めることで、農産物の公正な取引や品質の改善を促す役割があります。また、梱包や輸送が容易になったり、店頭に陳列した際の見栄えが良くなったりするのです。

こうした規格から外れた農産物は規格外野菜として扱われ廃棄されるだけでなく、畑に肥料としてすき込んだり、特定の取引先へ販売したり、加工食品にして自主販売したりと通常の販売ルートとは異なる方法に用いられます。

なお、農産物の大きさや品質などの規格は、もともと農林水産省が「標準規格」として定めていましたが、2002年に廃止されました。以降は、各産地および出荷団体などが各々で「自主規格」を設けています。

02規格外野菜に関する重要な背景

規格外野菜に関する重要な背景を4つ紹介します。

政府によって食品ロス対策が推進されている

農林水産省が公開した「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢(令和6年3月時点版)」によると、令和3年度における日本の食品ロス量は約523万トンです。食品ロスとは、消費者に供給された⾷料のうち、食べられるにも関わらず廃棄されているものを指します。具体的には、売れ残りや食べ残しなどが挙げられ、規格外品も含まれます。

こうした背景から、農林水産省が発表した「食品ロス削減推進法基本方針」においても、規格外野菜の有効活用が推奨されています。

SDGsなどを通じて消費者のエコ意識が高まっている

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が、2015年開催の国連サミットで採択されました。採択を受けて日本国内でも目標達成に向けた取り組みが活発化しており、消費者においてはエコ意識の高まりをみせています。

こうした背景から、生産者が規格外野菜をどう扱うか・いかに活用しているかについても、これまで以上に消費者の注目が集まりやすいといえます。

正品の価格低下を危惧する声がある

規格外野菜の流通が増えると、需給緩和や安価な規格外野菜の影響で正品の価格低下が生じることを危惧する声が一部で挙がっています。一般的に、野菜は長期保存が難しく出荷量の急な調整は困難なため、需給ギャップが価格に影響しやすいといえるのです。

また、規格外野菜の需要ばかり増えてしまうと、正品を作ろうとする意欲が削がれてしまい、農作物の質を維持できなくなるといった見方もあります。

規格の過度な細分化を緩和する流れがある

農産物の出荷規格は、産地が取引の円滑化や有利な販売の実現のために定めますが、産地間競争などを背景として過度に細分化されているケースが散見されます。

農業従事者の高齢化や労働力不足が問題となるなか、規格の過度な細分化は、選別作業を煩雑にしてしまい、作業負担を増加させてしまうのです。具体的には、選別作業だけでなく、収穫、調製、袋詰め、在庫・出荷管理、販路・輸送確保など一連の作業に影響を与えます。

そのため、規格の過度な細分化を緩和することで、作業の効率化と省力化を推進する流れがあることも理解しておきましょう。

03農家としての規格外野菜に関する対策

規格外野菜に関する対策を6つ紹介します。

そもそも規格外野菜を出さないようにする

品種選びや栽培管理、収穫時期の計画など、生産プロセス全体を通じて規格外野菜の発生を最小限に抑える取り組みを行いましょう。例えば、均一なサイズや形状を持つ品種の選択や、適切な施肥や水管理などが挙げられます。加えて、規格の指定範囲が緩い販売先と提携することも有効です。

また昨今は、ドローン空撮とAIによる深層学習によって農作物のサイズを自動で推定・予測し、最適な収穫日の決定を支援するシステムなども開発されています。こうした新たなテクノロジーの活用によっても規格外野菜の発生を低減できるでしょう。

肥料として再利用する

規格外野菜を肥料として再利用することで資源の有効活用を図ります。規格外野菜をそのまま畑に残して耕うん機ですき込み、堆肥化することで土壌の栄養補給に用います。これにより、自己循環型の持続可能な農業を実践できます。

フードバンクなどへ寄付する

フードバンクとは、栽培や製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する団体および活動のことを指します。こうしたフードバンクへ規格外野菜を無償で提供する他にも、近隣の牧場へ餌として提供する農家も存在します。

活用方法を開示してイメージアップにつなげる

農家として規格外野菜をどのように扱っているかを明らかにすることで、消費者のイメージアップにつなげることが可能です。例えば、農家が規格外野菜を堆肥として再利用したり、フードバンクに寄付したり、自ら加工販売したりしている様子を積極的に情報発信します。消費者のエコに対する意識が高まる昨今、こうした情報の提供は、消費者との信頼関係を築く上で有効かつ重要といえるでしょう。

自ら加工して販売する

規格外野菜を有効活用する手段のひとつとして、農家が自ら加工して製品化し、販売することが挙げられます。いわゆる「6次産業化」であり、規格外野菜を付加価値の高い加工品(ジュースやジャムなど)に変えます。製品開発や生産方法の確立を要しますが、新たな収益源の確保および販売を通じた消費者との関係構築を図れます。

外部へ販売する

規格外野菜を加工業者や食品メーカー、飲食店など外部へ販売します。ECサイトを通じて、消費者に直接販売することも可能です。詳細は、次の項目で解説します。

04規格外野菜を販売・活用する方法

規格外野菜を販売・活用するための主要な方法を、4つ紹介します。

各種ECサイトで販売する

各種ECサイトを活用して規格外野菜を販売します。地理的なハードルを越えて消費者に商品を提供することが可能となります。具体的には、以下のようなECサイトが挙げられます。

  • 自社や個人のECサイト:自社や個人で管理・運用しているサイト
  • 大手ECモールサイト:Amazonや楽天など大手サイト
  • オンライン直売所:生産者が規格外野菜を販売できるプラットフォーム

各地域の直売所で販売する

各地域にある農産物の直売所で規格外野菜として販売します。地域経済の活性化や地域コミュニティとのつながりを強化する上でも有効な手段といえるでしょう。また地元の農家が生産した規格外野菜は、地域の消費者にとって新鮮かつ安心感のある食材として受け入れられやすいメリットもあります。

飲食店向けに販売する

飲食店向けに規格外野菜を販売する方法もあります。農家側としては規格外野菜の新たな販売経路を確保でき、飲食店側としても地元野菜の活用や地産地消への貢献を通じたイメージアップにつながります。

材料や原料に用いてもらう

さまざまな加工品の材料・原料として用いてもらう方法もあります。乾燥野菜やスナック菓子、スープの材料など食品への加工が代表例です。また、食品に限らず衣料品やクレヨンなどの原料として用いられるケースもあります。

収穫体験を通じて食育に活用する

規格外野菜の収穫体験を通じて、食育につなげる方法も存在します。例えば、本来ならば曲がった形状で育つ野菜を陳列時の見栄えを良くするために、農家が手間と時間をかけて形が整うように栽培している場合、こうした背景を消費者に理解してもらうために、実際に畑で規格外にあたる野菜を収穫して食してもらうといったケースがあります。

05まとめ|農家にも環境にもやさしい農業を実現するために

規格外野菜とは、定められた規格(大きさ・形・色など)から外れた農産物のことです。そもそも農産物の規格は、品質の安定化や流通の効率化を目的として定められており、農産物の公正な取引や品質の改善を促す役割もあります。

規格外野菜に関する重要な背景としては、「食品ロス対策の推進」「SDGsなどによる消費者のエコ意識の高まり」「正品の価格低下への危惧」「規格自体を緩和する流れ」などが挙げられます。

また「そもそも規格外野菜を出さない」「肥料としての再利用する」「フードバンクなどへ寄付する」といった規格外野菜に関する対策も6つ紹介していますので、続けて紹介した販売・活用方法とあわせて参考にしてください。

規格外野菜に社会の注目が集まるように、この先も環境負荷の少ない持続可能な農業をいかに実践するかを問われます。同時に日本の食料生産を支える農家の負担を低減することも大切です。こうしたなか、農家と環境のどちらにもやさしい農業を実現するための具体的手段として、営農型太陽光発電が注目されています。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

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