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2024.5.2

植物工場とは?メリット・デメリットや成功事例、将来性を解説

植物工場とは、屋内で生育環境を制御しながら植物を栽培する施設です。天候や外気温の影響を受けにくい点や、農地が無くても作物栽培を行える点などから、農業分野内外を問わず注目が高まっています。

そこで本記事では、植物工場について基本的な情報を紹介した上で、メリット・デメリット、経営状況とコスト構造、成功事例、そして将来性について解説します。

01植物工場とは

植物工場とは、屋内で生育環境を人工的に制御しながら植物を栽培するための施設のことです。具体的には、光照射量、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分などを調整します。

一定の気密性を保持した工場内で、環境と生育のモニタリングによる環境制御と生育予測によって、季節や天候に左右されずに野菜などの植物を計画的かつ安定的に生産可能です。例えば、トマトやレタス、イチゴ、エディブルフラワー(食用花)などが栽培されています。

また、農林水産省の関連資料では、以下のように3つに分類されています。

太陽光型 太陽光を利用した環境制御によって計画的な生産を行う施設です。人工光による補光は行いません。
太陽光・人工光併用型
(併用型)
太陽光の利用を基本として、環境を制御して計画的な生産を行う施設です。夜間などは人工光で一定期間補光している施設が該当します。
人工光型太陽光を使わずに閉鎖された施設で人工光のみを利用し、環境を制御して計画的な生産を行う施設です。

出典:一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」(農林水産省)

02植物工場のメリット

植物工場のメリットを、6つ紹介します。

天候や外気温の影響を受けにくい

植物工場は屋内で栽培を行うため、天候や外気温の影響を受けにくい点はメリットです。

従来の屋外農業では、猛暑や厳寒、悪天候などが作物の生育に影響を及ぼし、収穫量や品質を低下させてしまいます。

一方で植物工場では、一定の気密性を保持した施設内でLED照明や温度制御装置、加湿装置などの先端技術を活用することで適切な生育環境を保ちます。そのため、外部の影響を受けにくい環境下で、季節を問わない周年栽培を行えるのです。

計画的かつ安定的に栽培できる

計画的かつ安定的に作物を栽培できることも植物工場のメリットです。

先述の通り植物工場では、光照射量や温度、湿度などを調整して生育環境を正確に制御できるため、作物の生育を計画的に管理することが可能です。

例えば、種まきや収穫のタイミングを制御・調整することが可能です。そのため、必要に合わせて作物の生産量やスケジュールを調整することができ、市場に供給する作物の量や品質の安定化を図れるのです。

また、植物工場では土壌を使わない水耕栽培が中心のため、土壌成分の偏りや病害虫の発生によって生じる連作障害のリスクに悩まされることもありません。

付加価値の高い作物を栽培できる

植物工場には、付加価値の高い作物を栽培できるメリットがあります。光照射量や温度、肥料などを制御することにより、野菜に含まれる栄養成分をコントロールすることが可能です。こうして特定の栄養素を強化した野菜を栽培できれば差別化を図ることができ、従来品よりも高価格で販売できる可能性があります。

農業経験が短い人でも従事できる

植物工場は従来の農業に比べて、農業経験が短い人でも従事しやすいというメリットがあります。植物工場では、植物の生育環境を定量的に制御するため、従業員が農作業の経験や知識を持っていなくても、栽培に関する作業を正確に遂行することができます。

また、作業の多くが自動化されており、システムよって制御されています。生育状況をモニタリングするためのセンサーやモニタリングシステムも採用されています。
こうした背景から、農業経験が短い人であってもシステム制御のトレーニングを受ければ、安定した栽培を行えるのです。

減農薬で病害虫を防げる

屋内で栽培が行われるため、外部からの害虫や病原菌の侵入を防ぐことができます。そのため、従来よりも少ない量の農薬で作物を栽培可能です。また、虫食いなども発生しにくいため、見た目もキレイな作物を生産できる点もメリットといえるでしょう。

従来の農業が困難な場所でも栽培できる

植物工場であれば、従来なら農業を行えない場所であっても栽培を行えます。例えば、従来の農業は広大な土地や大量の水を必要とするため、都市部や人口密集地での生産は非常に困難です。対して植物工場であれば、多層栽培や垂直栽培などを行うことで、限られた敷地でも大量の作物を生産することができます。

その他、津波による塩害を受けてしまうなど再生利用が困難な農地であっても、そこに植物工場を建てれば、屋内での水耕栽培によって野菜の生産が可能となります。

03植物工場のデメリット

植物工場のデメリットを、4つ紹介します。

導入コストが高額になりがち

植物工場を導入する際には、高額な初期投資が必要になる点はデメリットといえます。 建設費、設備投資、機器購入、人員確保など多岐にわたるコストが発生します。具体的な金額は規模や設備によって大きく変化しますが、少なくとも2億円以上は要するでしょう。

電気代などランニングコストを要する

植物工場の運営には、相応のランニングコストもかかります。植物工場では、LED照明や温度・湿度制御装置など電気を大量に消費する設備が必要となります。安定した稼働のためには、定期的なメンテナンスも必要です。また、スタッフの雇用や初期研修などを行う必要もあり、人件費による負担も考慮しなければなりません。

なお植物工場のコスト構造についての詳細は、後述の「4-2.植物工場のコスト構造」にて解説します。

栽培作物が限られている

従来の農業と比較すると、栽培可能な作物が限られている点もデメリットといえます。主な栽培品目としては、トマト、レタス、イチゴなどが挙げられます。施設の型式によっても特徴が異なっており、詳細は以下の通りです。いずれにしても、従来の農業ほどの多様性はないのが実状です。

・太陽光型 :トマト類が約7割、その他の作物はいずれも1割未満
・併用型:トマト類とレタス類がそれぞれ約3割、花きが約2割、イチゴが1割程度
・人工光型 :レタス類が約9割

ITや機械操作に関する知識が求められる

植物工場における生育環境の管理や機器の操作には、ITや機械操作に関する知識が必要です。植物工場内の設備や機器には、コンピューター制御システムやセンサー技術などが用いられているため、それらを正しく活用するためのスキルを要します。また、担当によっては生産管理システムや栽培データの解析なども求められます。こうした知識・スキルをもった人材の確保や、専門のトレーニングが必要となる点は、デメリットといえるでしょう。

04植物工場の経営状況とコスト構造

植物工場の経営状況とコスト構造について紹介します。なお、本項目の内容は「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査(令和5年3月版)」に基づいています。

植物工場の経営状況

決算状況をみると、2022年時点の黒字もしくは収支均衡の事業者は、全体で59%と半数を上回っています。型式別にみると太陽光型は73%、併用型は60%、人工光型は43%が黒字もしくは収支均衡であり、太陽光型が人工光型よりも30%高くなっています。

また、事業安定化までに要した年数を全体で見た場合、まず32%は「安定していない」と回答しています。その上で、安定に要した年数は4~6年が28%、1~3年が23%であり、半数以上が6年以内に安定化していることが分かります。

出典:一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査 令和5年版」(農林水産省)

植物工場のランニングコスト構造

植物工場のランニングコスト構造をみると、全体のうち人件費の占める割合が最も多く、太陽光型・併用型・人工光型のいずれも30%以上です。次いで水道光熱費が多く、太陽光型は18%、併用型は17%でした。人工光型はその構造から電気代のみで27%と高い割合を占めており、とりわけ照明と空調にコストを要している状況です。

05植物工場の成功事例

植物工場の成功事例を2つ紹介します。

各種データ活用で開設当初から安定生産を実現

有限会社新日邦は、2012年に社内にアグリ事業部を新設して農業分野へ参入、2014 年より人工光型植物工場の稼働を開始します。2017年には新工場を立ち上げ、レタス類の生産規模を1日あたり2万株まで拡大し、安定的な生産を継続しています。

同社の特徴として、開設当初から工場内に各種計測センサーやセンシング技術を用いた定点観測カメラを設置・活用している点が挙げられます。これにより、環境データだけでなく作業データも収集し、工場全体の生産性を高めています。また、工場の屋根や敷地内に太陽光発電パネルを設置し、発電および売電を行っている点も特徴といえるでしょう。

環境制御によって生産目標を着実に達成

株式会社GRAは、2012年の設立以来、生産から加工、販売まで自社で一貫して取り組む6次産業スタイルで事業を展開してきました。同社は太陽光型植物工場の各10棟に環境制御システムを導入。温度や湿度、二酸化炭素濃度、光照射量などの計測データに基づき、イチゴ栽培における圃場管理の自動化を図っています。

併せて、客観的な指標を基に栽培管理方法の改善にも取り組んでいます。初めに実績データなどを踏まえて目標値を定め、達成に向けての自動制御を設定します。その後、日次および週次で進捗を確認しながらPDCA サイクルを回していくという目標達成に向けた着実なプロセスを確立しています。

06植物工場の将来性

先述したメリットから分かるように、植物工場は農業従事者の減少や気候変動といった現在の農業を取り巻くさまざまな課題に対して有効といえます。低農薬で安全かつ見た目もいい作物を提供できる点から、昨今の消費者ニーズにもマッチしています。

また、植物工場と同じ原理の設備を小型化する動きも進んでおり、小規模農家においてもより導入しやくなると予想できます。さらに国内のスタートアップ企業が、一般的な植物工場の約5倍の生産性を実現できる完全閉鎖型植物工場の開発に成功しており、国内展開を経て世界市場を狙える状況にあることも示唆されています。

以上のような背景から植物工場の将来性は、導入面や発展面など多角的にみても、十分に期待できるでしょう。

07まとめ|再生可能エネルギーを自ら賄うことでコスト負荷を軽減

植物工場とは、屋内で生育環境を人工的に制御しながら植物を栽培するための施設のことです。メリットとしては「天候や外気温の影響を受けにくい」「計画的かつ安定的に栽培できる」「限られた敷地でも栽培できる」などが挙げられます。一方で「導入コストが高額になりがち」「ランニングコストを要する」「栽培作物が限られる」といったデメリットもあります。

農林水産省が公表した調査データによると、対象となった植物工場の約6割が黒字もしくは収支均衡となっており、稼働開始6年以内に半数が安定化しています。また、ランニングコストとしては、人件費と水道光熱費が全体の半分を占めており、とりわけ照明・空調の電気代を多く要しています。

成功事例や将来性を勘案すると、植物工場の導入を検討する企業や農家は今後さらに増えると予想されます。ただ先述した通り、コスト面がネックになりがちな点も事実です。

そこで注目すべきが、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)です。営農型太陽光発電とは、太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄うことで、エネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得など多くのメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

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【参考】
一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査 令和5年版」(農林水産省)
一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査令和3年版」(農林水産省)
農林水産技術会議/植物工場:農林水産技術会議(農林水産省)
農業復興に向けた植物工場の活用が東日本大震災の被災地で始まる (日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
農林水産省「食料安全保障に資する完全閉鎖型植物工場の実現に向けた調査研究」(内閣府)

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