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2024.7.18

有機JAS認証とは?メリットや肥料・農薬などの条件、取得手順を紹介

有機JAS認証とは、農薬など化学物質に頼らず生産された有機食品であることを認める国家規格です。消費者の健康志向やオーガニック志向が高まるなか、取得を検討している生産者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、有機JAS認証について定義やメリット、取得に必要な条件、取得手順を紹介します。最後に有機JASを取得するための有益な情報もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

01有機JAS認証とは

有機JAS認証とは、農薬や化学肥料など化学物質に頼らず生産された有機食品であることを、国が規定した条件に基づき認める国家規格のことです。 条件を満たした生産が行われているかを登録認証機関が検査し、認証された事業者のみが有機JASマークを用いることができます。

有機JASマークがない農産物や食品に、「有機」「オーガニック」やこれらと紛らわしい表示をすることは法律で禁止されています。

また、有機JAS認証の対象となるのは下記5つです。

・有機農産物
・有機加工食品
・有機飼料
・有機畜産物
・有機藻類

なお本記事では主に有機農産物を取り上げます。

02有機JAS認証を取得するメリット

有機JAS認証を取得するメリットを、4つ紹介します。

「有機」「オーガニック」を発信し差別化を図れる

有機JAS認証を取得することで初めて「有機」「オーガニック」といった表示を行えるようになり、競合との差別化を図れます。

農作物であれば肥料や農薬はもちろん、ほ場、種苗、病害虫の管理に至るまで、さまざまな基準を満たさなければ取得できません。こうした厳しい基準および登録認証機関の検査をクリアしたことが証明されるからこそ、他の農作物と一線を画せるのです。

販路拡大につながる

有機JAS認証の取得は、販路拡大にもメリットをもたらします。

認証を得ることで、オーガニック製品を扱う専門店やスーパー、自然食品店、オーガニック系飲食店などの販路にアプローチしやすくなります。これにより、従来の取引先に加えて新たな出荷先の開拓につながります。

また、海外市場への進出も見込めます。認証体制について日本との同等性が認められた国であれば、有機JAS認証品を輸出可能です。

■日本について有機同等性を承認した国・地域(2024年1月時点)

国名 農産物

農産物加工食品

(酒類を除く)

酒類

畜産物・

畜産物加工食品

アメリカ
EU
カナダ
台湾
イギリス
スイス

 

環境への負荷を軽減できる

有機JAS認証を取得するために行われる有機農業によって、環境への負荷を軽減できます。農薬や化学肥料を使用せず、自然由来の力を活かした栽培方法を実践することで、土壌の健康維持や生態系の保護に寄与します。また、有機農業は持続可能な農業として注目されており、長期的には土壌の劣化防止や生物多様性の維持につながります。

消費者からの信頼を得やすくなる

有機JAS認証を取得することで、人にも環境にも優しい農作物を提供していることが証明されます。これによって、健康志向やオーガニック志向をもつ消費者はもちろん、環境への意識が高い消費者からの信頼を得やすくなるのです。その結果、顧客満足度が向上し、リピーターの増加や口コミによる新規顧客の獲得まで期待できます。

03有機JAS認証の各条件

有機JAS認証を取得するためには、具体的にはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。以下で「有機農産物」に関する4つの条件を紹介します。

ここでは各条件とも主要なものを取り上げます。より詳細を確認したい場合は、こちらの農林水産省ホームページ内にて「有機農産物検査認証制度ハンドブック」をご参照ください。
有機食品の検査認証制度(農林水産省)

ほ場に関する条件

有機JAS認証を取得するためには、使用する「ほ場」が以下の条件を満たす必要があります。

隣接地からの農薬飛散などが生じないこと
たとえ自らのほ場では有機JAS認証に即した栽培を行っていても、周囲から農薬などが飛散・混入するような状態では意味がありません。具体的には下記のような条件を求められます。

  • 隣接のほ場で禁止資材を使用していない
  • 隣接のほ場との高低差や風向きによって飛来などが生じない
  • 水田の場合は、非有機の水田の排水が対象のほ場に流入しない

有機栽培に転換してから一定年数が経過していること
有機栽培に転換してから一定年数が経過しなければ、有機栽培とは認められません。
具体的には、下記のような条件を求められます。

  • 多年生作物の場合:転換開始から、最初の収穫までに3 年以上経過している
  • その他の作物の場合:転換開始から 最初の播種または植付けまでに 2 年以上経過している

種および苗に関する条件

原則としては、有機栽培由来の種苗を使用しなければなりません。ただし、「譲渡や交換、購入による入手ができない場合」「購入できても著しく高価な場合」「自家採取をできない場合」に限り、慣行栽培由来の種苗を使用することが可能です。

また、自ら育苗を行う場合は、苗作りの段階からルールで定められた方法で育てる必要があります。その場合、下記のような条件が求められます。

  • 禁止資材の飛来を受けない場所であること
  • 使用可能な培土を用いていること
  • 有機の育苗とそれ以外の育苗を並行する場合は明確に区分すること
  • 育苗箱は非有機物や殺菌剤が残らないように洗浄してから用いること
  • 育苗に用いる水に非有機物が含まれないこと

肥培管理に関する条件

堆肥を自ら作る場合は、原料と作り方を明確にし、完熟堆肥になるように管理する必要があります。
一方で堆肥を購入する場合は、定められた資材の選定基準を満たすものを購入しなければなりません。

また、肥培管理については、以下のような方法で農地の生産力を維持・増進するように定められています。

  • 当該ほ場において生産された農産物の残さに由来する堆肥の施用
  • 当該ほ場もしくはその周辺に生息する生物による物質循環を活かした土壌の質的改善
  • 作物の栄養成分の不足により正常な生育ができない場合に限り、指定資材を使用可能
  • 当該ほ場またはその周辺に生息または生育する生物の機能を活用した方法のみによっては土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進を図ることができない場合は、当該ほ場またはその周辺以外からの生物(組換えDNA技術が用いられていないものに限る)を導入可能

病害虫管理に関する条件

病害虫ひいては有害動植物の防除は、下記3手法(およびその組み合わせ)によってのみ実施しなければなりません。

  • 耕種的防除:通常実行される耕種手段の内容変更による防除方法
    例)作物や品種の適切な選定(適地適作、抵抗性品種、健全種苗の使用など)、灌漑、耕起、被覆植物の利用など
  • 物理的防除:物理的性質を利用して防除する方法
    例)防虫用ネットの利用、粘着トラップ、土壌の太陽熱や蒸気利用による消毒など
  • 生物的防除:生物間の相互作用を利用して防除する方法
    例)病害微生物を抑制する拮抗微生物の利用、野鳥やカエルのような天敵の利用など

なお、農産物に重大なリスクが生じた場合、なお且つ上記の防除方法だけでは対処できない場合に限り、指定された農薬を使用できます。

04有機JAS認証を取得する手順

有機JAS認証を取得する手順について、以下の6ステップで紹介します。

登録認証機関の決定

まずは、有機JASの登録認証機関を決定します。各認証機関によって、認証の種類、対象地域や料金、運用改善への対応内容などが異なるため、自らに合った依頼先を決定しましょう。

なお、各認証機関は、農林水産省ホームページ上にて一覧で紹介されています。詳細とリンクは「有機JASの認証機関」をご参照ください。

認証申請書の提出

認証機関を決定したら、申請書を提出します。申請書の書式は認証機関によって若干異なりますが、主に次のような項目を記載または提出することになります。

■認証申請書への記載事項
・申請者の氏名(名称)・住所
・生産行程管理および格付を担当する者の氏名・略歴
・格付を行う農林物資の種類
・生産を行う場所の所在地と面積

■提出書類関係
・ほ場周辺図
・認証申請対象ほ場地図
・水系図あるいは用排水図(水田の場合)
・航空防除用作業地図(農薬空中散布実施地域の場合)
・生産管理及び格付の組織・機構図
・保管等に係る施設の図面
・内部規程・格付規程
・圃場履歴を示す管理記録

認証機関によっては、追加の記載や資料提出を求められる場合があります。

認証申請書の書類審査

認証機関によって書類審査が行われます。具体的には、申請内容が認証の技術的基準を満たしているかを書面上で判断されます。情報が不足する場合には追加の情報提出の指示があったり、技術的基準の要件を満たさない場合は補正作業などの指示が出されたりします。

書類上で技術的基準を満たすと判断されると、次のステップへ進みます。

実地検査

認証機関から派遣された検査員が、検査マニュアルに基づき申請内容と実際の作業とに違いがないかを確認します。

検査方法は主に次の3点です。

  1. 生産行程管理責任者や格付責任者などへの聞き取り調査
  2. ほ場、その他施設の実際の確認
  3. 生産行程管理記録とその根拠書類の確認

また、具体的な確認項目は主に次のようなものが挙げられます。

・生産行程管理記録とその根拠書類
・ほ場、栽培場、採取場、関連する倉庫、選別、調製、包装施設などの状況
・申請対象ほ場の周辺状況
・使用資材、資材の入手方法、資材の保管場所
・種苗の入手方法
・肥培管理の方法
・有害動植物の防除方法
・生産に使用する機械、器具
・輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、出荷の状況
・有機 JAS マークの表示方法
など

判定

検査終了後、検査員は認証機関に検査報告書を提出。報告にもとづいて検査員とは別の判定員が、認証の技術的基準を満たしているかを判定します。判定の結果、基準を満たした場合は、認証番号、認証年月日や対象農林物資の種類などが記載された「認証文書」が交付されます。

また検査の結果、「改善要求事項」が提示された場合は、全て改善された時点で認証の取得が可能です。ただし、「過去の記録を保持していなかった」「記録に虚偽があった」「規定に対して実態が全く伴っていない」のような重大な不適合があった場合は、認証の取得は困難です。

なお認証書に記載されたほ場で収穫されたものしか有機表示は行えません。そのため、追加したいほ場がある場合は追加申請の上、認証書の再発行が必要です。

記録と監査

取得後は、認証の技術的基準の要求事項に基づき、年次計画を立案・実行し、その記録を提出します。
また年に1度、認証機関の監査を受けます。万が一、監査で重大な不適合があった場合には認証ははく奪されてしまうため、注意しましょう。

05有機JAS認証を取得するための有益な情報

有機JAS認証を取得するための有益な情報をまとめます。

有機資材リスト

農林水産省は、2021年より有機JASにかかる事業者の負担軽減策の一環として、登録認証機関が有機JASで使用できると判断した資材のリストをホームページに一元的に公開しています。有機資材を一括で確認できるため非常に便利です。

有機資材リスト掲載一覧表(農林水産省)

有機JASの認証機関

有機JAS登録認証機関は、農林水産省ホームページ上にて一覧で紹介されています。一覧には対象となる農林物資、対象地域や料金、運用改善への対応内容などが記載されているため掲載内容を確認の上、選定しましょう。

有機登録認証機関一覧(農林水産省)

有機JASのQ&A・ハンドブック

有機JASに関して「よくある質問と回答(Q&A)」をまとめたPDF資料を農林水産省ホームページにてダウンロードできます。また同ページ内で、有機JAS認証に関する情報について基本から詳細網羅したハンドブック(PDF資料)もダウンロード可能です。

有機食品の検査認証制度(農林水産省)

有機JASに関する助成金

農林水産省は、新たに有機農業を行う農業者に対して、有機JASに関する講習の受講や、品目別の有機栽培技術の研修会の開催などに必要な経費を支援する施策を講じています。「有機農業推進総合対策事業」という施策の一環ですので、詳細は農林水産省ホームページをご確認ください。
令和6年度有機農業推進総合対策事業の公募について(農林水産省)

06まとめ|環境に配慮した農業、付加価値の高い農作物

有機JAS認証とは、農薬など化学物質に頼らず生産された有機食品であることを認める国家規格です。有機JAS認証を取得することで、競合との差別化や販路拡大を期待できます。さらに、環境に配慮した農業を行いつつ付加価値の高い農作物を生産できる点は、「持続的な農業」の実現に大きく寄与します。

また農業の持続可能性の観点から、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されていることはご存知でしょうか。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

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【参考】
有機JASについて教えてください。(農林水産省)
有機食品の検査認証制度(農林水産省)
有機資材リスト掲載一覧表(農林水産省)
有機登録認証機関一覧(農林水産省)
有機JASに係る運用改善について(農林水産省)

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