新しい農業のカタチを
つくるメディア「リプラス」

2024.11.14

再生二期作とは?注目の理由や品種・品質・肥料について解説

再生二期作とは、水稲を刈り取った後の切り株から発生する茎を再び育てることで、1回の田植えで2回の収穫を可能とする栽培技術です。懸念される温暖化を逆手にとれる点、1年で約2年分の収量を期待できる点、従来の二期作と異なり「植え直し」が不要な点などを理由に注目されています。

そこで本記事では、再生二期作について、注目される理由の詳細、栽培に用いる品種、収穫した米の品質、必要な肥料を紹介します。その上で、再生二期作の留意点と事例もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

01再生二期作とは

再生二期作とは、水稲を刈り取った後の切り株から発生する茎(ひこばえ)を栽培することで、1回の田植えで2回の収穫を可能とする栽培技術のことです。春に田植えしたものを夏に1度収穫し、その後に生えるひこばえを育てて、秋に2度目の収穫を行います。ひこばえ農法と呼ばれることもあります。

02再生二期作が注目される理由

再生二期作が注目される主な理由は、以下の3つです。

温暖化を逆手にとれる栽培手法のため

再生二期作は、地球の温暖化傾向を逆手にとれる栽培技術といえます。これは、温暖化による一年を通した気温上昇に応じて、水稲が生育可能な期間も伸びるためです。具体的には、春の気温上昇により田植えの時期を早められ、秋の気温上昇によって収穫時期を遅らせることができます。その結果、1回の田植えで2回の収穫を行う再生二期作が可能となるのです。

1年間で約2年分の収量を期待できるため

再生二期作は、1年間で従来手法の約2年分の収量を見込める点においても注目されています。

具体例として、農研機構は再生二期作の試験栽培で、一期作目と二期作目の合計で約950kg/10a(2か年の平均)の収量を実現しています。これは試験栽培を行った福岡県の生産現場における平均収量(2021年と2022年の平均で482kg/10a)のほぼ2倍に相当します。

この高収量は、「4月の早期移植」「一期作目の高い位置での刈り取り」などの技術により切株に蓄積された栄養分を利用して旺盛な再生が促進されたことで達成されました。

従来の二期作で不可欠な「植え直し」の手間が不要なため

従来の二期作は、1回目の収穫後に再度育苗・移植の作業をしなければならず、そのための労力やコストを要します。一方、再生二期作では、1回目の収穫後には切り株から発生するひこばえを基に栽培を行うため、植え直し不要で2回目の収穫が可能です。

このように、作業量を減らし、労働力や資材コストを抑えることができるため、効率的な農業経営を実現する手段としても注目されています。

03再生二期作に用いられる品種

再生二期作に用いる品種は、高い収量性はもちろん、高温耐性・優れた食味を兼ね備えていることが望ましいといえます。

現状、実例は限られていますが、先に紹介した農研機構による試験栽培では「にじのきらめき」 が用いられており、特徴は下記の通りです。

収量性:10aあたり約700kgの高い収量を期待できる
食味:人気品種コシヒカリと同等の美味しさを有する
耐性:高温や倒伏に強く、病気に抵抗力がある
品質:白濁した米粒が少なく、外観品質が優れている

また、過去の試験では、東北地域向けの多収品種「べこあおば」と関東以西向けの多収品種「北陸193号」を交配した品種が用いられています。つまり、収量性に優れることを前提に、温暖化に適応可能な高温耐性を有しており、2回目の収穫時でも品質・食味が落ちにくい品種であることが条件といえるでしょう。

04再生二期作で収穫した米の品質

再生二期作を行うにあたり、収穫の1回目と2回目で品質に差が出ないかが気になる方は多いのではないでしょうか。この点については、先述した農研機構の試験栽培により「一期作目と二期作目の米の食味に明確な差異は見られない」との報告がなされています。

さらに、両方の収穫米が従来の栽培法で用いられる「ヒノヒカリ」と同等の良好な食味を示したとのことです。ただし、米の品質は栽培条件によって変化するため、一期作目と二期作目の気候の違いによる品質差は起こり得ます。

05再生二期作に必要な肥料

再生二期作では、通常の一期作と比較して多くの肥料が必要となります。農研機構の試験栽培では、窒素肥料を10a当たり合計23kg(元肥10kg、追肥13kg)使用しました。これは、通常の一期作での「にじのきらめき」栽培時の2〜3倍に相当します。肥料の増量は、1回の田植えで2回の収穫を行うため、稲の栄養要求量が増加することが理由です。

ただし、この肥料量は試験段階のものであり、実際の栽培では土壌条件や品種によって適切な量が異なる可能性があります。効率的な施肥技術の開発や、地力維持への配慮も今後の課題となるでしょう。

06再生二期作における留意点

再生二期作における留意点を4つ紹介します。

自脱型コンバインでは収穫が難しい

再生二期作では、一期作目の高刈り(地際から40cm)や二期作目の短い稲の刈り取りが必要となります。ただし、日本の多くの水稲農家に普及している自脱型コンバインではこれらの作業が困難です。代わりに、汎用コンバインの使用が必要となり、設備投資や操作技術の習得が求められます。

十分な水の確保が必要となる

再生二期作では、通常の栽培よりも生育期間が長くなるため、1年を通じた用水の確保が必須となります。春の早い時期から秋の遅い時期まで、水田に水を供給する必要があるのです。そのため、水利権や灌漑設備の整備など、水資源の管理に関する課題が生じる可能性があります。

寒冷地域では二期作目に減収する可能性がある

再生二期作は、寒冷地域においては2回目の収穫において減収のリスクが高まります。温暖な地域に比べて一期作目と二期作目の気温落差が大きく、気温低下による生育不良や、作物が成熟しないまま生長が止まってしまう可能性があります。

そのため、寒冷地域で再生二期作を行う際には、収穫時期の調整や品種の選定など、寒冷に対応できる工夫が求められます。地域の気候条件を考慮し、適切な対策を取ることが、収量を安定させるためには不可欠といえるでしょう。

地力維持と経済性の両立が求められる

再生二期作を継続的に実施する上で、地力維持と経済性のバランスが重要です。従来と比べて有機物の還元が少なくなるため、長期的には地力低下の可能性があります。これに対し、次年度以降の肥料増量や微量要素の適切な管理が必要となるかもしれません。

また、土地のポテンシャルには地域差があるため、地域特性を考慮した栽培方法や施肥設計が求められます。単年度の収益性を重視する場合、肥料価格の上昇に注意が必要ですが、長期的な視点での土壌管理も欠かせません。

一般的な化成肥料に頼るだけでなく、バイオスティミュラント資材(BS資材)といった新しい仕組みの導入も視野に入れ、総合的な土壌管理を行いながら、高い生産性と持続可能性を両立させることが課題となるでしょう。

07再生二期作の事例

再生二期作の事例を、2つ紹介します。

静岡県浜松市での事例

静岡県浜松市の「じゅんちゃんファーム」では、2024年シーズンから再生二期作を導入しました。通常の栽培方法では高温障害により2023年の売り上げが4割減少したことを受け、この新しい栽培方法に挑戦しています。

同社代表は、「通常であれば米農家にマイナスの影響を与えることの多い暑さを逆手にとって、2回の収穫につなげられる点」に期待を寄せており、従来の倍近い生産量を見込んでいます。

茨城県水戸市での事例

水戸市の農業法人は、コメの不足に対応するため、2024年から再生二期作を本格的に導入しました。水戸市と茨城町において、合わせて約5haの田んぼで実施しています。

同社では、8月14日に一期作目の稲刈りを行い、わずか12日後の8月26日には既に新たな稲穂が出始めていました。二期作目の収穫は11月を予定しており、全体の収量が前年比1.5倍程度になると見込んでいます。

同社代表は「コメの在庫不足によるお客様への迷惑を避けるため、また農家の収入増加のために再生二期作を始めた」と述べています。こうした再生二期作の取り組みは、米の安定供給と農家の経営改善の両面で効果が期待されているのです。

08まとめ

再生二期作とは、水稲を刈り取った後の切り株から発生する茎(ひこばえ)を栽培することで、1回の田植えで2回の収穫を可能とする栽培技術のことです。

用いる品種は「にじのきらめき」のように、高い収量性をはじめ、高温耐性・優れた食味を兼ね備えていることが望まれます。なお試験栽培では、一期作目と二期作目の米の食味に明確な差異はありませんでした。ただし、肥料は従来と比較して2〜3倍を必要とします。その他、再生二期作の留意点を4つ紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

また再生二期作の事例では、米の安定供給と農家の経営改善に対する効果も示唆されており、農業全体の重要課題である「持続可能な農業の実現」への寄与も期待されるところです。

そして「持続可能な農業の実現」において、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されているのはご存知でしょうか。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

また、安定的かつ持続的な農業の実現に役立つ新着記事やセミナー、トレンドなどの最新情報を受け取れるメールマガジンもお勧めです。下記ページにて簡単に登録できますので、ぜひご活用ください。
メルマガ登録 – Re+ │ 地域と楽しむ、挑戦する。新しい農業のカタチをつくるメディア「リプラス」

【参考】

SHARE シェアする
  • LINE
  • Twitter
  • Facebook
KEYWORD この記事のキーワード