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2025.1.30

緑肥とは?メリット・デメリットや作物の種類、栽培方法を紹介

緑肥とは、土壌を改良して肥料成分を補充するために栽培される作物を指します。土壌改良のほか、減肥や病害虫の発生抑制など様々なメリットがあるため注目されています。

一方で「デメリットも理解した上で活用について検討したい」「緑肥にはどのような作物が向いているのか知りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では緑肥について、メリットとデメリット、おすすめの作物、栽培方法を紹介します。

01緑肥とは

緑肥とは、土壌を改良して肥料成分を補充するために栽培される作物のことです。緑肥に使用する作物は収穫を目的とせず、成長後そのまま土壌にすき込むことで、有機物として土壌の肥沃度を向上させる役割を果たします。

02緑肥のメリット

緑肥のメリットを、物理的および化学的な側面から4つ紹介します。

土壌を改良できる

緑肥には、土壌を物理的に改善する効果があります。緑肥を土壌にすき込むと有機物が分解され、土壌の団粒構造が形成されます。その結果、作土が軟らかくなったり、作土の保水性や透水性が向上したりして、根が伸びやすい環境が整います。

減肥を行える

緑肥を用いることで化学肥料の使用量を減らす「減肥」が可能となります。例えば、マメ科の緑肥作物は根粒菌によって大気中の窒素を固定し、分解過程で土壌に窒素を供給するため、窒素肥料の投入を減らせます。

また、緑肥による有機物の分解過程でリン酸やカリウムといった必要な栄養分が放出されるため、化学肥料のコスト削減にもつながります。これにより、持続可能な農業を実現しやすくなるでしょう。

病害虫の発生を抑制できる

一部の緑肥には線虫(センチュウ)などの病害虫の発生を抑制する効果があります。その抑制メカニズムは様々であり、例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 殺線虫物質を作る(マリーゴールドなど)
  • 根に線虫を侵入させ、そこで生育を止める(エンバクなど)
  • シスト線虫を孵化させるが栄養源とはならずに餓死させる(アカクローバなど)

以上のように緑肥は、農薬に頼らず病害虫被害を軽減する手段として有効です。

雑草の生育を抑制できる

生育が早い緑肥を栽培し茎葉で地面を覆い、日光を遮ることで、雑草の発芽や生育を抑制します。またヘアリーベッチなどの一部の緑肥作物は、他植物の成長を抑制する化学物質を分泌するアレロパシー作用をもっており、雑草の繁殖を防ぎます。
こうした自然由来の雑草抑制効果は、除草剤の使用量を減らし、環境保全にも寄与します。

03緑肥のデメリット

緑肥のデメリットを、3つ紹介します。

緑肥の栽培に手間がかかる

緑肥の栽培には、通常の作物と同様に管理や実作業が不可欠です。種まきから成長、すき込みまでのプロセスには手間がかかり、適切なタイミングを見極めつつ作業を行う必要があります。

例えば、成長しすぎた緑肥はすき込みが困難になり、効果が薄れる場合もあります。また、緑肥を栽培している間は農地を他作物の栽培に利用できないため、作付け計画を慎重に立てなければなりません。
以上のように緑肥の栽培そのものが農家にとって負担になる可能性があるのです。

緑肥用の種や資材に費用を要する

緑肥を導入する際には、種子や必要な各種資材などの購入費用が発生します。特に地域や用途に適した緑肥用種子を選ぶ場合には、コストが増す可能性があります。

また、栽培や管理に必要な機械や道具の準備費用・整備費用も考慮しなければなりません。加えて、緑肥作物の栽培に手間をかけている間は、収益に直結する作物が育てられないため、間接的な機会損失が生じるリスクもあります。

緑肥の効果が土壌環境や気候に左右される

緑肥の効果は、土壌環境や気候条件によって変動します。例えば、雨が多すぎる場合は緑肥が過剰に成長してすき込みが難しくなったり、逆に乾燥が続くと成長できずに効果が減少したりすることがあります。

また、土壌の質や農地の状態によっては、緑肥作物が十分に根を張れない場合もあり、期待した土壌改良効果が得られないケースもあります。そのため、各地域の気候に応じた緑肥作物の選択と綿密な栽培計画が必要といえるでしょう。

04緑肥におすすめの作物

緑肥におすすめの作物を、3つに分けて紹介します。    

なお「選び方」としては、まずは主作物の栽培時期を考えて緑肥の播種とすき込み時期を決定しましょう。その際には腐熟期間を考慮し、それ以前にすき込みを終えられる緑肥を選ぶ必要があります。
その上で、緑肥に期待する効果を得られる作物を選んでください。ただし同じ作物でも、品種の違いや、すき込み時期などによって効果が異なる場合があるため留意しましょう。

マメ科(クローバー、ヘアリーベッチなど)

マメ科は、主に根粒菌の働きにより窒素を固定し、土壌に団粒構造をつくります。

具体的には、以下のような品種が挙げられます。

  • 冬作:ヘアリーベッチ、レンゲ、クリムソンクローバ、アカクローバ
  • 夏作:クロタラリア、セスバニア、エビスグサ

イネ科(ソルガム、エンバクなど)

イネ科は、主に土壌に肥料分や有機物を与え、微生物の増殖を促します。

具体的には、以下のような品種が挙げられます。

  • 冬作:エンバク、ライムギ、ライコムギ、コムギ、イタリアンライグラス
  • 夏作:ソルガム、スーダングラス、トウモロコシ、ギニアグラス、ヒエ

その他(ヒマワリ、カラシナなど)

その他、キク科やアブラナ科などにも緑肥に適した植物があります。

具体的には、以下のような品種が挙げられます。

  • キク科:ヒマワリ、マリーゴールド
  • アブラナ科:シロガラシ、ナタネ、カラシナ(チャガラシ)
  • ハゼリソウ科:ハゼリソウ

05緑肥作物の栽培方法

緑肥作物の栽培方法を、3ステップで紹介します。

播種

手播きや散粒機、ブロードキャスターなどにより播種を行います。播種機による条播も可能です。散播した場合には、発芽や初期生育を安定化させるために覆土鎮圧を行いましょう。覆土の厚さは一般に種子の3~5倍といわれており、レーキやロータリーを用います。覆土した後にローラーで鎮圧することで、発芽や定着をさらに安定化させます。 

また播種時期は、地域の気候や目的に応じて決めることが重要です。例えば、夏場に生育する緑肥であれば春先、冬場の生育を目指す場合は秋口に播種します。

施肥

緑肥作物は一般的な作物と比較して肥料の必要量が少なく済みます。特に前作物が残した養分が作土にある場合や、養分を含む収穫残渣が十分にすき込まれている場合は、施肥を行わずに栽培できます。

一方で裸地管理を続けており、土壌中の養分が少ない場合には、施肥が必要となります。ただし、マメ科の緑肥は、残渣などで土壌に含まれる養分が少なくても無施肥で栽培可能です。

すき込み

一般的にイネ科は出穂始期まで、その他のマメ科なども開花始期にはすき込むようにします。

緑肥を大きく育てれば、より多くの有機物をすき込めます。ただし、生育が進むと窒素に対する炭素の比率が高くなり、結果的に肥料効果の低下や窒素飢餓などのリスクを高めてしまいます。さらに緑肥が大きくなり過ぎると、機械によるすき込みを行いにくくする原因となりかねません。

すき込み作業には、ロータリーを用いるのが一般的ですが、プラウを用いた反転すき込みも可能です。
また、ソルガムのように草丈が高い緑肥の場合、フレールモアなどで細断した後ですき込むと、作業効率が高まるでしょう。細断後の緑肥をしばらく土壌表面に放置して、乾燥させてからすき込む方法もあり、雑草の発生を抑制する効果を期待できます。

06まとめ

緑肥とは、土壌改良や肥料成分の補充を目的に栽培される作物のことです。収穫を目的とせず、成長後に土壌へすき込むことで有機物として土壌を豊かにする役割を果たします。

緑肥には「土壌の保水性や透水性を向上させる」「化学肥料を削減できる」「病害虫や雑草を抑制する」などのメリットがあります。一方で、「栽培には手間やコストがかかる」「効果が土壌環境や気候条件に左右される」といったデメリットもあります。

マメ科やイネ科などが緑肥に適した作物で、それぞれの特性に合わせた選択と栽培計画が重要です。緑肥作物の栽培は播種、施肥、すき込みの3ステップで行い、地域の気候や目的に応じた管理が求められます。

豊かな土壌環境の保持に役立ち、また化学肥料を削減する環境保全型農業を推進する観点からも、 緑肥の導入は持続可能な農業の実現への有効な手段の一つといえるでしょう。

また持続可能な農業の実現という観点から、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されているのはご存知でしょうか。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

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【参考】
緑肥利用マニュアル(農研機構)

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