2023.2.2
農業委員会とは?農家が相談すべき届出や許可内容についても解説
農業委員会は、農地に関する事務全般を行う行政機関であるのに加えて、農地利用の最適化などが主な業務です。農業委員会は、農業者が不足している現代において重要な役割を担っています。
本記事では、農業委員会の概要や仕事内容に加えて、農業委員会に届出・許可が必要である「農地の転用・賃借・売買・相続・盛土」について解説します。「農家は農業委員会とどのような場面で関わるのかを知りたい」方はぜひ参考にしてください。
01農業委員会とは
ここでは、農業委員会の概要や仕事内容に加えて、農業委員会サポートシステムの取り組みについて解説します。農業委員会がどのような機関で、どのような仕事を行なっているのかを理解しましょう。
農業委員会の概要
農業委員会とは「農業委員会等に関する法律」に基づき、農地に関する事務を行う行政機関です。原則として、農地があり一定の農地面積を有している市町村に一つ設置されています。
主な役割は農地利用を最適化することで次のとおりです。
・農業者の農地利用を拡大する
・分散されている農地を集約して農作業の効率を高める
・遊休農地の発生を防止または解消する
・新規就農を推進する
農業委員会は「農業に関する識見をもつ農業委員」と「農地利用の最適化に識見をもつ推進委員」で構成されています。農業委員と推進委員は、それぞれに連携して業務を行っています。
農業委員会の仕事内容
農業委員会は、農地法や農業経営基盤強化促進法に基づいて主に次の業務を行います。
・農地利用の最適化の推進
・農地の権利移動や転用の審査・許可
・農地利用の集積計画の決定
・遊休農地対策の現地調査
・農作業の受託のあっせん
・田畑の売買価格調査
・農業経営に関する相談や情報提供
・農業者年金に関する業務全般
農業委員会サポートシステムの取り組み
農業委員会サポートシステムとは、農地台帳に記録している農地情報を電子化・地図化してインターネット上に公開するためのシステムです。電子化・地図化された農地情報は、農林水産省が運営するeMAFF農地ナビに反映される仕組みとなっています。
eMAFF農地ナビを利用すれば全国4,000万以上 (2023年1月現在)の農地のなかから
・地目の種類や面積
・貸したい・売りたいなどの所有者の意向
・遊休農地であるかどうか
・遊休農地の所有者の意向
・農振法区分や都市計画法区分のどれに当てはまるか
・農地に設定されている権利の種類
などの条件から絞り込み、あらゆる農地情報を閲覧できます。
農業委員会サポートシステムにより構築されたeMAFF農地ナビを利用すれば「農地を借りたい・買いたい」などのあらゆるニーズに対応できるでしょう。
02農業委員会に届出・許可が必要なこと
ここからは、農業委員会に届出・許可が必要なことについて解説します。
1. 農地の転用
2. 農地の賃借・売買
3. 農地の相続
4. 農地の盛土
農地を有効活用したり相続したりする予定がある方は、次の章の内容を必ずおさえておきましょう。
農地の転用
農地転用とは、農地を農業以外の土地に転用して、農地を別の目的で利用することです。農地を別の目的のために転用できれば、使われない農地を有効活用できます。しかし、農地を転用するには、農地法に基づき農業委員会から許可を得る必要があります。
ただし、生産性の高い優良農地は原則転用できません。基本的に転用許可対象となるのは、「小集団の未整備農地や市街地の農地」などです。所有する農地が転用可能であるかを知りたい方は、管轄の農業委員会に問い合わせてみましょう。
また、必要な書類などは、自己所有の農地を転用するのか、事業所が農地を購入して転用するか、などによって異なります。必要となる書類などは、管轄の農業委員会に一度相談したほうが良いでしょう。
農地の賃借・売買
農地を賃借したり売買したりする場合は、農地法に基づき農業委員会に許可を得る必要があります。
加えて、個人や法人が農業目的で賃借・売買する場合は、次の一定の要件を満たしている必要があります。
・農地すべてを効率的に利用できる営農計画をもっている
・農地を取得する者が年間150日以上は農業に従事する
・取得する農地面積の合計が原則50a(北海道は2ha)以上である
・周辺の農地利用に支障を与えない
さらに法人の場合は、賃借・売買のそれぞれに追加で所定の要件があるため注意が必要です。農地の賃借・売買の許可申請に必要となる書類や、細かな賃借・売買の要件については、各自治体によって様式が異なる場合があります。必要な書類や要件については、管轄の農業委員会に確認しましょう。
農地の相続
農地の権利を相続した人は、その旨を農業委員会に届け出る必要があります。ただし、事前に管轄の法務局で相続登記(名義の変更)を行う必要があります。
農地相続後の届出は、被相続人が死亡したのを知ってから10カ月以内です。届出をしなかったり虚偽の届出をしたりした場合は、10万円以下の過料が課せられる場合があるため注意が必要です。
届出には、農地法第3条に基づいた届出書や相続登記済みの登記簿謄本などが必要です。こちらも各自治体により書類の様式が異なる場合があります。管轄の農業委員会のホームページなどで必要な書類を確認しましょう。
農地の盛土
農地の改善のために、盛り土や切り土、掘削などを行う場合は、農地改良工事届を農業委員会に提出する必要があります。農地改良工事届は、農地の改良のための工事を始める1 カ月前まで提出しなければなりません。
また、各自治体それぞれに農地改良を行う場合の注意点があります。
例えば、福島県いわき市であれば次のとおりです。
・農地面積は1,000㎡以内まで
・盛土の高さは周囲の低い道路面より1m以内の高さまで
・工事期間はおおむね3カ月以内に実施する
・盛土の土質は農業に適した土のみを使用する
・工事完了後は速やかに農業を再開する
農地改良の注意点に関しては、各自治体のホームページなどで確認しましょう。
03導入件数増加中のソーラーシェアリングも農業委員会に農地転用の届出・許可が必要
農地に支柱を立てて太陽光発電設備を設置する場合も、支柱の基礎部分に関して一時転用許可が必要です。
ここからは、ソーラーシェアリングの概要や一時転用を受けるにあたっての注意点、ソーラーシェアリングの申請に必要な書類などを解説します。
ソーラーシェアリングとは
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、農地に支柱を立てて、太陽光発電設備を設置し、発電と農業を両立する取り組みです。
発電と農業を両立することで、電力を自家用に利用したり、売電をして収入を増やしたりすることができます。近年、後継者不足や燃料コストの増大などの課題に対する、新たな打開の切り口として注目されています。
ちなみに、ソーラーシェアリングで育てやすい作物は、レタス・ネギ・ジャガイモなどの半陰生植物やショウガ・シソ・三つ葉などの陰生植物であるとされています。半陰性植物や陰生植物に該当する農家は、ソーラーシェアリングを選択肢に入れやすいでしょう。
一時転用許可を受けるにあたっての条件
ソーラーシェアリングのための一時転用許可を受けるにあたって、次の条件があります。
・発電設備の下部で農業を適切に継続できる
・発電設備の下部で生産された作物の状況を管轄の農業委員会に報告する
・発電設備の下部で適切に作物が育てられなくなった場合は、迅速に適切な日射量などを確保する
・発電設備の下部で適切に作物が育てられなくなり、発電設備を改築または廃止する場合は速やかに報告する
・発電設備の下部で農業を行なわ なくなった場合、または発電事業が廃止される場合は、支柱を含む設備を速やかに撤去して元の農地にもどす
ソーラーシェアリングの申請に必要な書類
ソーラーシェアリングの申請に必要となる主な書類は次のとおりです。
・営農型発電設備の設計図
・発電設備下部の農地における営農計画書
・発電設備下部の農地で栽培する作物の収穫量または品質に関するデータ
・普及指導員や試験研究機関など必要な知見を有する者の意見書
・先行してソーラーシェアリングに取り組んでいる者の事例の書類
以上は農林水産省が定めている書類です。各自治体により求められる書類は異なるため、管轄の農業委員会に必要となる書類の確認をしましょう。
04まとめ:農地転用などで困ったら農業委員会に相談しましょう
農業委員会の業務は、農業に関連する事務全般であり、農家とはあらゆることで関わります。また「農地の賃借・売買・転用・相続」などは、各自治体などによって書類の様式や対応が異なる場合があります。不明点があれば、管轄の農業委員会に相談したほうが確実でしょう。
特に、農地の転用は手続きが複雑な部分があります。今後、農地転用を行うことが考えられる方は、次の記事を参考にしてください。
【参考】
・農業委員会の概要(農林水産省)
・eMAFF農地ナビ(農林水産省)
・農業委員会(いわき市)
・農地転用許可制度の概要(農林水産省)
・法人が農業に参入する場合の要件(農林水産省)
・農地相続後の農業委員会への届出義務の周知(中城村)
・支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用 許可制度上の取扱いについて(農林水産省)