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農地転用とは?農地転用許可制度の基準や届出、許可の流れなどを徹底解説

後継者がいない農地を別の目的に転用したい、転用を前提で譲渡を希望している人がいるけれどどうしたらよいのかなど、農地転用の基本を知りたいという方は多いのではないでしょうか。農地転用をするには農地転用許可制度を理解し、確実に申請をする必要があります。今回は農地転用許可制度の概要について解説します。

01農地転用許可制度とは?

そもそも農地転用許可制度とはどのような制度なのでしょうか。農地を農地以外の目的に活用する場合には必ず申請しないといけないものになるのでしっかり押さえておきましょう。

農地法第4条、5条による規制

農地転用許可制度は1952年に定められた農地法第4条、5条による規制により定められています。農地は国内の食料を生産する上で重要な用地です。これをたとえば農業より採算の取れる事業があるからといって、土地所有者が自由に畑にマンションを建てたりすることが認められれば、国内の農地は大きく減少してしまう可能性があります。結果として食料自給率が下がり、輸入に依存するようになり国力の低下を招きます。

これを防ぐために農地は農地転用許可を申請し受理されないと農業以外の目的で使用してはいけないことになっています。つまり、農地転用許可制度はそもそも優良農地の農地以外の利用を極力防ぐための防波堤として存在する制度だといえるでしょう。

農地転用許可制度の内容

農地転用許可制度における重要な定めとして、どの農地なら転用許可が出るか、出やすいかというものがあります。基本的に市町村が定める農用地区域は、農業上の利用を図るべき土地の区域とされ、原則として農地転用が不可。農地の状況からいうと、生産性が高い優良農地は許可が出にくいのです。詳しい基準については次の項で説明します。

02農地転用許可の基準

農地転用許可にはどのような基準があるのでしょうか。大まかに分けると農地がどのような立地にあるかの「立地基準」、事業の見込みや周囲との関係性が関わる「一般基準」があります。

立地基準(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地~第3種農地)

農地は、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地~第3種農地に分類されます。このうち農用地区域内農地は前項で述べたように、市町村が定めた特に農業を行うべき用地のため、転用は原則不許可で例外もありません。

甲種農地、第1種農地~第3種農地が農地転用許可を検討できる農地ということになります。このうち甲種農地と第1種農地は原則不許可で、例外許可という形で申請が通ることがあります。第2種農地と第3種農地は農地転用許可が出やすいです。

■甲種農地の立地基準と許可が下りるケース

甲種農地とは…
・市街化調整区域内
・農業公共投資後8年以内農地
・集団農地で高性能農業機械での営農可能農地

という条件の農地です。農用地区域内ではないものの、ある程度の規模があり、行政として農地に投資をしてまだ期間が経っていないため、転用許可が通りにくいといえます。

甲種農地で農地転用の許可が通るのは以下のケースです。
・農業用施設、農産物加工・販売施設
・土地収用事業の認定を受けた施設
・集落接続の住宅等(500㎡以内)(甲種農地・第1種農地以外の土地に立地困難な場合)
・地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設
・農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設 等

農業に直結している内容への転用、公共事業や国の政策に紐づいている内容への転用であれば許可が下りやすく見えます。それ以外の目的での転用は非常にハードルが高いと考えた方が良さそうです。

■第1種農地の立地基準と許可が下りるケース

第1種農地とは…
・集団農地(10ha以上)
・農業公共投資対象農地
・生産力の高い農地

という条件の農地です。甲種農地よりは漠然としていますが、やはり農地として高いポテンシャルがあります。

第1種農地で農地転用の許可が通るのは、甲種農地とほぼ同じ条件です。多少甲種農地より例外許可が出やすい傾向はありますが、やはり高いハードルがあります。

■第2種農地の立地基準と許可が下りるケース

第2種農地とは…
・農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地
・市街地として発展する可能性のある区域内の農地

という条件の農地です。つまり将来の農地としてのポテンシャルに行政としてそれほど期待していない農地といえます。

原則不許可という枕詞が取れるのも第2種農地からです。第2種農地で農地転用の許可が下りるのは以下のケースです。

・第3種農地に立地困難な場合等に許可

申請の内容がしっかりしていれば許可は下りると考えてよいでしょう。

■第3種農地の立地基準と許可が下りるケース

第3種農地とは…
・都市的整備がされた区域内の農地
・市街地にある区域内の農地

という条件の農地です。すでに人が住み、経済活動を行うエリアとなっており、これからの農地発展が見込めない状況の農地といえます。

第3種農地での農地転用の許可は

・原則許可

となっています。もし第3種農地を持っていれば、まずはここから農地転用を目指すのがハードルが最も低いです。とはいえ、農地転用許可の申請内容はしっかりしたものでなければなりません。

一般基準

一般基準は客観的に見て事業実施に確実性があるか、周辺に何らかの被害が及ばないかを判断する基準です。以下のような場合には、たとえ立地基準に問題がなくても許可が下りません。

・転用の確実性が認められない場合
農地転用許可を出したとしても、他の法令に抵触しており、そちらの許認可が下りず事業ができないリスクがあると判断された場合は却下されます。また、転用後の事業に関わる関係権利者の同意がないような場合も却下されます。

・周辺農地への被害防除措置が適切でない場合
周辺農地に影響が出ると想定される事業のために転用する際に、適切な被害防除措置が計画に盛り込まれていない場合は却下されます。

・農地の利用の集積に支障を及ぼす場合
農地が集積しているエリアで農地転用する場合に、その内容が周辺に何らかの支障をきたすと判断された場合は却下されます。

・一時転用の場合に農地への原状回復が確実と認められない場合
農地転用許可が一時転用の場合に、期間経過後に農地への原状回復ができないのではと判断された場合は却下されます。

03農地転用の手続き方法

農地転用の手続き方法について説明します。基本的には届出をして許可をもらえばよいのですが、周辺住民など影響が及びそうな人や機関に事前に説明するなど、理解してもらうための取り組みが必要になることがあります。

届出と許可

主な登場人物は3者います。農地を転用する人(譲渡され転用する人も含む)、農業委員会、都道府県知事です。

農地転用の許可を出すのは都道府県知事ですが、実際に内容を精査するのは各市町村の農業委員会です。つまり、農業委員会の委員が納得するような内容の書類を作る必要があります。

法で定められている許可申請書の添付書類は以下です。
・法⼈にあっては、定款若しくは寄附⾏為の写し又は法⼈の登記事項証明書
・土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書(全部事項証明書に限る。)
・申請に係る土地に設置しようとする建物その他の施設及びこれらの施設を利用するため必要な道路、用排⽔施設その他の施設の位置を明らかにした図面
・資⾦計画に基づいて事業を実施するために必要な資⼒及び信用があることを証する書面
・申請に係る農地を転⽤する⾏為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があったことを証する書面
・申請土地が土地改良区の地区内にある場合には、その土地改良区の意見書
・その他参考となる書類

※市街化区域内で農地転用を行う場合は下記も追加
・土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書(全部事項証明書に限る)
・賃借権が設定されている場合には、解約の許可等があったことを証する書面

法的に問題がないことを証明する書類を添付すればよい様に見えますが、意外に重要なのが「その他参考となる書類」です。当然ですが、農業委員会の委員は農業には精通していても農業以外のことに関しては十分に知らないこともあり、内容を理解できなかったために却下されるということがあります。誰にでも理解でき納得してもらえるような説明資料を入念に用意することで、却下のリスクを下げることができます。

また30a以下の農地転用であれば農業委員会を通過後、都道府県知事が許可を出して完了となりますが、30aを超える場合は農業委員会から都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取をする工程が発生します。また4haを超える農地を転⽤する場合には、農林⽔産大臣との協議が必要です。

04農地転用許可の費用

申請の際に行政に支払う費用はありませんが、必要書類を取得するにあたって登記事項証明書など手数料が発生するものがあります。全書類の手数料で3,000〜4,000円程度、さらに専門家に図面を書いてもらったり、書類の作成を行政書士などに代行してもらったりした場合は追加の費用が発生します。

05違反に対する罰則とは?

農地転用許可は、農地を保護するために定められた法律です。許可なく農地を違う目的に転用したり、転用許可時とは異なる内容で運用していたりする場合や、さらに違反している人物から工事等を請け負った業者も罰せられます。もちろん転用許可時に虚偽の内容である場合も同様です。

基本的には行政からの是正指導や勧告などを通じ、こういった違反転用状態がなくなれば終了です。ただし、従わない場合は強制的な行政代執行による施設の撤去や、裁判を経て3年以下の懲役又は300万円(法人の場合1億円)以下の罰金が課されます。

06農地転用の実績

実際に農地転用が行われた実績を農林水産省のデータをもとに紹介します。

農林水産省が発表している1970年から2019年までの用途別農地転用面積の推移を見ると、農地転用された合計面積は年々減少傾向にありますが、その中でも「その他の業務用地」「植林その他」が農地転用の割合の中で増加していることがわかります。つまり、既存の枠組みには当てはめられない新たな農地転用が盛んになっていると分析できます。

図1:用途別農地転用面積の推移
出典:用途別農地転用面積の推移(農林水産省 )をもとにRe+編集部作成

07最近注目されている「ソーラーシェアリング」目的での農地転用

新たな農地転用方法として注目されているのがソーラーシェアリングです。ソーラーシェアリングとは農地に架台を建て、その上にソーラーパネルを設置し、作物を育てながら太陽光発電を行う仕組みです。既存の農業収入に加え売電による収入の柱を得たり、電力の自前調達、荒れ地になった休耕地の活用にもなります。SDGsやエネルギーの確保が叫ばれる中、ソーラーシェアリングは社会的価値も高いソリューションです。

08ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリングの第一人者の一人が千葉エコ・エネルギー株式会社の馬上丈司氏。ソーラーシェアリングに取り組んだ背景、どのようなメリットがあるのかを詳しく語っていただいたインタビューをぜひご覧ください。

関連記事馬上丈司さんに聞く!自らソーラーシェアリングを実践する理由とは?

【参考】
農林水産省 農地転用許可制度について

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