2024.2.1
農業投資とは?方法や注目される背景、メリット・デメリットを紹介
農業投資とは、法人・個人が農業に関する分野へ利益を見込んで資本を投じることです。
昨今、日本における農業は担い手不足や国内消費の減少傾向などネガティブな側面が指摘される一方で、海外需要の増加やスマート農業の普及による生産効率アップなど、明るい兆しも見えています。
そのため、農業は関連分野も含めて活性化が期待されており、投資先として注目している方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では農業投資について、方法や注目される背景、メリット・デメリット、期待される分野について紹介します。
CONTENTS
- 01 農業投資とは
- 02 農業投資の方法
- 03 農業投資が注目される背景
- 04 農業投資のメリット
- 05 農業投資のデメリット
- 06 農業投資で期待されている分野
- 07 まとめ|有効な農業投資を実現するために
01農業投資とは
農業投資とは、法人や個人が農業に関わる分野に対して、利益を見込んで資本を投じる活動のことです。例えば、株式購入や農業ファンドのように資金を投資して配当金を得る方法が挙げられます。また、企業であれば農業への直接参入や自社技術を農業分野へ転用することで、新たな売上利益を得る方法もあります。
02農業投資の方法
農業投資の方法を4つ紹介します。
農業関連企業への株式投資
農業関連企業の株式を購入することで農業投資を行います。農業を直接営む企業だけでなく、種苗・農薬・肥料・農業用機械・農業DXといった農業に関連する株式も含みます。人口減少による国内需要の減少傾向はみられるものの、海外需要を見据えたグローバル化やスマート農業の普及といった前向きな動きもみられています。
農業ファンドへの投資
農業ファンドとは、農畜産業に関連するプロジェクトや企業に対して投資を行うために設立されるファンド(基金)のことです。農畜産業に関わる企業や農家が栽培および販売プロジェクトを立ち上げて出資を募ります。昨今は、クラウドファンディング形式で実施されるケースも見受けられます。具体的には、しいたけの栽培・販売、ブランド牛の育成・販売などが投資対象として挙がっています。
農業への参入
農業へ直接参入する方法もあります。飲食店や食品の流通・小売りを担う企業であれば、比較的参入しやすいといえるでしょう。実例として、ワタミ株式会社や株式会社モスフードサービス、カゴメ株式会社、イオングループなどが農業への参入を果たしています。なかには、主にリースや金融サービスを担うNECキャピタルソリューション株式会社のように、企業母体に食や農業のイメージがない企業の参入も散見されます。
農業分野への技術・ノウハウ転用
農業分野への技術・ノウハウ転用を通じた投資も可能です。例えば、自社が培ってきたロボットやAI、IoTなどの技術を用いた農作業の省力化・効率化が挙げられます。またハード面に限らず、トヨタグループの「トヨタ生産方式を農業に応用した現場改善サービスの提供」や、JTBグループの「農業体験と観光を組み合わせたツアー実施」のようにソフト面における自社ノウハウを農業へ転用しているケースもあります。
03農業投資が注目される背景
農業投資は、以下3つの背景により注目されています。
世界的な人口増による食料需要の増加
農林水産省が発表した「2050年における世界の食料需給見通し」によると、世界的な人口増加および経済発展に伴い2050年の世界の食料需要量は2010年比で1.7倍となることが予測されています。そのため、日本から海外に向けた農産物の輸出増加ひいては国内農業の収益性が予測できることから、農業への投資が注目されているのです。
食料自給率向上を目指す動き
日本の食料自給率は2022年時点で38%(カロリーベース)であり、諸外国と比較して低い状況が続いています。そこで将来にわたる食料の安定供給の観点から、低下する国内の食料自給率を向上させるための動きが活性化しています。
具体的には、持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成と確保、経営発展の後押しや円滑な経営継承、農業生産基盤の整備やスマート農業の推進による生産性向上などです。こうした国内農業を活性化させるための動きから、農業分野が投資対象としても注目されています。
日本政府による後押し
日本政府が農業投資を後押しする動きもみられます。農林水産省は、農業は天候のリスクや生産活動サイクルが長い等の事情により、外部からの投資を十分に受けることが難しい状況にあると判断し「農林漁業法人等投資育成制度」を設けました。
同制度は、事業規模拡大等に意欲的に取り組む農林漁業および食品産業の事業者やサポートする産業や新しい食産業を支援するため、事業者の株式等を取得・保有し、経営または技術の指導を行う制度です。
農林漁業法人等投資育成事業に関する計画を作成し、農林水産大臣の承認を得られた投資事業有限責任組合または株式会社は、特例により出資総額の 50%未満の範囲内で、日本公庫の出資を受けることができます。
これにより、出資企業側は投資リスクを軽減できるため、農林漁業や食品産業の事業者に対する投資を行いやすくなります。一方、投資を受ける事業者側は、農林漁業や食品産業に関連する範囲であれば使途に制約のない資金を得やすくなり、自己資本の強化や対外信用力の向上などを実現可能です。
04農業投資のメリット
農業投資のメリットを4つ紹介します。
長期的な投資対象として見込める
農業は「食」に直結する分野であり、流行などに左右されづらく突然無くなるようなこともありません。そのため、長期的な投資対象として見込める点はメリットといえるでしょう。
持続的な収益を期待できる
前項目で紹介した世界的な食料需要増加や食料自給率アップに向けた動きなどの背景から考えて、国内農業に関する分野は今後も一定以上の活性度を見込めます。このことから、持続的な収益に対しても一定の期待をもてるといえるでしょう。
食料の安定供給へ貢献できる
先述の通り日本国内の食料自給率は諸外国と比べて低い状態であり、将来に対する不安が拭えません。そこで、農業分野への投資を行うことで国内農業の活性化へ寄与し、食料の安定供給へ貢献できる点も農業投資を行うメリットです。
環境負荷の軽減につながる
化学肥料や農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した環境保全型農業を対象とした投資を行うことで、環境保護への貢献を行える点もメリットといえます。法人として投資する場合は、自社のイメージアップにもつながります。
05農業投資のデメリット
農業投資のデメリットを2つ紹介します。
天候や気候などの予測困難なリスクが伴う
農業には、天候や気候など予測やコントロールが困難なリスクが伴う点はデメリットです。需要は十分にあったとしても生産および供給を行えない事態が発生するリスクは避けられません。
農業参入には初期投資や生産体制の確立が不可欠
特に農業参入を行う場合、借り入れや購入による農地の確保や施設・機械の導入といった初期投資が不可欠です。また、実作業を担う人員や技術・ノウハウを整えて生産体制も確立しなければなりません。
06農業投資で期待されている分野
農業投資において特に期待されている分野を3つ紹介します。
スマート農業
スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなど先端技術を活用した農業の総称です。担い手が不足する状況下で食料自給率の向上を実現するためにも、スマート農業を用いた生産効率の向上は欠かせません。
そのため、スマート農業に関する技術を手掛ける企業の株式は投資先として期待できます。自社がスマート農業に転用できる技術を有しているのであれば、農業分野への参入による投資も可能です。
スマート農業については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)も投資対象として注目されています。
現在、全国的に太陽光発電が広まりつつある一方で、設置に適した土地が少なくなってきています。そこで、農地の上にパネルを設置する営農型太陽光発電に対する期待が高まっています。農業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、農業は従来通り営みながら太陽光発電を行えるのが利点です。
こちらの記事では注目のソーラーシェアリングについて、メリットやデメリット、始め方などを詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
産直ECサイト
産直ECサイトとは、インターネット上で産地直送品を購入することができるwebサイトのことです。産直ECサイトを積極的に利用することで、購入先の農林水産事業者への投資となります。農業者はもちろん、商品以上の見返りを得られるわけではありませんが、各事業者ひいては各産業の発展を少なからず支援できます。
新型コロナウイルス感染症による外出自粛が広まる中で、手軽に美味しいものを自宅で食べられる産直ECサイトでの食料消費支出額が大きく伸びました。その増加傾向は緊急事態宣言が解除された2021年9月以降も続いています。
産地直送ECサイトは、農業従事者にとっては「新しい販路が開拓できる」「販売価格を設定できる」「直接消費者の声を聞くことができる」といったメリットがあります。また購入者にとっては「新鮮な農林水産物を購入できる」「規格外の食材を購入し生産者をサポートできる」「実店舗では分かりにくい生産者の詳しい情報を知れる」などのメリットがあります。ただし、中間業者が少なくなった分農業従事者は作業量が増えたり、購入者はある程度の目利きが必要になるといった点には注意が必要です。
07まとめ|有効な農業投資を実現するために
農業投資とは、法人や個人が農業に関わる分野へ利益を見込んで資本を投じる活動のことです。具体的な投資方法としては、「農業関連企業への株式投資」「農業ファンドへの投資」「農業への参入」「農業分野への技術・ノウハウ転用」が挙げられます。
農業投資は、世界的な人口増による食料需要の増加や、国内における食料自給率向上を目指す動きに加えて、日本政府による後押しによって注目されています。
農業投資のメリットとしては「長期的な投資対象として見込める・持続的な収益を期待できる・食料の安定供給へ貢献できる・環境保護への貢献につながる」といった点が挙げられます。
ただ一方で、天候や気候などの予測困難なリスクが伴う点や、農業参入には初期投資や生産体制の確立が不可欠である点といったデメリットもあるため、慎重な検討・判断が必要となります。
また農業投資において特に期待されている分野として、スマート農業・営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)・産直ECサイトを紹介しました。
特に営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、収益性向上や関心が高まるエネルギー問題への取り組みが可能なためおすすめです。本文内で紹介した記事を参考に投資対象として検討してみてはいかがでしょうか。
【参考】
- 農業課題の解決から地方創生に貢献(NECキャピタルソリューション株式会社)
- 農業 | グループ事業(ワタミ株式会社)
- モスファーム千葉を設立(株式会社モスフードサービス)
- カゴメアグリフレッシュ(カゴメ株式会社)
- イオンアグリ創造株式会社
- 参考:モノづくりで培ったトヨタ生産方式を農業に応用(経済産業省)
- 旅行も仕事も農業も楽しむ!「JTBアグリワーケーション🄬」ツアーを発売 ~JA全農福島とJTBによる連携、旅行商品で新たな農業支援~(JTBグループ)
- 2050年における世界の食料需給見通し(農林水産省)
- その2:食料自給率って低いと良くないの?(農林水産省)
- 日本の食料自給率(農林水産省)
- 1 食料自給率・食料自給力の維持向上に向けた取組(農林水産省)
- 農林漁業法人等投資育成制度の概要・法令等(農林水産省)
- 環境保全型農業関連情報(農林水産省)
- 農林漁業法人等投資育成制度のご案内 | 日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
- 太陽光発電、30年以降は営農型けん引 土地不足で導入7倍に – (日経GX)
- 私たちの選択で支える国産の農林水産物(農林水産省)