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農業分野に転職するならどんな職種を選ぶべき?

近年、スマート農業や6次産業化で注目が集まっている農業。転職を考えている方も少なくないでしょう。今回は、主に農業分野への転職を考えている方に向け、農業業界で働くことのメリットや、職種をご紹介します。農業に関心を持ち、これから農業業界への転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

01農業分野への転職を考える人が増えている

農業業界は長らく担い手不足に悩まされてきましたが、最近転機が訪れています。農業分野への転職を考える方が増加してきているのです。特に、若い世代が農業に関心を示しているという傾向が顕著になっています。そこにはどのような背景があるのでしょうか。

若者が農業に関心を示している背景

農林水産省 が実施した「新規就農者調査」によると、 2015年以降は毎年1万人前後が新たに農業経営体に雇用される形で参入しています。そのうち40代以下は71%、非農家出身者は86%と、「農業分野での就労経験がない若者」が新たに農業を始めていることが分かります。これまでは「農業は自営業として行うもの」というイメージも強かったものの、農業従事者の高齢化や後継者不足により、法人が大規模な農地を管理するというケースも珍しくなくなりました。そのため、雇用されるという形で農業に参入する若者が増えているのです。

こうした動きの背景には、若者の志向が変化してきたという要因があります。これまでは、会社に終身雇用されてできるだけ同じ会社で長く働くことが一般的とされていましたが、終身雇用が徐々に薄れ、多様性が尊重される現代において、自分に最適なライフスタイルをベースに仕事を選んだり、見直したりする人が増えています。                   

また、個人農家になるのであれば、いわば経営者として事業の裁量権を持つことになりますし、成功すれば年功序列の企業に勤めているだけでは手に入らないような収入を得られる可能性があることも、魅力的に映っているのかもしれません。実際、全国新規就農相談センターが2017年に発表した「新規就農者の就農実態に関する調査結果」によると、農業に新規参入した人の約52%が「自ら采配を振れる」ことを就農の理由として挙げています。

また、補助金制度をはじめとした支援制度の充実もポイントです。例えば、就農準備資金     制度の要件を満たせば、研修機関で研修を受ける就農希望者には最長2年間、月12万5,000円(年間最大150万円)が交付されます。また、新規就農時には経営開始資金制度を活用することで、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12万5,000円(年間150万円)が定額交付されます。こうした支援制度は、新規参入のハードルを下げるのに役立っているといえるでしょう。

02農業業界で働く3つのメリット

さて、ここからは実際に農業業界で働くメリットをご紹介します。先述の若者が農業を志す背景と通ずる部分もあるため、転職をお考えの方はあわせてチェックしてみてください。

働き方を自分で決められる

先ほど、裁量権を手にするという観点から、農業に関心を寄せる若者が増えているとご説明しました。特に個人で農家を営む場合、労働の仕方から作物の栽培方法、値付けや販売形態まですべて自分で決めることができます。自然相手ですので予期せぬことが発生する可能性もありますが、収入や労働時間などを自分で調整しながら、ひとりひとりのライフプランに合わせた働き方を選択できるのは大きな利点だといえるでしょう。

結果が目に見える形で現れる

農業という業界においては、努力や工夫の結果が現れやすいといえます。土壌や栽培方法の改良は農作物の収穫量や質に反映されますし、販売方法を変えれば売上が増加することもあるでしょう。そうした結果をすべて自分自身で享受できるというのも大きな魅力です。企業に勤めているとなかなか味わうことのない達成感を得られます。

地域に密着した人間関係を構築できる

農業は地域によって方法やノウハウが異なるため、作物の生育に関する情報収集には、地域での人間関係構築が必要不可欠です。個人で農家を営む場合であっても、地主との調整や出荷過程での関わりなど、コミュニケーションを取る機会は多くあります。その中で良好な人間関係を築くことで、円滑に仕事を進められるのはもちろん、自身の充足感を増やすことにもつなげられるでしょう。都市化によって地域との関りが減っている中で、地域との関りを求めている方には適した仕事といえるかもしれません。

03農業業界の新しい取り組み事例

農業業界では、新たな人材の受け入れと合わせて変革に向けた取り組みが積極的に行われています。ここでは、農業の現場で推進されている取り組みの代表例を3つご紹介します。これらの取り組みは、いずれもこれからの農業を支える役割を担うことが期待されています。

6次産業化

まずご紹介するのは、農林水産省が筆頭となって推進している農業の「6次産業化」です。6次産業とは、これまで1次産業として行われてきた生産活動に加え、2次産業が担う製造や加工、3次産業として行われるサービスや販売までを行うことです。1(次産業)×2(次産業)×3(次産業)の掛け合わせというコンセプトで、6次産業という言葉が生まれました。生産に限定しないことで、農作物に付加価値をつけたり、生産以外の部分での収入を増やして所得向上を見込んだりすることができます。

スマート農業

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなど情報処理技術を組み込んだ農業のことです。代表的な例としては、農薬や肥料の散布を行うことができる農業用ドローンの導入や、収穫ロボットの活用、自動灌水装置の設置などが挙げられます。これまで人の手によって行われていた作業を自動化することで労力を大幅に削減したり、データに基づくほ場管理でより効率的に営農することが可能です。

また、生産に関するデータの蓄積をすることで、農法の改善や次世代への継承に役立つ効果も見込めます。転職先として考えた場合も、ドローンの操縦資格やエンジニア経験が生きるため、他業界からの人材流入も期待されています。もしこれらの資格や経験をお持ちであれば、スマート農業を行う前提で農業分野に参入するのも手でしょう。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)

先ほど、6次産業化による所得向上についてご説明しましたが、副収入を得るという観点では、「ソーラーシェアリング」という方法もあります。「営農型太陽光発電」とも呼ばれています。これは、農地の上部にソーラーパネルを設置し、農業と発電で太陽光をシェアする取り組みです。太陽光パネルの角度や高さの調整を行うことで作物の生育への影響を最小限に抑えつつ、同時に発電ができるため、農業収入に加え、売電収入も得られます。ソーラーシェアリングに関する詳細については、 以下の記事をご覧ください。

関連記事営農型太陽光発電とは?取り組みや課題、導入事例を解説

04おすすめの職種

スマート農業の推進が積極的に行われているという状況も踏まえた上で、ここからは転職先としておすすめの職種をご紹介します。これらの職種の中には、これまで農業分野に携わったことがない方でも経験を活かせるものもあります。ご自身のスキルややりたいことを踏まえて選んでいきましょう。

生産職

農業と聞いて真っ先にイメージするのは、生産職ではないでしょうか。生産職は農作物を生産し、出荷するという役割を担います。作物と最も近くで直接向き合う職種といえるため、農業に従事している感覚を最も持ちやすいかもしれません。

ドライバー

生産した作物を運搬したり、農園へバスで送迎を行ったりする仕事になります。運転免許がありドライバーの実務経験があれば、農業以外の業界からの転職も難なく行うことができるでしょう。全国的に特に物流を担うトラックドライバーが不足しているという実状があるため、農業の業界でもドライバーは重宝される傾向にあります。

ドローンオペレーター

ドローンオペレーターは、農業用ドローンを操作して農薬や肥料の散布、栽培状況のチェックを行う職種です。これまで産業用の無人ヘリコプターを使うことができなかったような急傾斜地や、10アール程度の小規模な農地では特に農業用ドローンの需要が高まっており、今がオペレーターを目指す好機であるのは間違いないでしょう。

なお、ドローンの操縦そのものについて、取得が必要な資格および免許はありませんが、農薬の散布を行う際には「産業用マルチローターオペレーター技能認定証」が必要になるため、注意が必要です。

メカニカルエンジニア

スマート農業の浸透に伴い、農業設備のシステム構築やメンテナンスができる人材、メカニカルエンジニアの需要が高まっています。メカニカルエンジニアの業務では、農業で使われるロボットの仕様を決めたり、設計を担当したりすることになります。ロボット技術やシステム構築に関する専門性も含め、幅広い知識と経験が必要ではありますが、農業分野の変革を担えるという大きなやりがいがある職種といえるのではないでしょうか。ほかの業界でDXに取り組まれた経験がある方は、検討してみてはいかがでしょうか。

05あると役に立つ免許例

最後に、取得していると転職時に役立つ免許をご紹介します。免許を取得することで、仕事の幅を広げることを検討されている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

普通自動車免許

いわゆる「普通免許」というものです。普通乗用車や軽トラックは、この免許で運転できます。農業に携わるのであれば、農作物の運搬や圃場の移動などで自動車を運転する機会は頻繁にあると考えられるので、早めに取得しておくことをおすすめします。農業の現場でよく使用される軽トラックなどはマニュアル操作が必要な場合も多いため、マニュアル免許とオートマ限定免許で迷ったときは、汎用性の高いマニュアル免許を取得した方がいいでしょう。

大型特殊自動車免許

大型特殊自動車免許を取得することで、大型のフォークリフトやクレーン車、ブルドーザー、コンバインを公道で走行させることができるようになります。これらは大規模な農園で使われることが多い車両です。ただ、現場で作業を行う際には車種ごとに別の資格が必要になることも多いので、注意しておきましょう。

牽引免許

牽引(けんいん)免許を取得すれば、自動車やトレーラーを牽引することが可能になります。大量の農作物をまとめて運搬するドライバーになるために必要なケースもあるため、事前に確認が必要です。

フォークリフト作業免許

フォークリフトで作業を行う際には、運転免許の他に作業免許が必要になります。実際の業務ではフォークリフトを走行させるだけでなく、作業を行うことがほとんどなので、運転免許とあわせて取得することをおすすめします。

06動向を見極めて転職を成功に導く

スマート農業の導入や6次産業化の推進に伴い、農業分野で必要とされる人材も変化しつつあります。これまでのキャリアで培ってきた経験や知識、ノウハウが活かせる環境も増えていますので、これから農業業界への転職をする方は、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしながらどの職種に就くと自分の能力を活かしやすいのかという視点も含めながら検討してみてはいかがでしょうか。

【参考】
農業を担う人材の育成・確保に向けて(農林水産省)
就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)(農林水産省)
農産品物流の改善・効率化に向けて(農林水産省・経済産業省・国土交通省)
トラック運送業界の景況感(速報)(公益社団法人 全日本トラック協会)
農業用ドローンの普及に向けて(農林水産省)
令和3年度農業分野におけるドローンの活用状況(農林水産省)
一般社団法人 農林水産航空協会

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