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【農家向け】農業コンサルティングとは?サポート内容やメリットを解説

農業コンサルティングとは、農業経営の専門家が特定の農業者や農業法人などに、経営や生産、販売などのアドバイスを行う業務のことです。農業コンサルティングを有効活用するためには、サポート内容や利用するメリットを理解して目的意識をもつことが重要です。

本記事では、農業コンサルティングの概要やサポート内容、利用するメリットなどについて解説します。具体的なサポート内容や事例を含めたメリットを解説しているため、農業コンサルティングがどのようなサービスであるかを理解できます。

また、農業コンサルティング以外の選択肢も解説していますので「コンサルティングを依頼する前に自分でできることはないだろうか」と悩んでいる方も、ぜひ参考にしてください。

01農業コンサルティングとは?

農業コンサルティングとは、農業者に応じて経営や生産、販売など農業にまつわるあらゆることに関してアドバイスを行い、幅広い支援をする業務のことです。農業コンサルタントはその業務を行う人のことを指します。

農業コンサルティングの支援内容例は次の通りです。
・農業に関連する課題解決
・6次産業化の支援
・新しい農業技術の導入支援
・グローバル進出に向けた支援
・農業を通じた地域活性化活動

従来の農家は農作物を生産するのが主な役割でした。しかし、近年ではインターネットを介した直販などの販路の拡大や農作物を使用した加工品の販売、カフェ・レストランの運営といった6次産業化に対応するために、加工や販売、地域活性など、さまざまな活動が求められるようになり、そのための幅広い知識が必要となります。そこで、農業経営の専門家である農業コンサルタントの存在が求められるようになりました。

02農業コンサルタントがしてくれること

農業コンサルタントが提供する主な支援内容は次の通りです。
・農業経営の支援
・6次産業化の支援
・農業人材の確保・人材育成の支援

それぞれ解説します。

農業経営の支援

農業コンサルタントは、農業経営をビジネスの観点からサポートをしてくれます。サポート内容の一例は次の通りです。

・記帳指導:現金帳・複式簿記の指導
・財務分析:賃借対照表や損益計算書から課題や改善点の指導
・経営計画書の分析:長期・短期の資金計画や経営計画書作成の指導
・農業法人設立の支援:法人化のメリット・デメリットの解説や設立に向けての支援
・相続対策・事業継承支援:相続税のシミュレーション、農地等の納税猶予制度の手続き支援・農業技術や経営ノウハウの継承支援など
・その他の情報提供:制度・政策の説明、各種申請の代行、セミナー開催など

農業コンサルタントは、経営計画に沿った営農の改善や事業拡大に向けた指導など総合的にサポートしてくれます。

6次産業化の支援

6次産業(1次産業×2次産業×3次産業)とは、生産から加工・流通・販売まで一貫して生産者が関わることです。つまり、農家自身が農作物の販売や観光農園、農家レストランなど、新しい付加価値を生み出すための取り組みに携わることをいいます。

この6次産業化を実現するには、経営や販路開拓、マーケティングなどの多くの知識が必要です。そのため、農業コンサルタントは、6次産業化に必要なさまざまなサポートを行います。

サポートの一例は次の通りです。

・販売する商品の企画・開発
・生産・販売などを両立する工夫
・経営を安定化させる体制づくり
・販売ルートの確保

とはいえ、農業コンサルタントが実施するのはあくまでサポートです。6次産業化を実現し、成功させるためには、農家自身も次の内容を積極的に実施する必要があるでしょう。

1.人材・作物・施設・資金状況などを分析して自分の農園の強みや弱みを知る
2.「こだわりの農産物を作る」「地域の伝統・食文化を活かす」など事業の方向性を決める
3.情報収集や人脈づくりを行いながら事業計画を作成する

農業人材の確保・人材育成のサポート

現代の農業では人材育成のサポートが必要です。6次産業化や事業拡大などにより、多くの従業員を抱える農業法人が増えているためです。

農業コンサルタントは、一人ひとりの能力を高める人材育成も実施します。具体的には、農業経営や農業資材の勉強会、販売ルート開拓のアドバイスなどです。農業者を教育して安定した農業経営に導くことが農業人材の確保につながります。

農業者の高齢化や人材不足が問題となっている現代では、人材育成や人材確保の重要性はさらに高まっていくでしょう。

03農家が農業コンサルティングを活用するメリット

農業コンサルティングを依頼するのであれば、具体的にどのようなメリットがあるのかを理解しておくことが重要です。メリットを理解しておけば、目的意識を持って農業コンサルティングを活用できるためです。

ここからは、農家・農業法人が農業コンサルティングを活用するメリットを解説します。

問題点を正確に捉えられる

農業コンサルティングを活用すると、農業経営の問題点を正確に捉えられます。農業コンサルタントが正確に収支分析をして、採算状況を明らかにしてくれるためです。

水稲や芝桜などさまざまな作物を手掛けている農家の事例をもとに、農業コンサルタントの取組の一例を挙げると次の通りです。

【売上に対して経費の投入割合が多くなってしまっているケース】

農家の状況芝桜に関して、農閑期の余剰人員を投入して手掛けて始めていたため、正確な収支を把握できていなかった
コンサルタントが考えた問題と実行した対策収支状況が把握できていないことが問題であると判断する。紙媒体で管理されていた営農日誌や決算書、総勘定元帳から抽出できる収支状況をExcelに変換した。データ分析の結果、芝桜は赤字であるため作らないことを提案する

この事例では、コンサルタントが農家の収支状況を分析することで、各作物の売上高や労働時間を比較することができ取り組むべき優先順位を明確にできました。このように農業コンサルタントは、収支状況などを「見える化」することにより、採算の合う農業経営に導くことができます。

新たなビジネスモデルを構築できる

農業コンサルティングを活用すると、問題点を解決するために新たなビジネルモデルを構築できる可能性があります。

カット野菜を提供する農家の事例では、農家とコンサルタントが実行した対策の違いは次の通りです。

【カット野菜の売上は成長しているが粗利はマイナスになっている農家のケース】

農家が考えた問題と実行した対策原価を下げて労働時間も短縮することで粗利益を捻り出す
コンサルタントが考えた問題と実行した対策野菜をカットしているだけの商品では付加価値がないと判断する。漬物や野菜スープなどへ加工することを提案する

こちらの事例では、農業コンサルタントは全体のビジネスフローを把握して、正しい問題設定を行いました。その結果、現状のビジネスでは利益率を上げることに限界があると考え、粗利の低い ビジネスモデルからの脱却を提案しました。

このように農業コンサルタントは、現在の材料やノウハウから実行できる付加価値を加えて、利益の出るビジネスモデルへ導くことができます。

04農業コンサルティングにかかる費用の相場

農業コンサルティングの費用は、基本的に個別での見積もりです。つまり、農家が抱えている問題やサポート内容、コンサルティング会社の規模、コンサルタントのレベルなどにより変動します。

費用の一例は次の通りですので、参考にしてみてください。

・栽培技術アドバイザー:5万円/月
・顧問料:3万円/月
・補助金申請サポート:着手金5万円
・経営改善相談:5,000円/時間

05農家が利益を上げにくい理由

従来、農業では卸売業者を通して販売することが一般的でした。この場合、販売先を探し契約する手間や販売先が見つからないリスクを軽減できるというメリットがある一方で、流通や加工の段階でマージンとコストが加算されるため、利益率はどうしても下がってしまいます。 つまり、農業が利益を上げにくい理由は、ビジネスモデルそのものにあるのです。

しかし近年では、農家が利益を上げるために次のような販路を活用する動きがあります。

・道の駅:国土交通省に登録された道路施設。地域の特産品などが販売されている
・直売所:JAや自治体などが設置した農作物販売所。消費者に農作物を直接販売できる
・ネット販売:楽天市場やYahoo!ショッピングなどに出店して農作物を販売する
・マッチングサービス:農業者と消費者を直接つなぐサービス。消費者に直接販売できる

売れないというリスクも存在しますが、利益率を高めるための新たな取り組みとして検討しても良いでしょう。

06農業コンサルティング以外の新しい取り組み

農業経営を改善する方法には、主に次のような取り組みがあります。

・6次産業化に取り組む
・補助金を活用する
・スマート農業を導入する

農業コンサルティングを利用して取り組むことも一つの方法ですが、その前に、まずは「自分で始められることはないか」検討してみましょう。

6次産業化に取り組む

6次産業化とは、農家が生産だけでなく加工・流通・販売にも取り組むことで、農作物の価値を高めることです。6次産業化が成功すれば、事業を拡大でき利益向上が期待できます。

6次産業化の一例には次のような内容があります。
・自社農作物のうち規格外の果物を利用してスイーツを製造・販売する
・自社栽培の野菜を売りにしたレストラン経営をする
・観光農園の運営や自社農産物を利用した加工品を販売する

6次産業化に挑戦するには、まずは「もっている知識や技術はなにか」「農作物の魅力はなにか」「どのような人脈をもっているのか」など、自分の農園の強みを考えましょう。

わからないことがあれば、地域に6次産業化サポートセンターや農業改良普及センターなどがないか調べてみて、相談する方法もあります。

補助金を活用する

農業における補助金とは、農業者の高齢化や人材不足、食料自給率の低下などの問題を解決に導くために、国や地方自治体が公募している補助金制度のことです。補助金制度にはさまざまな種類があり、支援内容も設備導入や農地整備など多岐にわたります。

例えば「経営継続補助金」で支援内容の一例を挙げると次の通りです。

・国内外の販路回復・開拓
・事業継続のための生産・販売方式の確立

要件に当てはまる必要がありますが、利用できれば農業経営の支えにできます。気になる方は、農林水産省ホームページの補助事業参加者の公募で、現在募集されている補助金制度を確認してみてください。

スマート農業を導入する

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどのデジタル技術を活用した農業のことです。導入すれば、少ない人材で大規模な農業の実現や、データ活用による高度な農業を実施できます。

スマート農業の一例は次の通りです。
・自動走行トラクター:耕うん整地を無人で実施できる
・自動運転田植機:旋回も含めて自動で田植えができる
・ほ場水管理システム:水田の水位などをモバイル端末で遠隔または自動制御ができる
・ソーラーシェアリング:営農している上部空間で自家消費や売電用に発電ができる

スマート農業は、これからの農業のあり方を変革させると言われています。スマート農業について知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

関連記事これからを変える「スマート農業」とは?導入の目的と事例

07まとめ|農業コンサルティングと新しい取り組み両方を視野に入れよう

農業コンサルティングを有効活用するには、明確な目的意識を持つことが重要です。まずは、どのような点に問題を感じて、今後どのように営農を行なっていきたのかを明確にしましょう。

また、農業コンサルティングを利用する前に「自分でできることはないか」を考えてみることも大切です。新しい取り組みでできることはないか、活用できる補助金はないかなどを検討してみましょう。

【参考】
農業コンサルティング(税理士法人 畠経営グループ)
農業コンサルティング(税理士法人 風神会計事務所)
6次産業化とは(農林水産省)
6次産業化を進めるためのヒント(6次産業化サポート手法検討委員会)
奥平謙太郎「経営の「見える化」のお手伝い」(農林中金総合研究所2020年11月)
村上一幸「見えない農業経営課題に経営診断を活用」(AFC Forum 2017年5月)
料金表(前之園行政書士事務所)
経営継続補助金(農林水産省)
営農型太陽光発電について(農林水産省)
スマート農業の展開について(農林水産省)

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