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農業は副業にならない?副業農家(兼業農家)の実態

農業を副業にすることは可能であり、本業とは別で年に数十万円〜数百万円を稼いでいる農家は存在します。しかし、副業農家として収入を得ていくには、作物選びや 販売方法などに工夫が必要です。

本記事では、農業を副業にしている農家の年収や経営体数、労働環境など、副業農家の実態について解説します。

また、副業農業の始め方やおすすめの農作物、販売ルート、活用できる補助金、確定申告についても解説します。そのため、趣味感覚で農業を始めてみたい方から本格的に農業で収益を得ることをめざしている方まで、役立つ内容になっています。

メリット・デメリットについても解説しているため「副業で農業を始める前に良い面も悪い面も両方知っておきたい」方は、ぜひ参考にしてください。

01農業は副業にならない?副業農家(兼業農家)の実態

まずは、農業を副業にしている農家の実態を理解するために、平均年収や経営体数、労働環境などを解説します。

なお、農林水産省は、本業を持ちつつ農業を副業にしている農家を次のように分けています。(兼業農家という区分は2020年に廃止)

・準主業経営体:農業以外の収入が主であり、自営農業に60日以上従事している世帯員(65歳未満)がいる個人経営体
・副業的経営体:自営農業に60日以上従事している世帯員(65歳未満)がいない個人経営体

平均年収

2007年の資料ではありますが、農業を副業にしている農家(個人経営体)の年収は次の通りです。

・準主業農家(準主業経営体):年収592万円(農業所得48万円)
・副業的農家(副業的経営体):年収445万円(農業所得32万円)

農業を副業にしている農家の農業所得は、所得収入全体の1割ほどであることがわかります。では、次に農業を副業にしている農家の近年の農業所得を推測するために、農家の販売金額データを参考にしてみます。

農林水産省の2020年農林業センサスを参考にすると、全国の農業を副業にしている農家の販売金額別経営体数は次の通りです。

販売
なし
50万円
未満
50〜
100万円
未満
100〜
300万円
未満
300〜
500万円
未満
500〜
1,000万円
未満
1,000〜
3,000万円
未満
3,000万~
1億円
未満
準主業経営体

264

46,951

33,714

41,779

10,841

6,500

2,158

304

副業的経営体

91,511

227,948

127,506

129,963

40,143

30,940

13,599

2,177

出典:2020年農林業サンセス 農産物販売金額規模別経営体数 (農林水産省)を元にRe+編集部作成

グラフや表を参考にすると農業を副業にしている農家の多くは、50300万円の販売額であるのがわかります。経費7割と仮定して販売価格から農業所得を計算すると、15万円〜90万円が農業を副業にしている農家の平均農業所得であると推測できます。

農業を副業にして大きな収入とするには、それだけ本格的に経営する必要があるといえるでしょう。

経営体数

農林水産省の2020年農林業サンセスを参考にすると、農業を副業にしている農家(個人経営体)の数は次の通りです。

上記グラフを参考にすると、農業個人経営体数全体では減少していますが、副業的経営体として農業に携わる人の割合は増えていることがわかります。

労働環境

農業を副業にしている農家の働き方はさまざまな形があります。
一例を挙げると次の通りです。

・週末農家:土日を中心に農作業をする
・半農半X:週3日はサラリーマンで2日は農家など、本業とは別で本格的に農業を行う
・家庭菜園:自宅の庭などで農作物を育てる
・アルバイト・パート:自分の農地を持つのではなく、農家に雇われて農業を副業にする

では、農業を副業にしている方々は、どれくらいの日数を農業に従事しているのでしょう。

農林水産省の2020年農林業サンセスを参考にすると、農業を副業にしている農家の労働日数は次の通りです。

1〜29日
30〜59日
60〜99日
100〜149日
150〜199日
200〜249日
250日以上
準主業経営体

105,681

37,214

86,870

57,296

40,451

26,950

47,445

副業的経営体

469,064

270,849

140,761

129,588

116,914

110,672

204,184

出典:2020年農林業サンセス 自営農業従事日数階層別の農業従事者数(農林水産省)を元にRe+編集部作成

表やグラフを参考にすると農業を副業にしている農家の年間の労働日数は、129日が最も多いですが、その他は全体的にばらつきが見られる結果となりました。

02農業の副業の始め方

副業で農業を始める方法は次の通りです。

・自分の農地で始める
・市民農園やシェア畑で始める
・地主から農地を借りる

それぞれ解説します。

自分の農地で始める

もし親から相続した農地があればいつでも農業を始められます。農業機械や施設、販売ルートなども引き継ぐのであれば、なお始めやすいでしょう。

しかし、放置された農地だけを受け継いだのであれば、農業機械や施設、販売ルートなどあらゆる準備が必要で、農地を耕す必要もあります。また、農業はさまざまな技術や知識が必要です。可能であれば親や知人から、農業の技術や知識を教えてもらうと良いでしょう。

農業の知識や技術を教わる人がいない方や事業として本格的に農業を行う方は、国や自治体などが実施している補助金制度や研修を利用するのも一つの方法です。

また、農地を有効活用し安定的な収益確保と燃料代の削減のために、営農をしながら上部空間で発電をするソーラーシェアリングを導入する方法もあります。こちらも国が導入の補助金などを用意しているため、一度検討しても良いでしょう。

ソーラーシェアリングが注目されている理由を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

関連記事注目のソーラーシェアリング。導入件数増加の理由とは?

市民農園や貸し農園で始める

手軽に副業で農業を始めたい方は、市民農園や貸し農園を利用すると良いでしょう。

市民農園とは、都市の住民が小面積の農地を借りて農作物を育てる農園のことです。この契約した農地で収穫された農作物は、自家消費量を超える分のみ販売が可能です。ただし、農具などは自分で用意する必要があります。

市民農園はレクリエーションや健康のために利用するものであり、営利目的で利用する農地ではないため基本的に自家消費のために利用しましょう。

貸し農園は手ぶらで通える農地のレンタルサービスで、必要な農具や資材、種・苗など農業に必要なものすべてが料金のなかに含まれています。営利目的のサービスではないため、農業で収益を上げるというより自家消費用の農作物を得ることと、農業の技術や知識を学ぶために利用すると良いでしょう。

地主から農地を借りる

副業で農業を始めるために地主から農地を借りる方法があります。しかし、個人が農地を借りて農業を始めるには、一定の要件をクリアして農業委員会から許可を得る必要があります。

農地を借りるために必要な要件の一例は次の通りです。

・機械や労働力などを効率的に利用する営農計画を持っている
・農地取得者が年間150日以上農作業に従事する
・農地面積の合計が原則50a以上である(令和5年4月から農地法の下限面積要件が緩和されます)
・水利調整や農薬などで地域に迷惑をかけない

週末農家などの副業レベルでは、農地を借りる条件をクリアするのは難しいです。地主から農地を借りて農業を行う場合は、事業として本格的に農業を始めたい方が向いているでしょう。

03農業の副業におすすめの農作物

農業を副業とする場合 や週末農家では、農業に従事するタイミングや時間に限りがあります。
そのため、次のような特徴をもつ農作物がおすすめです。

作物例
特徴
メリット
しいたけ・ミョウガ・タラの芽・アスパラガス・単価が高い
・比較的手間がかからない
・少ない収穫で収益を上げやすい
さつまいも・じゃがいも・里芋・ビーツ・土の中で育ち、水やりの頻度が少ない・手間がかからない
・肥料が少なくて良い
・収穫タイミングが長い
ナス・トマト・オクラ・枝豆・狭い範囲でも始められる
・一つの苗からたくさん収穫できる
・スペースが狭く住むため市民農園や貸し農園、家庭菜園などで育てやすい
・定番野菜で広く販売可能
えごま・パセリ・つるむらさき・半日陰でも育つ
・多収穫
・手間がかかりにくい
・少し珍しいので隙間をぬって販売しやすく栄養価も高い

上記はあくまで一例です。気候や土壌などに合う農作物を選択しましょう。

04農業の副業で収穫した野菜の販売ルート

副業農業で収穫した野菜の販売先は次の通りです。それぞれメリット・デメリットを解説します。

メリット
デメリット
直売所
・自由に価格設定をできる
・直売であるため高単価で販売ができる
・売れないと利益が発生しない
・利用料が必要な場合もある
JA(農協)
・JAが買い取ってくれるためすぐに収益が上げられる
・安定して収益を得られる
・売上の見通しが立てられる
・規格が厳しい
・買取価格が自由に決められない
ネット販売
・自由に価格設定できる
・SNSやブログにより集客できる
・差別化など工夫が必要である
・売れないと利益が発生しない
知人に販売
・気軽に販売ができる・高単価では売りづらい

05農業を副業にするメリット

農業を副業にするメリットは次の5つです。

・新鮮な農作物が食べられる
・自然との触れ合いでストレスを発散できる
・ビジネスとして確立できる可能性がある
・地域活性など社会貢献につながる
・自分のペースで農業を始められる

それぞれ解説します。

新鮮な農作物が食べられる

副業で農業を行えば、自分で作った新鮮な野菜が食べられます。自分で作った野菜を食べるという感動は農業ならではです。野菜の購入費も抑えることができます。

自然との触れ合いでストレスを発散できる

自然との触れ合いは、日頃デスクワークなどをしている方などであれば、ストレス発散につながります。運動不足の解消にもなるため、健康の維持・増進にも良いでしょう。こだわりの野菜を作ったり友人にお裾分けしたりと、生きがいや楽しみ作りにもなります。

ビジネスとして確立できる可能性がある

趣味として細々と農作物の販売を行うだけなく、大きなビジネスとしてスケールアップすることができます。そのためには、農業技術や知識だけなく、経営に関しても十分に学ぶ必要があります。起業する場合は、収穫が軌道に乗り十分な収益が発生してからにしましょう。

地域活性など社会貢献につながる

地方の農業は、人手不足や耕作放棄地などの問題があります。自分で農地を手に入れて農業を行なったり、農家の手伝いをしたりすることで、それらの問題解決の手助けとなれます。農家同士のつながりや農業体験といった取り組みによる新たな人との出会いも、副業で農業をするメリットといえるでしょう。

自分のペースで農業を始められる

副業の農業は、主軸の収入となる本業があるため、農業で稼がなければならないというプレッシャーがありません。そのため、週末だけ稼働して、自分のペースで農業を始めることができます。肉体的・精神的な余裕を持ちながら楽しめるのも副業を農業にする魅力です。

06農業を副業にするデメリット

農業を副業にするデメリットは次の3つです。
・初期投資が高額である
・作物が不作になるときがある
・定期的な作業が必要である

それぞれ解説します。

初期投資が高額である

副業として農業で収益をあげるためには、農地や農機具、人員などの準備が必要となり、初期費用が高くなります。維持費などもかかるため計画的な準備が必要です。国が農機具や設備に対する補助金・助成金などを用意しているため、利用の検討をしても良いでしょう。

作物が不作になるときがある

農業は自然を相手にする仕事であるため、台風被害や気候変動、管理不足などにより不作となる可能性があります。天候のコントロールはできませんが、事前に気象情報を確認して対策をしたり、害虫や害獣対策をしたりする工夫を行いましょう。

定期的な作業が必要である

農作物は日々成長するため定期的な作業が必要です。
作業をする際は以下のような点を確認する必要があります。 

・水は十分であるか
・生育に問題はないか
・雑草は生えていないか
・害虫が発生していないか
・病気が生じていないか

また、収穫時期が早すぎたり遅すぎたりすると、売り物にならない可能性があります。収穫のタイミングには特に神経を使う必要があります。本業が忙しい方は、前述で解説した根菜類など、できるだけ手間のかからない農作物を選択すると良いでしょう。

07農業を副業にする際のポイントと注意点

農業を副業にする際は、初期費用を抑えるために補助金を有効活用することや、必要となった場合に確定申告を行わなければなりません。
ここからは、農業の補助金と確定申告について解説します。

補助金を使う

農業を始める際の補助金制度は多数ありますが、今回は就農希望者を対象とした次の2つを解説します。

・農業次世代人材投資資金
・スーパーL資金

農業次世代人材投資資金
農業次世代人材投資資金とは、就農準備資金と経営開始資金に分かれており、農業を始める方に対して、次のような支援をしてくれます。

支援内容
就農準備資金都道府県指定の研修期間で研修を受ける就農希望者に月12.5万円を最長2年間交付する
経営開始資金農業経営開始後、経営が安定するまで月に12.5万円を最長3年間交付する

スーパーL資金
スーパーL資金は、農業経営改善のために必要な資金を個人であれば、原則最大3億円融資してくれる制度です。この資金は、農地取得や施設・機械の導入、人件費などさまざまなことに利用できます。

利用要件の詳細などは、農林水産省日本政策金融公庫のホームページを参照しましょう。

参考:
・就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)(農林水産省)
・スーパーL資金(日本政策金融公庫)

確定申告を忘れない

雇用先から支払われる給与に関しては、企業側が年末調整を行なってくれるため確定申告は基本的に必要ありません。しかし、農業などの副業で年間20万円以上の収入が発生した際は、確定申告が必要です。

農業の所得は事業所得に分類され、計算方法は次の通りです。

・「総収入金額必要経費=所得金額」

収入が発生した翌年の216日から315日の間に、必ず確定申告をしましょう。

また、例え副業の年収が20万円以下であっても、住民税の申告は必要です。収入があった翌年の315日までに区役所の税務課で申告を行いましょう。

08まとめ 農業の副業で稼ぐには作物選びと販売方法に注意しよう

農業を副業にすることの良さは、自家消費や気分転換として楽しむだけではありません。軌道に乗せることができれば収入の柱にできます。

そのためには、育てやすくて単価が高い作物を選ぶことや、時間配分・販売方法の工夫が必要になります。本格的に始めたい方は、補助金や研修制度などを利用して、十分な準備を行いましょう。

【参考】
用語の説明(横浜市)
主副業別統計区分の見直し(案)(農林水産省)
農林水産省 大臣官房統計部経営・構造統計課センサス統計室「2020年農林業センサス結果の概要(概数値)」(公益財団法人日本農業研究所)
気になる農家の「手取り収入」は?(ダイヤモンド社)
農業構造及び所得の動向(農林水産省)
2020年農林業サンセス 農産物販売金額規模別経営体数 (農林水産省)
2020年農林業サンセス 主副業別経営体数(農林水産省)
2020年農林業サンセス 自営農業従事日数階層別の農業従事者数(農林水産省)
農業経営力や指導力強化のための各種研修について(農林水産省)
新規就農者育成総合対策(農林水産省)
農業を始めるには~手続き等について~(農林水産省)
都市農業の振興・市民農園について(農林水産省)
市民農園の整備の推進に関する留意事項について(農林水産省)
個人が農業に参入する場合の要件(農林水産省)
就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)(農林水産省)
スーパーL資金(日本政策金融公庫)
事業所得(営業等・農業)第一表(国税庁)
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)
市民税・県民税の申告について(横浜市)

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