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農業の人手不足はこうやって解決する!解決に向けた取り組みをご紹介

「農業は重労働」というイメージから農業業界では新たな働き手が見つかりにくく、人手不足の問題を抱えています。就農者が減ると日本の食料自給率が低下するだけでなく、荒廃農地の増加につながり、雑草の繁茂や病害虫が発生など、近隣環境に悪影響が出る恐れもあるでしょう。

人手不足な中で「雑草・病害虫」や「近隣環境」への対応に追われれば、他の作業に充てる時間を確保できなくなります。すると、さらなる人手不足に陥り、負のスパイラルを繰り返すことになりかねません。

そこで今回は、農業業界における人手不足の実態や原因を踏まえ、日本の農業が抱える人手不足問題の解決に向けた取り組みをご紹介します。

01農業における人手不足の実態

まずは、「就農人口の推移」や「技能実習生受入数の推移」を踏まえ、日本の農業が直面する人手不足の実態について解説します。

就農人口の推移

農林水産省の「農業労働力に関する統計」によると、基幹的農業従事者の推移は以下の通りです。

● 2015年…175.7万人
● 2021年…130.2万人

上記を比較すると、6年で30%もの農業従事者が減っているとわかります。
ただし、2015年は全数調査で実施した農林業センサスに基づき算出した数値であり、2021年は農業構造動態調査の結果であるため、双方ともに推定値です。

調査方法が異なる2つのデータを比較しているものの、2015年から2021年にかけて就農人口が減少しているのは確かです。また、新規就農者数も、2014年の約5.7万人が2021年には約5.2万人に減少しています。

技能実習生受入数の推移

外国人技能実習制度とは、発展途上国から労働者を受け入れ、日本での仕事を通じて技能や技術を学び、母国の経済発展に寄与してもらう制度です。下図においてベトナムやインドネシアからの技能実習生の職種を見ると、食品製造関係や建設関係、機械・金属関係が多くの割合を占めます。

特に就業割合の多い職種は「建設関係(全体の20.8%)」や「食品製造関係(19.5%)」です。

一方で、農業関係は9.6%と他の職種に比べるとあまり高くはありません。農業の人手不足解消のためには、外国人技能実習生にも農業への関心を高めてもらう必要があるといえます。

図1:外国人技能実習生 職種別計画認定件数
出典:外国人技能実習機構(OTIT)

02農業における人手不足の原因

就農人口は年々減り、人手不足は深刻な問題となっています。続いては、「就農者の減少」や「農業への新規参入者が少ない」原因について見ていきましょう。

労働条件

就農者が減少を続ける原因として、曖昧な労働条件が挙げられます。一般的なビジネスパーソンは勤務時間や給与形態が明確な傾向にあるでしょう。

一方就農者の場合には、有給休暇や労働時間の管理、人材育成評価の仕組みといった労働条件が定められていないケースも見受けられます 。

また、外作業が多い農業の場合、高温期や寒冷期には過酷な環境下での作業になりがちです。さらにはトイレなどの衛生環境が未整備の場合もあるでしょう。そのため、やり方次第で儲かるビジネスだと考え就農しても、実際に仕事をすると「想像以上の重労働で、続けるのが難しい」と判断して辞める人が多いのです。そもそも、仕事の選択肢にすら入らないケースも想定されます。

地方における人口減少・高齢化

日本全体において人口減少や高齢化が課題として叫ばれる中、農地の多い「地方」では、その傾向がより強く見受けられます。人口減少および高齢化によって、働き盛りの若者が減るため、そもそも「働く人がいない」ことも就農人口減少の原因です。大勢の人が暮らす都市部でさえも働き手は少なく、雇用主は人手不足に悩む現状であり、地方であればなおさらでしょう。人口の少ない地方では他の職業との競争も激しくなり、農業の働き手を確保するのは容易ではありません。

不安定な仕事量

農業における人手不足の原因には、仕事量の不安定さも関係しています。農業は1年を通して安定した作業量があるわけではなく、限られた時期にのみ多くの労働力が必要です。

土地を整地する耕耘(こううん)や種まき、収穫などの時期以外は、作業量が減る傾向 にあり、仕事の安定性に欠けます。また、季節ごとに繁忙期・閑散期があり、年間を通して常に仕事があるわけではない点も、人手不足が深刻化する要因の一つです。

一方で、短期的な農業従事者は増加傾向にあります。背景には、アプリなどで簡単に申し込めるといった「入口のハードルが低くなった」ことや、働き方の多様化による「都合のよいタイミングで働きたい人」とのマッチなどが挙げられます。

また農業は単純作業だけでなく、専門知識や技術を要する場面も多いでしょう。必要な知識やスキルをもつ人材を、短期雇用者で確保することは容易ではありません。

人材確保のためには、農業を安定した職として整備し、継続して従事してもらえるよう、努力する姿勢が欠かせないでしょう。

03人手不足解消のために必要なこと

続いて、農業の人手不足解消のために何をすべきかについて、具体例を挙げて解説します。

農地集約・大規模化

人手不足解消のためには、「オーナーごとに細分化された農地」を集約する方法があります。規模の拡大を図ることで、機械の導入もしやすくなるため、作業の効率化を目指せるでしょう。農林水産省においても全国に農地中間管理機構の設置を進めており、点在した農地・耕作放棄などを借り上げたうえで、拡大を目指す農家へ転貸しています。

また、農地集約・大規模化に伴い、法人化する動きも高まっています。農林水産省によると法人経営体の数は2010年(平成22年)の2.2万人から、10年後の2020年(令和2年)には3.1万人にまで増加しました。

法人化の動きが加速する背景には、社会からの信用度が高まることで、集落営農組織の時よりも金融機関から融資を受けやすくなる点が挙げられます。融資を受けることで、設備導入や農地拡大が期待できるでしょう。

図2:法人化している農業経営体数
出典:2020年農林業センサス結果の概要(農林水産省)

スマート農業・農業DX

ロボット技術やICTを活用するスマート農業・農業DXも、人手不足解消を担ってくれる存在です。例えばスマートフォン一つで農地を管理できると作業が自動化できるため、労働力の削減につながるでしょう。

また、位置情報と連動したアプリを活用すれば、作業記録の自動データ化が叶います。自動化ができれば、農業の熟練者でなくとも、品質の維持が期待できます。新規参入者の増加はもちろんのこと、熟練者の作業を減らせるため、人手不足の補填材料になる可能性が大いにあるでしょう。

ほかにも、ドローン・衛星から取得した生育データや気象データなどをAI解析することで、作物の生育や病虫害の発生可能性などを予測することが可能になります。適切な予測によって、従来よりも高度な農業経営が期待できます。

労働条件・就労環境改善

就農者を増やすには、労働条件や就労環境の整備も大切です。トイレや更衣室などの衛生管理はもちろんのこと、「給与形態の 明確化」や「年間作業量の標準化」など、働きやすい職場環境づくりが欠かせません。

農業の特性を活かして「労働時間を短くする」「休暇を取りやすくする」などの工夫をすれば、就農希望者へのアピール材料にもなり得るため、人材確保のしやすさにつながります。

農業の働き方改革

現在、あらゆる職業で取り組みの進む働き方改革ですが、農業においても新しい働き方が生まれています。その一つが近年注目されている半農半X(はんのうはんエックス)です。

半農半Xとは、農業とそれ以外の仕事や趣味を両立する考え方を指します。つまり、半農半Xが目指すものは、「自分が欲しい分だけを少し作る」という小さな農業であり、専業農家でも兼業農家でもない別の存在だといえます。

半農半Xはビジネスを目的としていないために生産性は低いものの、「就農者が増えるきっかけになる」として、農林水産省や自治体による支援も始まっています。

04人手不足解消に向けた具体的な取り組み

ここでは、人手不足解消のために実際に行われている取り組みをいくつか紹介します。

スマート農業・農業DXによる生産性向上

スマート農業・農業DXに取り組み、生産性アップや省力化を実現している事例は数多く見受けられ ます。農林水産省の調査結果によると、2021(令和3)年度には水田作で38事例、畑作で13事例、果樹で7事例が報告されています。

【具体例】
・AIシステムによる農作業の効率化
・ドローン散布機による水稲管理作業の省力化
・水田センサーによる管理作業の省力化

上記のようなスマート農業・農業DXの導入により効率アップや省力化が実現し、少ない人員でも対応できる農家が増えています。つまり、スマート農業・農業DXによって生産性が向上すれば、人手不足が叫ばれる世の中でも「満足度の高い農業」を実施できる可能性が高まるでしょう。

全農おおいた方式

全農おおいたでは、人材不足解消に向けて労働力支援事業を行っています。労働力支援事業とは地域の労働力不足解消のために、臨時的従事者を都市部から移動させる動きです。

日雇いのため「働きたい時にだけ参加できる」というハードルの低さから、多くの人が気軽に農業へ関われるようになります。また、「体験的に参加できる」や「合わなければ、翌日以降は来なくてもよい」といったスタンスであるため、農業未経験であっても気軽に働けることが特徴です。大学生や主婦層やフリーター層などが参加しており、人手が必要な時期に人手不足で悩む農家をサポートしています。

産地間人材リレー

産地間人材リレーとは農業経営者と外国人就労者をサポートする活動です。店舗流通ネット株式会社が2019年より行っており、繁忙期が異なる日本全国の産地において、時期が入れ替わるタイミングで労働力を次につなげています。

例えば、4~10月は長野県で働き、11~3月は長崎県に移動することで、長野県も長崎県も繁忙期の忙しい時期に労働力の確保が可能になります。一方で、両県ともに閑散期には人材を抱える必要がありません。また、外国人就労者にとっても1年を通して安定した就労ができ、双方にとって大きなメリットになり得るでしょう。

行政職員の副業解禁

青森県弘前市では、農業の人手不足解消のために「行政職員のリンゴ園での副業」を許可しています。農業の中でも労働力を要する時期が集中する果樹栽培では、収穫シーズンの人手不足が深刻化しています。

近隣住民の高齢化が進み手伝いをお願いできる人がいない中、弘前市役所職員のリンゴ生産に関わる副業が解禁されました。休日や終業後にアルバイトとして働き、労働力不足解消の一手となっています。

ソーラーシェアリング導入事例

人手不足解消に向けた具体的な取り組みとして、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入が挙げられます。ソーラーシェアリングとは農地に支柱を立て、太陽光パネルを設置することで、農業生産と発電を両立する取り組みです。

農地での収入に加え、売電による収入増加や電力の自家使用によるエネルギー抑制により、農業者の収入拡大や安定化が期待されます。収入が増えれば「農地の大規模化」や「新たな設備導入」も可能になるでしょう。また、安定した収入は労働者を雇用しやすくなるというメリットもあります。

ソーラーシェアリング事業をきっかけに農業への新規参入を行う企業もあり、農家が抱える人材不足の解消が期待されます。

ソーラーシェアリングの基本的な内容やメリットなどに興味のある方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。

関連記事馬上丈司さんに聞く!自らソーラーシェアリングを実践する理由とは?

05まとめ

今回は、農業が抱える人材不足問題について紹介しました。人材不足解消のために国や行政、企業が様々な取り組みをしているものの、今なお就農者の人口は減り続けています。

労働条件や就労環境の明確化、AIによる自動化の促進はもちろんのこと、農業人口を増やすべく安定した収入も必要です。

ソーラーシェアリングを導入し安定収入が確保できれば、スマート農業への投資や雇用拡大につながるといった好循環も期待できるでしょう。ソーラーシェアリングは「増加する耕作放棄地の活用」や「エネルギー自給率の向上」など、あらゆる社会問題を解決へと導く可能性もあります。

今回紹介した取り組みをヒントにし、人手不足解消にチャレンジされてはいかがでしょうか。

【参考】
農業労働力に関する統計(農林水産省)
農林中金総合研究所「人手不足に直面する地域農業の課題と人材確保対策」(農林水産省)
2020年農林業センサス結果の概要(農林水産省)
スマート農業(農林水産省)
スマート農業の展開について(農林水産省)
農業新技術活用事例(令和3年度調査)(農林水産省)
半農半Xや農村地域づくり事業体等をサポートする者について(農林水産省)
労働力支援の取り組み(全農大分県本部)農業経営者と外国人就農者の不安を解消した「産地 間人材リレー」 特定技能外国人のUターン就労を実現
河北新報「リンゴ農家での職員のバイト認める 弘前市、人手不足解消へ」

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