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2024.6.13

【農家向け】JGAP認証とは?メリットや取得の流れ、事例を紹介

JGAP認証とは、安全かつ効率的に持続可能な農場運営を行うための基準を満たした農場や団体に与えられる認証です。作業の効率化やリスク低減、従業員の意識と意欲の向上、外部からの信頼獲得など様々なメリットがあるため、注目している方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、JGAP認証について、定義やASIAGAPとの違いを解説した上で、取得するメリット、取得までの流れを紹介します。あわせて、JGAP認証を取得した農場の事例も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

01そもそもGAPとは

そもそもGAP(ギャップ)とは、農業⽣産の各⼯程の実施、記録、点検および評価を行うことによる持続的な改善活動のことです。「Good Agricultural Practices」の頭文字をとっており、直訳すると「良い農業の取り組み」ですが、一般的には「農業⽣産⼯程管理」と呼ばれています。

また、農林水産省は「⾷品安全」「環境保全」「労働安全」「⼈権保護」「農場経営管理」の5分野を対象として普及を推進しています。

なお世界にはさまざまなGAP認証がありますが、日本で普及しているのは、JGAP、ASIAGAP、GLOBAL G.A.P.の3種類です。

02JGAP認証とは

JGAP認証とは、安全かつ効率的に持続可能な農場運営を行うための基準を満たした農場や団体に与えられる認証です。JGAPは「Japan Good Agricultural Practice(日本の良い農業の取り組み)」の頭文字を取っています。2005年にスタートした日本における標準的なGAPといえます。運営主体は、一般財団法人日本GAP協会です。

なお、農場とは「個人農家や農業生産法人といった1つの農業経営体」、団体とは「団体事務局を中心に複数の農業経営体が集まり農場を管理する企業など」を指しています。

03JGAPとASIAGAPの違い

日本GAP協会が運営しているGAP認証には、JGAPの他にASIAGAPがあります。JGAPとASIAGAPの違いは、GFSI(世界食品安全イニシアティブ)の承認を得ているか否かです。GFSIとは、食品関連のグローバル企業で構成される組織CGFの傘下組織であり、食品安全の向上と消費者の信頼確保を目的に食品安全管理規格の承認などを行っています。このGFSIによる承認を、JGAPは得ておらず、ASIAGAPは得ています。

対象とする生産物にも以下のような違いがあります。

  • JGAP:青果物、穀物、茶、家畜・畜産物
  • ASIAGAP:青果物、穀物、茶

また、ASIAGAPはJGAPの内容に加えGFSI要求事項を追加しているため、JGAPの管理点(遵守すべきポイント)は約130項目なのに対して、ASIAGAPの管理点は約170項目あります。

そのため、日本国内に留まらずアジア圏までの展開を視野に入れている場合は、ASIAGAP認証が適しています。一方で国内のみで生産・販売を行う場合は、管理点が少ないJGAPで十分といえるでしょう。

04JGAP認証を取得するメリット

JGAP認証を取得するメリットは、以下の5つです。

生産面・労働面に関するリスクを低減できる

JGAP認証の取得を通じた適切な農場管理の導入により、生産する農産物の安全性が高まるのはもちろんのこと、労働事故防止など労働面におけるリスク低減にもつながります。

農場管理作業の効率化を図れる

JGAP団体認証の技術により、農場管理作業の効率化を図ることが可能です。現状の作業プロセスを客観的な視点で見直すことで、気づきにくい非効率性を発見し、是正するチャンスを得られます。

従事者の意識と意欲が高まる

JGAP認証の取得に向けた労働環境改善や作業効率化によって、従事者の意欲と意識が共に高まることを期待できます。

消費者やバイヤーの信頼を得やすくなる

JGAP認証を取得すれば、信頼できる農場であることをバイヤーや消費者へアピールできます。日本GAP協会は、消費者やバイヤー向けにロゴマークなどを用いてJGAP認証の認知アップを図っています。

農林水産省でもJGAPを含むGAP認証の取得を推奨・推進しており、GAP認証農産物を積極的に取り扱う意向をもつ事業者を「GAPパートナー」として登録する取り組みもあります。例えば、イオン、株式会社イトーヨーカ堂、日本マクドナルド株式会社、日本コカ・コーラ株式会社、株式会社ローソン、株式会社伊藤園など多数の大手企業が登録しています。

SDGsを実践できる

JGAP認証の取得を通じて、SDGsの目標達成に貢献できます。JGAPは、食品安全だけでなく「環境保全、労働安全、人権・福祉の要素を含み持続可能な農業に資するもの」と位置づけられています。また農林水産省も、GAPとSDGsはいずれも持続可能性を目指す点において近い関係にあり、GAPに取り組むことで、SDGsの達成に貢献できることを示唆しています。

05JGAP認証を取得するまでの流れ

JGAP認証を取得するまでの流れについて解説します。なおJGAP認証には、農場を対象とする「個別認証」と、団体を対象とする「団体認証」がありますが、基本的な流れは変わりません。

具体的には、以下の流れで進めます。

「管理点と適合基準」を入手する

まずは、日本GAP協会から「管理点と適合基準」を入手します。日本GAP協会のWebサイトからダウンロード可能です。ただし、「農場用」と「団体事務局用」に分かれているため注意しましょう。
参照先:基準文書類(一般社団法人日本GAP協会)

各基準をもとに現状を把握する

入手した「管理点と適合基準」を基に、できている部分とできていない部分を把握します。必須項目は100%の適合、重要項目は95%以上の適合が求められます。

なお団体で取得を進める場合(団体認証の場合)は、各管理点について、団体事務局と団体に属する農場のどちらが担うかを明確にしておきましょう。

生産手順を改善する

「管理点と適合基準」に基づき、生産手順の改善を進めます。その際、帳票を揃えて、運営記録を残します。目安として、審査の3か月以上前から取り組み始めるようにしましょう。

具体的には、下記ステップ1~5を繰り返しながら改善を図ります。
農場向けと団体向けの2パターンがあります。

■JGAP認証取得に向けた改善5ステップ(農場向け)

ステップ1:農場内の責任分担の明確化
ステップ2:生産環境の確認とリスク検討
ステップ3:「農場管理の作業手順」づくり
ステップ4:ルールの周知徹底と従業員教育
ステップ5:記録と検証と自己点検

■JGAP認証取得に向けた改善5ステップ(団体向け)

ステップ1:団体・農場管理マニュアルの配布、実行、周知徹底
ステップ2:内部監査計画と準備
(内部監査員・内部監査補佐役の選定、内部監査チェックリストの作成、監査の目揃い)
ステップ3:内部監査の実施 (農場・団体事務局)
ステップ4:内部監査指摘項目の是正
ステップ5:是正の確認

必要に応じて研修や指導を受ける

必要に応じて、研修や指導を受けることが可能です。いずれも日本GAP協会が機会を提供しています。

研修については、「JGAP指導員 基礎研修」「団体認証研修」「JGAP新旧差分研修」などが用意されており、いずれもオンラインで受講可能です。受講料は3万円~5万円程です。

指導については、日本GAP協会Webサイトの専用ページから、全国のJGAP指導員を検索できます。連絡先を公開している指導員に対して、取得に向けた指導を依頼することも可能です。指導料は依頼先で異なりますが、5万円~8万円ほどで設定しているケースが多いようです。

参照先:
研修について(一般社団法人日本GAP協会)
指導員検索(一般社団法人日本GAP協会)

審査の申し込みを行う

各管理点の達成が見込めるようであれば、審査を申し込みましょう。認証機関は、日本GAP協会Webサイトの専用ページに掲載されています。審査費用は、団体規模や品目数などによって異なるため、各認証機関への見積もりを依頼の上、検討しましょう。

参照先:審査申込(認証機関一覧)(一般社団法人日本GAP協会)

審査に合格できれば取得完了

全ての管理点が審査され、それぞれ「適合」「不適合」「該当外」いずれかの評価を受けます。「不適合」の指摘を受けた項目があれば改善し、是正報告書を認証機関へ送付します。その上で認証機関が判定を行い、合格基準を満たした農場および団体に認定証が授与されます。

06JGAP認証農場の事例

JGAP認証農場の事例を3つ紹介します。

ルール整備を通じて従業員の意識改革に成功

肉用牛の牧場を運営するZ社は、農場HACCPの取得をきっかけに、環境整備や労働安全、食品安全に対する意識向上の必要性を感じて新たにJGAP認証の取得を進めました。JGAP認証取得により、以前は指示通りにこなすだけだった従業員が、作業ルールを自らで作る過程を通じて業務にプライドを持って取り組むようになりました。

また、ルールを基に業務内容や労働環境を見直す機会が増えたことで、より働きやすい環境が整いつつあるとのことです。また、牧場視察の際も自信をもって紹介できるようなり、総じて従業員の意識改革につながったと述べています。

SDGsへの貢献と販路拡大に成功

E社は、リンゴをメインに様々な青果や野菜の栽培を手掛けています。「顧客に安心・安全を提供したい」「SDGsに貢献したい」という想いと自分たちの意識改革を兼ねてJGAP認証の取得に取り組みます。そして、取得に向けた取り組みを通じて従業員の意識やモチベーションの向上を実現しました。

販売面においては、取引先の協力のもとJGAP認証をアピールしたことで、販路拡大にもつながったとのことです。認定取得に至るまでには苦労もあったようですが、意識面や販売面の改善に加えて、農場内の整理整頓といった環境面にも良い影響があったと評価しています。

環境貢献と単価アップ、人に関する課題解決まで

レタスや枝豆、ブロッコリーなどの生産販売を行うS社は、農業者としては初の温室効果ガス計測とその評価結果を示したラベル表⽰により、環境負荷低減に努めています。さらに良い評価結果を得られたレタスは価格が約5円/個上昇したとのことです。

また、「JGAP団体事務局が発行する情報紙での事故事例の共有」「事故ゼロ日のカウント」などを通じて安全意識を醸成した結果、事故件数が5割減少します。さらに、若手の成長や定着化を目的に「社長による勉強会」や「人事評価の見える化」を実施したことで、離職率も大幅に低下しました。

07まとめ|多方面から支持される持続可能な農業を実現するために

JGAP認証とは、安全かつ効率的に持続可能な農場運営を行うための基準を満たした農場や団体に与えられる認証です。取得するメリットとしては、「生産面・労働面のリスク低減」「農場管理作業の効率化」「従業員の意識と意欲の向上」「消費者やバイヤーの信頼獲得」「SDGsへの貢献」が挙げられます。取得までの流れは、5段階で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

消費者やバイヤー、従業員など多方面からの支持を得ながら持続可能な農業経営を実現するためには、JGAP認証が有効といえます。また農業の持続可能性の観点から、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されていることはご存知でしょうか。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力

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【参考】
国際水準GAPの推進について(農林水産省 )
農業生産工程管理(GAP)に関する情報(農林水産省)
導入手順(一般社団法人日本GAP協会)
GAP(農業生産工程管理)をめぐる情勢(農林水産省)
日本GAP協会(一般社団法人日本GAP協会)
JGAP/ASIAGAP(一般社団法人日本GAP協会)
Q&A(一般社団法人日本GAP協会)
Goodな農業! GAP-info(農林水産省)
研修について(一般社団法人日本GAP協会)
指導員検索(一般社団法人日本GAP協会)
認証農場の声 | 認証取得・ロゴ(一般社団法人日本GAP協会)

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