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指定野菜とは?栽培メリットや注意点、ブロッコリー追加の理由を紹介

指定野菜とは、消費量が特に多いことから国が安定した供給が必要と認めた野菜のことです。2026年におよそ50年ぶりにブロッコリーが追加されることであらためて注目されています。また、指定野菜は補てん制度により安定した農業経営を行えるといったメリットなどに関心を持つ方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では指定野菜について、定義や関連用語を整理した上で、指定野菜一覧、ブロッコリーが追加される理由、栽培状況などを紹介します。さらに、指定野菜や栽培するメリットと注意点も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

01指定野菜とは

指定野菜とは、消費量が特に多いことから国が安定した供給が必要と認めた野菜のことです。例えば、キャベツやトマト、だいこん、にんじんなど、14品目(2024年2月時点)の野菜が指定されています。

より厳密には、1966年に施行された「野菜生産出荷安定法」において「消費量が相対的に多く又は多くなることが見込まれる野菜であって、その種類、通常の出荷時期等により政令で定める種別に属するもの」と定義されています。

農林水産省による「指定野菜価格安定対策事業」によって、対象野菜の価格が下落した際には、生産者に対して補給金が交付されます。

また、指定野菜と関連する「野菜指定産地」「特定野菜」については、以下の通りです。

野菜指定産地とは

野菜指定産地は、指定野菜の安定的な出荷を図るために、国が集団産地とすべきと認めた地域のことです。北海道から沖縄県まで、全国で873産地(2024年2月時点)が指定されています。

より厳密には、「野菜生産出荷安定法」において「指定野菜の出荷が行われる一定の生産地域であって、その出荷の安定を図るため当該指定野菜の集団産地として形成することが必要と認められるもの」を、都道府県知事の申し出を受けて、農林水産大臣が指定した産地のことです。

特定野菜とは

特定野菜とは、指定野菜に次いで、国民の消費生活において重要と位置づけられている野菜のことです。例えば、アスパラガスやかぼちゃ、グリーンピース、ごぼうなど、35品目(2024年2月時点)が認定されています。産地からの要請に基づき、都道府県知事が地方農政局長と協議の上で選定しています。

指定野菜と同様に「特定野菜等供給産地育成価格差補給事業」によって、対象野菜の価格が著しく下落した場合には、生産者に対して補給金が交付されます。

02指定野菜の一覧

指定野菜は以下の通り14品目(2024年2月)です。

種別品目
根菜類だいこん、にんじん、ばれいしょ(じゃがいも)、さといも
葉茎菜類はくさい、キャベツ、ほうれんそう、レタス、ねぎ、たまねぎ
果菜類きゅうり、なす、トマト、ピーマン

そして、2026年には、これまでは特定野菜だった「ブロッコリー」が上記一覧へ追加されます。指定野菜の追加に関しては、1974年に「ばれいしょ」が追加されて以来、およそ半世紀ぶりです。

03指定野菜にブロッコリーが追加される理由

指定野菜にブロッコリーが追加される理由は、「野菜のなかでも集荷量および消費量が特に増えているため」です。農林水産省によると、2021年におけるブロッコリーの出荷量は15万5,500トンであり、2001年の7万5,500トンと比較すると、およそ2倍になっています。なお、ブロッコリーの主な産地は、北海道、埼玉県、愛知県、香川県などです。

04指定野菜の栽培状況

農林水産省の「令和4年産指定野菜及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」によれば、2022年における指定野菜の作付面積は合計で15万2,500ヘクタール、出荷量は610.5万トンでした。

作付面積が最も多い指定野菜は、ばれいしょで7万1,400ヘクタール、次いでキャベツの3万3,900ヘクタール、だいこんの2万8,100ヘクタールです。なお、2026年時点に指定野菜として認定されるブロッコリーの同時期での作付面積は1万7,200ヘクタールとなっており、既に指定野菜であるにんじんの1万6,500ヘクタール以上であることが分かります。

出典:併載:令和4年産野菜(41品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)(農林水産省)

05指定野菜を栽培するメリット

指定野菜を栽培する主なメリットは、以下の2つです。

安定した需要を見込める

指定野菜は、消費量が安定して多い野菜を対象としているため、毎年の安定した需要を見込めます。

また、農林水産省は、指定野菜など主要な野菜については、次期分作の需要量、供給量、作付面積に関するガイドラインを策定しています。本ガイドラインの例年の数値を見ても、指定野菜14品目の需要量は高い水準で安定しているため安心です。

価格下落時に補給金を得られる

指定野菜は、農林水産省主導の「指定野菜価格安定対策事業」により、価格が下落した場合には補給金を得られます。

具体的には、販売した野菜の平均販売価額が、平均価格の90%(保証基準額)を下回った場合、「保証基準額と平均販売価額との差額×70~90%」を補給金として交付する事業です。70~90%の数値は、集荷数量に応じて決まります。

06指定野菜を栽培する上での注意点

指定野菜を栽培する上での注意点を3つ紹介します。

事業へ加入しなければ補てん対象とならない

指定野菜価格安定対策事業へ加入しなければ、補給金の交付対象とならないため注意が必要です。

事業への加入条件は、以下の2点です。

  1. 指定野菜を指定産地で栽培している
  2. 「農協、事業協同組合及びその連合会」または「対象野菜の作付面積が2ha以上の者」に該当する

その上で、全国の中央卸売市場、地方卸売市場、JA全農青果センターに出荷した指定野菜のみが対象となります。

なお、加入手続きについては、農協や出荷団体など登録出荷団体を通じて加入する方法と、生産者が農畜産業振興機構へ直接登録して加入する方法の2つがあります。ただし、後者の場合は指定野菜を概ね2ヘクタール以上作付している生産者に限ります。

他農家との差別化が求められる

指定野菜を栽培している農家が多いため、いかに差別化できるかが課題となります。味や品質、価格、安全性など特長をもたせることで、差別化を図りましょう。

差別化の代表的な例としては、有機栽培が挙げられます。有機栽培を行うことで有機JAS認定を取得すれば、有機JASマークの表示が可能となり、食の安全やオーガニックにこだわる消費者に訴求することができます。

有機栽培については、以下の記事で詳細に解説していますので、ぜひ併せてお読みください。

関連記事有機農業(有機栽培)とは?メリット・デメリットや利用できる補助金を解説

連作障害への対策が必要となる

指定野菜を栽培する上では、連作障害への対策が必要となります。

指定野菜を栽培するにあたり、同じ土地で同じ作物を連続して生産しがちです。これにより、収量や品質が大幅に低下する連作障害が生じやすくなってしまいます。

連作障害は、作物の根から出るアレロパシーという生育阻害物質の蓄積もしくは、土壌病害虫が優占化によって生じます。
具体的な対策としては、適切な肥培管理を行った上での土壌改良剤の使用や太陽熱による土壌消毒、 可能な場合は同じ土地に科が異なる作物を約2~3年の輪番で作付けする「輪作」の実施が有効です。

07まとめ|より安定した農業経営の実現を目指して

指定野菜とは、消費量が特に多いことから国が安定した供給が必要と認めた野菜のことです。この指定野菜の安定的な出荷を図るために、国が集団産地とすべきと認めた地域が指定産地です。

指定野菜はキャベツやトマト、だいこん、にんじんなど14品目(2024年2月時点)であり、2026年には「ブロッコリー」が追加されます。1974年のばれいしょ以来およそ半世紀ぶりの追加です。

指定野菜の栽培には「安定した需要が見込める」「価格下落時に補給金を得られる」という2つのメリットがあります。ただし、事業への加入が前提となる点や差別化が求められる点、連作障害への対策が必要な点には注意しましょう。

また、より安定した農業経営を実現するための施策として、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)も注目されています。営農型太陽光発電とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。従来通り農業を営みながら太陽光発電も行うことで、自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることが可能です。高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、そして新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。

下記ページでは、持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。

【参考】
野菜の指定野菜についておしえてください。(農林水産省)
東北地域における野菜指定産地(東北農政局)
野菜価格安定制度(近畿農政局)
野菜に関する情報(北陸農政局)
統計局ホームページ/統計FAQ 07A-Q06 野菜の収穫量及び出荷量(総務省統計局)
ブロッコリー 26年度から「指定野菜」に!立川市の生産者“天候で出来具合決まる苦労多い野菜なのでありがたい”(NHK)
いまやブロッコリーは「重要な野菜」 生産量20年で倍 15番目の「指定野菜」に…何がどう変わる?(東京新聞 TOKYO Web)
併載:令和4年産野菜(41品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)(農林水産省)
需給、ガイドライン、入荷及び価格の見通し等に関する情報(農林水産省)
指定野菜価格安定対策事業の概要(農畜産業振興機構)
指定野菜価格安定対策事業のご案内(農畜産業振興機構)
指定野菜価格安定制度のご案内(農畜産業振興機)
【今さら聞けない営農情報】第35回 連作障害|今さら聞けない営農情報|シリーズ|JAの活動(JAcom 農業協同組合新聞)

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