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ソーラーシェアリング導入前に知っておきたい補助金制度とは?

ソーラーシェアリングは非常に魅力的ではありますが、導入のためのコストが懸念される方もいらっしゃるでしょう。この懸念点を解決するために補助金が設けられていることをご存知でしょうか?

今回は、ソーラーシェアリングの導入を費用面でサポートしてくれる補助金について、 2022年度の内容をもとにご紹介します。2023年度も同様の補助金が組まれる可能性がありますので、補助金の概要を把握し2023年度に備えてみてはいかがでしょうか。

01ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリングは、導入件数の増加とともに注目度が高まっており、興味を持っている方も多いのではないでしょうか。まずは、ソーラーシェアリングがどのようなものなのか、基本的な部分から解説していきます。

農業と発電で太陽光をシェア

ソーラーシェアリングは、同じ土地で太陽光発電と農業を並行して行うことを指します。設備を指して営農型太陽光発電システムと呼ばれることもあります。2013年3月に農林水産省から設置が認められて以降、導入件数が増えています。

ソーラーシェアリングでは、農地の上(数メートルの高さ)に架台を設置して太陽光パネルを設置することにより、上では太陽光発電を、下では農業を同時に行うというように立体的に土地を活用できるので、農業だけの場合と比較し収益の向上が期待できます。

ソーラーパネル設置により日陰が増えると、作物の生育に良くない影響を与えるのではないかと思われることがあります。しかし実際は、適切に遮光することで収穫量が上がる場合もあるのです。作物が成長するために必要な太陽光は作物ごとに決まっているので、たくさん日に当てれば良いというわけでもないことが大きな要因です。

02ソーラーシェアリング導入に必要な費用例

ソーラーシェアリングを導入するためには費用がかかります。続いては、ソーラーシェアリングを導入するために必要となる費用についてみていきましょう。

例えば、農林水産省が紹介している導入事例では、太陽光発電設備の下部にある農地が13aの場合、建設費は約1,600万円となります。パネル自体のコストは550万円で、その他に工事費や架台の費用などを含めると前述した総額になります。

もちろん、パネルの種類やメーカーなどによって費用は異なります。そのため、一概にいくらと算出することはできませんが、あくまでも目安とし、自身が保有する土地で行う場合はどのくらいのコストがかかるのか見積もりを出してもらうようにしましょう。

03ソーラーシェアリングに関する主な補助金

ソーラーシェアリングに関する主な補助金の1つに、環境省が実施する「PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進加速化事業」があります。この公募は既に2022年度分が終了していますが、2023年度に向けて準備をしようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

補助金の概要

「PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進加速化事業」に含まれる、「新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業」がソーラーシェアリングと関係しています。地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業として、営農地などを活用した太陽光発電を導入する際に支援が受けられる仕組みです。太陽光発電設備の導入を促し、経済的なメリットを享受できる環境を整えることが目的となっています。

補助金の概要として、以下の項目を確認しておきましょう。

・予算および交付額
補助金の予算は、2021年度の補正予算である113億5,000万円、2022年度の予算額である38億円です。ソーラーシェアリングに割り当てられる金額は明確になっていません。
補助率は1/2で、補助金の上限は3億円です。
支援を受けるには、以下で詳しく説明するコスト要件を満たす必要があります。

・補助対象設備
補助の対象となる設備には、以下が含まれます。
太陽光発電設備
定置用蓄電池(業務・産業用、家庭用)
自営線
エネルギーマネージメントシステム(EMS)
需変電設備  など

・応募対象者
応募できる対象者は、民間企業、個人・個人事業主の他に、農林水産事業者が組織する団体、国立大学法人・公立大学法人・学校法人などです。ただし、個人・個人事業主が補助金を受ける場合は、農林水産事業者であることが条件となっています。

対象要件

補助金を受けるには、対象となる要件も確認しておかなければいけません。具体的にどのような要件が設けられているのかご紹介します。

【コスト要件】
コスト要件には、太陽光発電設備のコスト要件と定置用蓄電池のコスト要件があります。それぞれの要件は以下の通りです。

・コスト要件
太陽光発電設備のコスト要件は、10kW以上50kW未満は30万3,500円/kW、50kW以上は20万5,900円/kWを下回る設備であることが盛り込まれています。

{(太陽光発電設備の対象経費)× 1/2 } ÷ パワーコンデショナの最大定格出力
という計算式で算出できます。

・定置用蓄電池のコスト要件
定置用蓄電池のコスト要件は、蓄電池にかかる費用が目標価格を下回ることになっています。

蓄電池のシステムと仕様工事費を含む目標価格
業務・産業用4,800Ah・セル以上19万円/kWh
家庭用4,800Ah・セル未満15万5,000円/kWh

【電力供給先要件】

ソーラーシェアリングで発電した電気を利用する場所に関する要件もあるので確認しておかなければいけません。以下のいずれかに該当する必要があります。

・電力の供給先について
ソーラーシェアリングで発電した電力は、①同じ敷地内にある施設または自営線供給ができる施設、もしくは②農林漁業関連施設または地方公共団体の施設(発電設備と同じ都道府県内に限定)のいずれかに供給する必要があります。

自営線とは、新たに設置する太陽光発電設備から電力需要設備まで送電するために必要となる配線のことです。
農林漁業関連施設とは、農業者・林業者・漁業者やそのような業種の方が組織する団体によって所有または管理されている施設を指します 。

・余剰電力の供給先について
余剰電力が発生した場合は、小売電気所業者への売電ができません。発電電力の供給先によって制限があるので確認しておきましょう。

同じ敷地内にある施設もしくは自営線供給ができる施設が供給先となっている場合、他の自営線供給ができる施設で余剰電力を使用することが可能です。それ以外で余剰電力を使うことが不可となっています。

農林漁業関連施設もしくは地方公共団体の施設が供給先となっている場合、同じ敷地内で自家消費をすること、系統に接続して他の農林漁業関連施設もしくは地方公共団体の施設に供給することは可能です。ただし、それ以外の使い方はできません。

04補助金申請をする際のポイント

ソーラーシェアリングをスタートするには、多額の資金が必要になるので融資を受けるケースが一般的です。そのため、自己資金だけでスタートするのは難しいと感じ、補助金の利用を検討するケースが多いようです。

審査 を少しでも有利にしたいなら、いくつか押さえておきたい条件があります。その条件も今のうちに確認しておきましょう。

・審査に加点される項目を確認しておく
補助金の申請をする際、加点される項目を確認しておくと有利になる可能性が高まります。ソーラーシェアリングの補助金の場合は、地球温暖化対策促進法に基づいて市区町村が定めた促進区域で事業を行ったり、RE100/再エネ100宣言RE Actionへ参加したりしていると優先的に採択されたり、加点されます。

・導入をスムーズに進めるために必要な書類をしっかりと準備する
ソーラーシェアリングを始めるには、農地の一時転用許可を得る必要があります。農地法に基づき農地として登録している土地にソーラーシェアリングのための支柱などを設置するには許可が必要になるためです。また、一時転用許可を取得する際にポイントとなるのが農業を継続していくための計画です。ソーラーシェアリングにおける本業はあくまでも農業であり、農業をないがしろにしてまで行うことは承認されないためです。一時転用許可の手続きには、営農計画書・設備設計図・農産物の生産状況に関する報告書が必要なので、漏れがないように準備しておいてください。自分だけで準備するのは難しいという場合には、支援会社に相談するという方法もあります。

05補助金の申請方法

補助金を申請する方法を知りたいという方もいるでしょう。次は、必要となる手続きや参考として2022年度の公募スケジュールをご紹介します。

必要な手続き

補助金を申請するためには、いくつか手続きが必要となります。具体的な手続きは以下の通りです。

・交付規定・公募要領などに基づいた応募書類の作成と提出
・農地の一時転用許可の取得(交付申請の前に実施)
・(採択通知後に)交付申請書類 の作成と提出
・事業者への依頼と契約締結(契約・発注日は交付決定日以降であること)
・交付決定日以降、事業開始
・検収と支払い(その年度の 1月31日まで)
・完了実績報告書の作成と提出(補助事業完了後30日以内またはその年度の2月10日のいずれか早い日まで)
・清算払請求書の作成と提出(完了すると3月31日までに補助金が支払われる)

手続きには期限が決まっているものもあるので、忘れないようにしなければいけません。補助金を受けようと考えているのであれば、スケジュール管理をしっかりと行い、漏れがないように提出しましょう。

<参考>2022年度公募スケジュール

2022年度の公募スケジュールは以下のようになっていました。

2021年度補正予算分 一次公募…2022年5月17日(火)~6月17日(金)
2021年度補正予算分 二次公募…2022年6月27日(月)~7月27日(水)
三次公募…予算に達したため行われず

2023年度も同じような流れになると想定されます。ただし、予算に達した場合は早めに終了となる可能性もあるので、公募が始まったらすぐ申し込めるように準備しておきましょう。

06ソーラーシェアリング導入事例

ソーラーシェアリングを既に導入している事例もあります。最後に、導入事例をご紹介しますので参考にしてみてください。

たかとみファーム(鹿児島県志布志市)

たかとみファームは、耕作放棄地を再生させ、有効活用するための手段としてソーラーシェアリングを導入しました。太陽光パネルを耕作放棄地に設置し、その下で牧草を栽培 し、畜産農家に出荷するという計画を立てています。

たかとみファームの取り組み事例はソーラーシェアリング導入検討のヒントになることも多いと思いますので、詳細はこちらのインタビュー記事をご覧ください。

関連記事【導入事例】山間部の耕作放棄地を蘇らせるソーラーシェアリング。導入のポイントと効果とは?

07まとめ

ソーラーシェアリングは、注目度が高まっているので取り入れたいと考える方も増えています。しかし費用がかかるというのが懸念点になってしまいます。そのような不安や懸念を払拭できる補助金があるので、有効活用してみてはいかがでしょうか 。

これまでの事例を参考にしながら、どのような方法が自分に合っているか吟味し、しっかりと書類を作成すれば融資を受けたり、補助金をもらったりしやすくなります。手続きをする際は、当記事で紹介したポイントを踏まえた上で進めてみてください。

【参考】
営農型太陽光発電について(農林水産省)
PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進加速化事業(環境省)
PPA 活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス 強化促進加速化事業 公募要領(一般社団法人 環境技術普及促進協会)
AGRI JOURNAL「農場でのソーラシェアリングは敵か?味方か?」

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