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農業ビジネスにチャンス到来!参入するメリットとその方法とは?

第一次産業は敷居が高いとして、未経験者の参入は難しいと考えられてきた農業でしたが、最近では地方創生や企業の地方進出といった後押しもあり、ビジネスとして農業分野に進出する事業者が増えつつあります。

高齢化の影響で、農業は就業者数こそ減少しているものの、食糧生産という重要性の高い事業であることから、そのニーズが衰えることはありません。この記事では農業へ参入するにあたって、あらかじめ知っておきたい農業ビジネスの課題や、参入するメリットとその方法について解説します。

01農業ビジネスとは?

農業ビジネスは、農業や農業に関わる周辺ビジネス全般を指す言葉です。農業といえば種を蒔き手塩にかけた作物を収穫するイメージが強いですが、ビジネスとして農業を考える場合、必ずしも作物を育てて収穫することだけが農業ビジネスというわけではありません。

自身で農業を展開しつつ、その周辺で収益化に向けた事業を手掛けることも、立派な農業ビジネスのあり方の一つといえるでしょう。

農業ビジネスは、地方創生や都心部からの脱却といった近年のトレンドに合わせて、注目度が高まっている事業形態です。農業ビジネスが注目を集める理由は、以下の2つが主に挙げられます。

改正農地法による新規参入者の増加

農業ビジネスを盛り上げる大きなきっかけとなったのが、2009年に実施された改正農地法です。これまで、日本では農業の保護を目的とした農地法が施行されてきましたが、同法が改正されたことにより、一般法人の参入が容易になったのです。

具体的な改正内容は、農地を取得する際の下限面積の緩和や、法人による農地貸借規制の緩和、農地確保に向けた適切な利用の徹底などが挙げられます。

新規就農者は大きく分けて
①新規自営農業就農者
②新規雇用就農者
③新規参入者

という3種類に分かれます。

①新規自営農業就農者は、これまで雇用される形で農業に従事していた就農者が、新たに個人農家に転身した場合を指します。②新規雇用就農者は、雇用契約を結ぶことで就農した人を指します。③新規参入者は、新たに農業経営を開始した経営の責任者及び共同経営者を指します。

改正農地法の影響もあってか、日本国内では新規参入者がここ数年で右肩上がりに増加しています。新規就農者数こそ2015年の6万5,000人で頭打ちになっているものの、農業ビジネスへの新規参入者数(注)はおよそ3800人で、2021年は前年比7.0%増加しています。

法的な敷居が取り払われたことできっかけを得た農業ビジネスが体系化されていけば、今後一気に参入者が増加、あるいは、規模が拡大しビジネストレンドの一端を担うケースもあるかもしれません。

農業における新しいビジネス形態の登場

農業ではなく「農業ビジネス」という言葉が使われるようになったことからも分かるように、最近は農作物の栽培や販売以外の部分で収益化を図る事業形態も多くみられるようになってきました。

わかりやすい例でいえば、D2C(Direct to Consumer)の台頭です。従来の農家は作物を販売するため、固定の卸売業者を通して小売業者へ、小売業者から消費者へというプロセスを踏むのが一般的でした。

しかし近年は多様なWebサービスの登場によって、誰でも簡単にオンラインショップを立ち上げ、作物を直接消費者に販売できるような環境が整いました。例えば、第一産業従事者と消費者を直接つなぐECプラットフォームの「食べチョク」は、生産者である農家による直営EC進出を強力に後押ししています。

生産者が直接消費者へ届けるD2Cといったビジネスモデルに限らず、テクノロジーを活用し、農業を収益化するための多様な方法の開拓に多くの事業者が取り組んでいます。

02日本の農業が抱える課題

農業ビジネスへの注目が高まる反面、農業業界では多くの問題も抱えています。農業がどのような問題を抱えており、どのような解決策が求められているのかについて、確認しましょう。

経営やビジネスのノウハウが蓄積されていない

日本の農業の最大の問題の一つといえるのが、農業を「ビジネス」として育てるノウハウや意識が育ちにくい環境にあったということでしょう。

農業は天候や災害の影響を直接受ける産業であり、その中でいかに安定して作物を育て、収穫するかということに注力してきました。一方で、農業は農地法や食料・農業・農村基本法などの法律によって、国が率先して守ってきたという側面もあります。国が保護をしていたということは、農業は他の業態とは異なり市場経済に晒されにくかったということです。

市場経済に晒されていない農業は、市場ニーズの把握や競争による成長に対する意識や取り組みが生まれにくかったといえるでしょう。

そのため農業領域における経営やビジネスのノウハウを持っている人や自治体は少なく、いつまで経っても「儲からない農業」を脱却できない状態が続いてしまっています。

生産量が減少している

近年は営農者の高齢化に伴い、生産量が減少している点も問題視されています。農業は広大な土地を適切に管理しなければ成り立たないビジネスですが、それを高齢者が少人数で支えるのはどう考えても無理があります。

農業は力仕事が多く、常に若者の手を必要としているものの、地方における少子高齢化や若者の都市部への移住が進んだことで、農林水産省の調査でも出ている通り、就農者数は減少しています。

参入障壁が高いイメージがある

「農業は儲からない」というイメージが定着しているだけでなく、農業は天候や自然を相手にするため、経験やノウハウがないと難しく新規参入には高いハードルがあると捉えられていることもあるようです。

新規参入へのハードルの高さは農業に限ったことではないですが、近年は上述の通りテクノロジーの発達による自動化や、6次産業化のように農業周辺でのビジネス機会創出の動きもあり、従来の農業に対して抱かれていた敷居の高さは緩和されつつあるのではないでしょうか。

03農業ビジネスに参入すべき理由

上記のような課題を踏まえた上でも、農業ビジネスにチャンスを見出そうと参入する経営者は増加傾向にあります。農業ビジネスを勝機として注目すべき理由は、以下の2点です。

起業しやすい領域である

まず、農業ビジネスは客観的に見ると、起業しやすい領域であると考えることもできます。農業は食品を扱う領域ですから、その需要が絶えることはありません。現在の日本市場においては国産であることが優位にあることを踏まえると、就農者数の減少により競争相手が減っている環境はチャンスとも捉えられるのではないでしょうか。国や自治体も農業参入者の支援を行っています。

また、法改正によって参入が容易になったことや、技術革新が進んでテクノロジーの力で農業を支えられるようになっていることもあり、収益化しやすい領域へとシフトしつつあります。

低コストで土地を入手できる

改正農地法によって農地を手に入れやすくなったこともさることながら、近年はますます低コストで土地を手に入れられるようになってきました。

農業従事者の高齢化により、地方では空き農地が増え、農地の借り手や譲り手を探している家が増えつつあります。中には非常に安価に農地を購入、あるいは借用できるケースもあり、立ち上げに必要な資金を最小限で抑えられます。

イノベーションの余地が大きく付加価値を生みやすい

また、農業をベースにしたビジネスはまだまだ開拓の余地が大きく、付加価値創出による事業拡大の可能性が大きく残されていると考えられます。

例えば、近年では静岡県で取り組まれている高糖度トマト「アメーラ」のように、作物をブランド化することにより差別化を図る動きが多く見られます。従来は、トマトとして一括りにされていたものにビジネス視点を持ち込み、ブランド化したことで付加価値をつけようというものです。なお、ブランド化は国内だけでなく海外への進出可能性も高めているようです。

このような例から考えると、他業界でビジネスノウハウを身につけた方が農業ビジネスに参入するというのはイノベーションの触媒として大きな可能性を秘めているのかもしれません。

04農業ビジネスに参入する方法

農業ビジネスに参入するための方法は、主に以下の3つが挙げられます。

農業法人に就職する

農業法人への就職は、いわゆる雇われて就農するタイプの参入方法です。就職先から農業のノウハウを一から教えてもらえるので、いきなり農業を一人でスタートするのは難しそう、という方におすすめの方法です。

起業して農家になる

起業して農家になる場合、一から農業を始めることになります。

農地の確保や開拓などからスタートしなければなりませんが、ある程度ノウハウがあれば自分のペースややり方で自由に展開できるので、ストレスが小さく可能性も大きいアプローチといえます。

農業周辺でビジネスを展開する

作物栽培に直接参加せず、周辺ビジネスで収益化するという方法もあります。いわゆる6次産業としても注目を集めているように、食品加工や観光・宿泊業と連携するような動きも増えてきました。

農業を活かせるビジネスモデルを検討している場合、こちらを目標に頑張ってみるのもいいでしょう。

05農業ビジネスにおける新しい取り組み事例

農業ビジネスにおいてはテクノロジーを活用した最新の事例も次々と登場しています。

スマート農業による生産性向上

ハイテクと農業の掛け合わせとして近年最も注目されているのが、スマート農業です。最新のIoTやAIといったテクノロジーを現場に導入し、業務の自動化や生産性の向上、あるいは農作物の品質向上などが狙えます。

例えばNTT東日本などが合同で実証実験を行っている「りんごDX」は、センサーやWi-FiといったIoT技術を活用し、データを取得して農園の状況を確認するなどの技術導入を進めています。

肉眼で農園を観察する必要がなくなり、高齢者でもりんご農園を管理したり、広大な農園を一人の農業従事者で管理するといったことが可能になります。

ソーラーシェアリングによる安定した収入の確保

ソーラーシェアリングは、農地に支柱を建て、数メートルの高さにソーラーパネル設置することで太陽光発電と作物栽培を両立させる手法です。農作物の栽培ができるだけでなく、同じ土地を使って発電が行えるため、売電による安定した収入増が期待でき、スマート農業や6次産業化などの新しい取り組みの原資にもできるかもしれません。

千葉大学で公共学の博士号を取得後、大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立した馬上丈司氏は、ソーラーシェアリングは農業ビジネスの新しいアプローチとして注目しているだけでなく、再生可能エネルギー事業の参入にもつながるとして高く評価しています。

馬上氏の詳しい解説については、以下のインタビューを参考にしてください。

関連記事馬上丈司さんに聞く!自らソーラーシェアリングを実践する理由とは?

06まとめ

農業ビジネスは、法改正や技術革新によって、近年注目を集めています。スマート農業やソーラーシェアリングなど新しい取り組みも農業ビジネスを後押しし、参入事業者も増えつつあります。新しく農業に参入することを検討している方は、ぜひ従来の農業と異なる視点でアプローチしてみてはいかがでしょうか。

【参考】
改正農地法について(農林水産省)
令和3年新規就農者調査結果(農林水産省)
「SDGsを共通言語に」理解乏しかった産地の努力に光(日経BizGate)
日本発のトマトが、本場スペインで最も高く売れる理由(日経ビジネス電子版)
NTT東日本、青森でAIやIoT活用して「りんご DX」の実証実験(Tech+)

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