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2023.2.1

農地相続の手続き完全ガイド|農業をする人・しない人それぞれの対応方法を解説

農地を相続する際は、相続登記(名義変更)や農業委員会への届出が必要です。手続きを済ませていないと、農地をすぐに有効活用できず、トラブルが生じる可能性もあります。

本記事では、農地相続の際に必要な手続きや相続するメリット・デメリット、相続した農地の活用方法、相続をする際に知っておくべきことを解説します。

農業をする人・しない人それぞれの活用方法や選択肢を紹介していますので「農地をどのように活用すれば良いかわからない」という方は、ぜひお読みください。

01農地相続の手続き

農地を相続する際には、主に「法務局で相続登記を行う」「農業委員会に届出をする」という2つの手続きが必要です。ここでは、農地相続の手続きの理解を深めましょう。

法務局で相続登記(名義変更)を行う

相続登記とは、正確には「相続による所有権登記」といい、農地を受け継いだ方の名義に変更する手続きのことです。現状、相続登記は必ず行う必要はありません(2024年4月1日からは義務化)。しかし、登記をしないとさまざまな問題が生じる可能性があります。

例えば、相続登記をしないと次の問題が生じる可能性があります。

・すぐに土地を売ったり土地を担保にお金を借りたりできない
・固定資産税を払っていても自分の土地になるわけでない
・所有者をはっきりさせておかないと相続トラブルが生じる恐れがある
・農地を放置したことにより、周辺住民に悪影響を及ぼしてトラブルとなる恐れがある

トラブルを防ぐためにも農地を相続した際は、早めに管轄の法務局で申請するのをおすすめします。申請方法に不安がある人は、法務局の相談窓口や司法書士に相談しましょう。

農業委員会に届出をする

次に管轄の農業委員会に届出をしなければなりません。届出は被相続人の死亡を認識してから10カ月以内に実施しなければならず、期限を過ぎると10万円以下の過料を求められる場合があります。

期限内に次の書類を用意して農業委員会に届出を行いましょう。
・農地法第3条の3 第1項に規定による届出書
・相続登記済みの登記簿謄本

必要な書類などは、管轄の農業委員会のホームページからダウンロードできます。

02農地相続のメリット

ここからは、農地を相続するメリット3つを解説します。

1. 農業ができる
2. 農地を貸し出せる
3. 農地を売却できる

農業ができる

農地を相続すれば耕して農作物を育てることができます。既に被相続人が農業を営んでいれば、それを引き継ぐ形で農業を継続しやすいでしょう。ただし、被相続人が農業を停止しており、改めて農業を開始する必要がある場合には、農業機器や設備などの初期投資が必要なケースもあります。本気で農業を始めたい方は、自治体が実施している就農サポートなどを利用すると良いでしょう。

農地を貸し出せる

近隣の農家などに農地を貸出して賃貸料を得ることができます。借り手を探すのが難しい場合は、管轄の自治体や農協(JA)などに相談すると良いでしょう。だだし、農地の貸し出しは、農業委員会に許可を受ける必要があります。

農地を売却できる

農地を売却すれば不動産利益を得ることができます。売却には、農地をそのまま農地として売却する方法と、農地以外の用途で活用できるように転用して売却する方法があります。いずれにしても、農業委員会の許可が必要であるため注意しましょう。

03農地相続のデメリット

次に農地を相続するデメリット3つを解説します。

1. 維持管理に手間がかかる
2. 上手に活用しないと負動産になる
3. 借り手・売り手が見つからない可能性がある

維持管理に手間がかかる

農地を相続すると、水路や農道の補修、草刈りなど維持管理に手間がかかります。近隣住民に迷惑をかける場合もありますので、農地を相続後に放置するのは控えましょう。

上手に活用しないと負動産になる

自身で農業を行わない場合は、売却や貸し出しなどを行わないと、税金だけかかる負動産(所有していると負担になってしまう不動産)になる恐れがあります。農地を相続する際は、今後の活用方法を慎重に計画して相続しましょう。

借り手・売り手が見つからない可能性がある

借り手・売り手が見つからず、手放したくても手放せない状況になる可能性があります。相続前に、そもそも農地としての需要があるのかを調査する必要があるでしょう。

04農地を相続して農業をする方が知っておくべきこと

農地を相続して農業をする方が知っておくべきこととして「相続税納税猶予制度」があります。相続税納税猶予制度とは、一定の条件を満たす方に限り、農地に係る相続税を猶予または免除できる制度です。

一定の条件とは次のとおりです。

・相続税の申告期限までに農業経営を始めて引き続き経営を行う場合
・生前に一括贈与を受けた者
・相続税の申告期限までに特定貸付または認定都市農地貸付などを実施した者

猶予される税額は、本来の税額内の農業投資価格(国税局長が定めた価格)を超える部分です。また相続人が死亡した際は猶予税額が免除されます。

05農業はしないけれど農地相続する人の選択肢

農業はしないが農地を相続する人の選択肢は主に次の5つがあります。

1. 農地を売却する
2. 農地を貸し出す
3. 農地を転用する
4. 相続を放棄する
5. 最低限の管理をして相続する

農地を相続しても農業は行わない人にとって最善の選択肢を見つけましょう。

農地を売却する

農地法第3条に基づき、農業委員会から許可を受ければ農地を売却できます。もちろん前述で解説した相続登記を事前に実施していなければなりません。ただし、農地を売却する際は、買い手側も一定の要件をクリアしている必要があります。

法人・個人ともに共通している買い手側の要件は次のとおりです。

・農業機器や労働力を適切に利用できる営農計画を立案している
・経営する農地面積の合計が50a以上である(北海道は2ha
・水利調整や農薬使用において 周辺農地に支障を与えない

農地の買い手は簡単に見つけられないケースもあるため、事前に十分な調査をしましょう。

農地を貸し出す

農地法第3条に基づき、農業委員会に許可を受ければ農地を貸し出すことができます。こちらも事前に相続登記を実施する必要があります。

貸し出す場合も売却するのと同じく、借り手側が前述した一定の要件をクリアしている必要があります。なお、借り手を見つけるのも簡単ではありません。管轄の自治体などに相談して、農地状況を確認してもらうと良いでしょう。

農地を転用する

農地法第4条に基づき、農地を農地以外の用途に転用すれば、農業以外で土地を活用できます。例えば、宅地に転用すれば、土地の上に賃貸物件を建てたり駐車場を作ったりもできるので、農地のときよりも売りやすく買い手が見つかりやすくなるケースがあります。

また、農地を一時転用することでソーラーシェアリングを導入することも可能です。ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立て上部に太陽光発電設備を設置し、その下で作物を育てる農業と発電をシェアする取り組みです。ソーラーシェアリングを導入することで、農業収入に加え、売電による収入拡大や発電電力の自家利用によるコスト削減など、農業経営におけるメリットが期待できます。

農業の後継者不足や高騰する燃料コストの削減など農業を取り巻く様々な課題を解決する一つの切り口として、ソーラーシェアリングが注目されています。ソーラーシェアリングについて詳細を知りたいは、次の記事をご覧ください。

関連記事営農型太陽光発電とは?取り組みや課題、導入事例を解説

ただし、すべての農地が転用できるわけではありません。転用できる土地は、主に「小集団の生産力の低い第2種農地」や「市街地にある第3種農地」であるため注意が必要です。

相続する農地が転用可能であるかを知りたい場合は、管轄の農業委員会などに相談しましょう。

相続を放棄する

相続の開始を知ってから3カ月以内であれば相続を放棄できます。ただし、農地だけを放棄することはできず、他の財産も相続放棄しなければなりません。

つまり、農地だけでなく、建物や金銭などのあらゆる遺産の相続を放棄する必要があります。放棄ができる期間は定められているため、相続すべきか判断できない場合は、司法書士などに相談してみると良いでしょう。

放棄後の管理義務

たとえ農地を含むすべての財産を放棄したとしても、民法により次の相続人が管理できる状態になるまで、財産を管理しなければなりません。

つまり、農地の管理も次の相続人が決まるまで行う必要があります。また、仮にすべての相続人が農地を含むすべての財産を放棄した場合は、家庭裁判所によって相続財産の管理人が選出されます。

管理人が見つかるまでの間は、最後に相続を放棄した人に管理責任があります。農地を適切に管理せずに、周囲に損害を与えた場合は、最後に相続を放棄した人がその責任を負わなければなりません。

06農地相続のトラブル例

農地相続のトラブルの例を挙げると次のような内容があります。

・相続人が複数いるため遺産分割がまとまらない
・誰も農業をしないため相続する人がいない
・農地相続の手続きの方法がわからない
・相続税の支払いができない

農地相続のトラブルを避けるためには、生前にしっかり話し合いを行い、遺言に残してもらうことが大切です。

07まとめ:農地相続における選択肢を知り最善の方法を選びましょう

農地を相続するにあたり「農業をする・売却をする・賃借をする」など、相続人にとって最善の選択をすることが大切です。

特に農業をしたい人は、相続税納税猶予制度や自治体などが実施している新規就農サポートなど、利用すると農業を始めやすいでしょう。

【参考】
相続登記はお済みですか?(盛岡地方法務局)
・農地相続後の農業委員会への届出義務の周知(中城村)
・農地法(e-Gov法令検索)
・農地を相続した場合の課税の特例(農林水産省)
・営農型太陽光発電について(農林水産省)
・農地の売買・賃借・相続に関する制度について(農林水産省)
・農地転用許可制度について(農林水産省)
・相続の放棄の申述(裁判所)
・民法(e-Gov法令検索)
・不動産登記制度の見直し(法務省民事局)
・農業人材確保・就農サポート体制確立支援のご案内(農林水産省)

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