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活用しきれていない農地をお金に変えるために知っておくべきこと

使われなくなった農地は増えており、周囲とのトラブルの原因にもなっています。使われていない農地も有効活用することで新しい収入を得られる可能性があります。

今回は、放置されている農地を有効活用してビジネスを拡大させるために知っておくべきことについてご紹介します。相続などで譲り受けた農地の活用法で悩んでいる方などは必見です。

01農地とは?

農地というと何となくどのような土地かイメージできる人は多いでしょう。しかし詳しい定義まではしっかりと理解していない方もいるはずです。まずは、農地の定義や農地活用における2つの規制について解説していきます。

農地の定義

農地法において、「『農地』とは、耕作の目的に供される土地」と定義しています。耕作は、土地に労働や資本を投じて作物を栽培するという意味です。つまり、作物を育てるための耕耘(こううん)や整地、種まき、水やり、施肥、除草などの作業を行い、作物を栽培している土地が農地となります。

農地と認められるには、直接的な耕作が行われていることも条件に盛り込まれています。田んぼや畑、牧草地などは農地です。しかし、肥料などを与えずに飼料用の採草が行われている土地に関しては、農地には分類されません。

農地活用における2つの規制

農地活用をするためには、2つの規制があることも把握しておく必要があります。それが、農地法と都市計画法(市街化調整区域)です。それぞれの規制内容について確認しておきましょう。

・農地法
農地活用で他の用途に使いたい場合は、農地転用が必要になります。農地転用はその言葉の通り、農地からそれ以外の用途に使える土地へと転用することを意味します。日本には、農地を守るための農地法という法律があるため、簡単に農地転用はできません。

農地転用するには、農業委員会に届け出をしたり、都道府県から許可を得なければいけなかったりします。いずれも返答が来るまでに時間がかかる場合があるので、早めに手続きをする必要があります。

・都市計画法(市街化調整区域)
都市計画法は都市の健全な発展のためのルールを定めたものであり、その中で区域を「市街化区域」(優先的・計画的に市街化を図るべき区域)、「市街化調整区域」(市街化を抑制すべき区域)、「非線引き都市計画区域」(上記区分を定めていない区域)の3つに区分しています。その中で、市街化調整区域は、市街化を目的としていないため、住宅や商業施設などを建てることが基本的にできない土地なのです。

そもそも、市街化調整区域は立地条件があまり良くない、土地活用の方法が制限されているなど、活用しにくいと土地いわれています。

使われていない農地を転用し、農業以外で活用する方法を後ほどご紹介しますが、ご自身の土地がこの市街化調整区域にある場合は、このような規制の中でどのような活用ができるかを検討しなければならないことを認識しておきましょう。

02問題視されている遊休農地・耕作放棄地・荒廃農地

近年、遊休農地や耕作放棄地、荒廃農地が問題視される傾向が強くなってきました。遊休農地・耕作放棄地・荒廃農地の違いや遊休農地の現状についても確認しておきましょう。

遊休農地・耕作放棄地・荒廃農地の違い

遊休農地・耕作放棄地・荒廃農地は、いずれも似たようなものだと思っている方も多いでしょう。しかし実際には違いがあるので、どのような違いがあるのか把握しておきましょう。

・遊休農地
遊休農地は、現在も耕作されておらず、将来的にもその見込みがない農地を指します。農業委員会が1年に1回、農地の調査を実施し、判断しているのです。今後も耕作される予定がない農地は1号遊休農地、周辺の農地と比較すると著しく使い方が劣っている農地は2号遊休農地と定められます。

・耕作放棄地
耕作放棄地は、土地の所有者が1年以上作付けなどをしておらず、今後も予定がない土地のことです。遊休農地は農業委員会によって認定されますが、耕作放棄地は土地の所有者に耕作の意思があるかどうかがポイントになります。少しでも耕作を行っているのであれば、耕作放棄地ではなく遊休農地とみなされます。

・荒廃農地
荒廃農地は、耕作されておらず、耕作放棄によって荒れてしまった農地です。通常の農作業では耕作が難しいと客観的に判断された場合、荒廃農地とみなされます。市区町村や農業委員会によって行われる農地の荒廃状況に関する調査の結果に基づいて判断されます。

尚、2021年に荒廃農地調査は、農地法に基づく遊休農地調査に統合されました。

遊休農地の現状

2010年をピークに、遊休農地の面積は少しずつ減少しています。しかし、2019年でも約97,000haもの遊休農地があるのです。そのため、減少しているとはいってもまだまだ有効活用できていない土地が全国各地に多く残されていることがわかります。

03農地を活用せずに放置するリスク

使っていない農地を放置すると、様々なリスクを生み出す原因になってしまいます。放置することでいったいどのようなリスクが生まれるのか、特に押さえておきたいポイントをピックアップしてご紹介します。

重い税金負担

農地には、資産税や都市計画税がかかります。これは耕作を行わず放置している農地も同様です。使っていない土地の税金なので、できれば支払いたくない、負担が大きすぎると感じてしまう方もいるでしょう。固定資産税や都市計画税の負担はどれくらいになるのでしょうか?

・固定資産税
固定資産税は、固定資産税評価額×1.4%×限界収益修正率(0.55)という計算式で算出されます。農地の収益性が低いため、土地の売買価格と集積性に乖離が生じてしまいます。そのため、限界収益修正率による補正が行われていました。

しかし、2017年以降は限界収益修正率を乗じないことになっています。したがって、固定資産税の評価額はそれ以前のおよそ1.8倍にもなってしまうのです。負担が大きくなるので、農地の売却や土地活用で固定資産税の半分程度は賄えるような農地にするなどの工夫が必要です。

・都市計画税
農地が市街化区域内にある場合は、都市計画税も課せられます。市街化区域は、市街化を促進するエリアで、建物を建てる際にも基本的に制限はありません。市街化区域に該当する場所に農地があるか確認したいのであれば、不動産会社や自治体の担当部署、インターネットで確認してみてください。

都市計画税は、都市計画税=課税標準×標準税率という計算式で算出できます。税率は自治体によって違いますが、0.3%が上限として定められています。

管理不足による周囲とのトラブル

農地を管理しないまま放置してしまうと、周囲とのトラブルが発生する場合もあります。害虫や害獣が増えてしまい、土地を荒らしてしまいます。さらに、周りの農地や住民にも悪影響を及ぼす可能性もあるので、早めに対処しなければいけません。

04農地を有効活用してビジネスを拡大する方法

使っていない農地を有効活用すれば、ビジネスの拡大にもつながります。ビジネスを拡大させる方法にはどのようなものがあるのかご紹介します。

農地を貸し出す

農地バンク(農地中間管理機構)は、農地を第三者に貸し出したいと考えている人をサポートする公的な機関です。都道府県知事が認めた公的な機関なので安心して利用できます。農地の集約化をサポートしてくれたり、まとまった農地を貸し付けた場合は協力金が支払われたりするので、利用するメリットは大きいでしょう。

市民農園にする

市民農園にするという方法もあります。市民農園は、周辺住民に農地を提供することで、自家用の野菜や花などを育ててもらう場所です。農家ではないけれど農業に興味がある、自分達が食べる分は作りたいなどのニーズに応えられるので、都市部では特に需要が高まっています。

体験型農園にする

体験型農園として、農業の促進に寄与するという方法もおすすめです。農地を持っている方は、所得を増やすことにつながりますし、農地の保全や有効活用にもつながります。使わないまま遊休農地や荒廃農地にしてしまうのはもったいないので、体験型農園として活用することも前向きに検討してみると良いでしょう。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を行う

農地に営農型太陽光発電設備を設置し、農業と太陽光発電を両立して行うソーラーシェアリングという方法もあります。農業だけでは高い収入が見込めない、或いは、収入が不安定で投資対効果が見込めないという場合には、収入源を増やすことにつながるソーラーシェアリングはおすすめです。

興味のある方はぜひ以下の記事をご覧ください。

関連記事馬上丈司さんに聞く!自らソーラーシェアリングを実践する理由とは?

05農地を転用して新規ビジネスで活用する方法

農地を転用して新たなにビジネスをスタートするという活用方法を選択するケースも多く見られます。最後に、農地転用後にどのようなビジネスができるのかご紹介します。

駐車場経営

駐車場経営は、比較的コストを抑えながらスタートでき、管理の手間もそこまでかからない土地活用方法です。住宅街にある土地、商業施設・オフィス・駅などの近くにある土地であれば、検討されてみるのもいいでしょう。

しかし、地方部だと駐車場の需要がそこまで高くないエリアも多く見られます。そのため、周辺環境をよく考えた上で駐車場経営という土地活用方法で良いのか決めるようにしましょう。

マンション・アパート経営

マンションやアパートといった賃貸物件の経営をするというケースもあります。大学や企業などがある場合は単身向け、小学校・中学校などが近くにある場合はファミリー向けの物件にすると、入居者を集めやすいです。安定した不労所得が期待できる方法でもあります。

トランクルーム経営

トランクルーム経営は、初期投資を抑えた土地活用を考えている方におすすめです。専門の業者に一括借り上げしてもらう方法であれば、トランクルームを購入せずに済みます。オフィスなどが多いエリアでは需要が高めですが、基本的に立地を選ぶことなくスタートできます。

コンビニ経営

コンビニ経営は、交通量が多い道路沿いなど集客が期待できる土地に限定されてしまう活用方法です。適した土地でスタートできれば高い収益性も期待できます。コンビニの契約期間は10年~20年と長いケースも多いので、長期的な収入を見込める方法でもあります。

太陽光発電(野立て)

野立ての太陽光発電は、容量が大きい発電設備を設置できます。十分な広さを確保できれば、大きな収入に繋げられる可能性があります。周辺に住む人が少ないなどで他の土地活用方法を選択するのが難しいような土地であっても設置できる可能性があるのは、野立ての太陽光発電ならではのメリットです。

06まとめ

農地が使われなくなり、荒れてしまうと様々なトラブルを引き起こします。近隣にも迷惑をかけてしまうばかりではなく税金も負担しなければなりません。放置するのではなく何らかの対策を検討されてみてはいかがでしょうか。

農地としてそのまま活用する場合には、農地バンクへの登録や、市民農園・体験型農園、ソーラーシェアリング導入などの方法があります。あるいは農地転用して全く違うビジネスをスタートするのも良いでしょう。

【参考】
農地法(農林水産省)
開発許可制度の概要(国土交通省)
荒廃農地の現状と対策について(農林水産省)
農地の利用状況調査の結果(農林水産省)
農地等に対する課税制度について(農林水産省)
農地中間管理機構(農林水産省
市民農園を始めよう!(農林水産省)
農業体験農園で野菜作りの素晴らしさを(農林水産省)
営農型太陽光発電について(農林水産省)

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