2025.3.13
耕畜連携とは?メリットや課題、事例、補助金など支援策を紹介
耕畜連携とは、耕種農業者と畜産農業者が協力し、地域内で資源を循環させる取り組みです。両農業者の経営にとって、そして持続可能な農業の実現にとって有効な取り組みであるため、注目されています。
そこで本記事では、構築連携について、耕種農家と畜産農家におけるメリット、課題、事例、補助金などの支援策を紹介します。
01耕畜連携とは
耕畜連携とは、農作物を栽培する「耕種農業者」と家畜を飼育する「畜産農業者」が協力し、資源を循環させる取り組みです。
具体的には、耕種農家が生産した飼料作物を畜産農家が利用したり、畜産業で生じる家畜ふん尿を堆肥として耕種農家が活用したりします。このように、資源を互いにうまく提供および循環していくことで、持続可能な地域の形成につながります。
02耕畜連携のメリット
耕畜連携のメリットについて、耕種農家・畜産農家それぞれの観点で紹介します。
耕種農家のメリット
耕畜連携における耕種農家の主なメリットは、以下の4つです。
堆肥利用でコスト低減や地力増進を図れる
耕畜連携により、畜産農家から供給される家畜ふん尿を堆肥として活用できるため、化学肥料の使用量を削減でき、コストを抑えられます。
2021年以降、化学肥料の価格高騰が続いており、2025年現在は一時期よりは落ち着いたものの、高騰以前よりも高い水準で推移しています。そのため、畜産農家からの堆肥の供給は経営安定の助けとなるのです。
また、家畜由来の堆肥には有機物が多く含まれ、土壌の保水性や通気性を改善するため、地力が向上し、作物の品質や収量の向上にもつながります。
飼料作物は省力で栽培を行える
耕種農家が畜産農家と連携して飼料作物を栽培する場合、収穫時期の調整がしやすく、管理の手間が比較的少ない作物を選べます。例えば、とうもろこし、エンバク、ソルガムなどが用いられています。
特に、飼料作物は食用作物に比べ見た目の品質基準が厳しくないため、病害虫や気候リスクの影響を受けにくく、安定的に生産可能です。
また昨今は、主食用米の需要減少や国による推進などを背景に「飼料用米」への関心が高まっています。ぜひ、こちらの記事もあわせてお読みください。
輪作による連作障害を回避できる
同じ作物を同じ圃場で繰り返し栽培すると、特定の養分が過剰に消費されて土壌が劣化する「連作障害」が発生します。そこで耕畜連携を行うにあたり、飼料作物と食用作物を組み合わせた輪作体系を導入することで、土壌の栄養バランスを維持し、連作障害を軽減できます。
例えば、連作障害が起きやすい小麦や大豆の輪作に子実とうもろこしを用いれば、病害や雑草の発生を抑制でき、収量向上を期待できます。
耕作放棄地の活用可能性がある
近年、農業従事者の高齢化や後継者不足により、耕作放棄地が増加しています。そこで耕畜連携により、こうした遊休地を飼料作物の栽培地として再利用するのです。飼料作物は比較的育成が容易で、土地の改良が少なくても栽培できるため、放棄地の再生利用に適しています。
さらに、畜産農家と協力し放牧地として活用することで、雑草管理の手間を省きながら、農地を維持することも可能です。
畜産農家のメリット
耕畜連携における畜産農家の主なメリットは、以下の4つです。
生産者が明確な国産飼料を安定的に確保できる
耕畜連携により、飼料作物を生産する耕種農家と直接連携することで、生産者が明確な国産飼料を確保できます。輸入飼料は価格の変動が激しく、国際情勢や物流の影響を受けやすいため、安定供給が課題です。そこで、国内の耕種農家と契約することで、品質が担保された安全な国産飼料を確保でき、トレーサビリティの強化にもつながります。これにより、ブランド価値の向上も期待できるでしょう。
飼料生産の外部化を図れる
畜産農家が自ら飼料作物を栽培するには、土地の確保、農機具の導入、作業負担の増加といった課題があります。そこで耕種農家と連携すれば、飼料生産を外部化し、本来の畜産業務に専念できるようになります。こうした労働力および作業の分散により、効率的な経営が可能となるでしょう。
飼料自給率が高まる
現在、日本は飼料の多くを海外からの輸入に頼っており、価格高騰や供給不安といったリスクに常にさらされています。こうした現状に対して、耕畜連携を通じて国内で生産される飼料を利用すれば、飼料の自給率を向上させ、経営の安定性向上につながるのです。
また、耕種農家との契約栽培を導入することで、長期的に安定した価格での供給が可能となり、コスト管理面でのメリットも期待できます。
堆肥の供給先を確保できる
畜産農家にとって、家畜のふん尿処理は大きな課題の1つです。そこで、耕畜連携により耕種農家に堆肥として供給することで、有効活用と廃棄コストの削減を実現できます。
また、堆肥の受け入れ先が確保されることで、ふん尿の蓄積を防ぎ、周辺環境への負荷を軽減できます。
03耕畜連携の課題
耕畜連携には多くの利点がある一方で、以下のような課題もあります。
- 畜産飼養数および堆肥生産量は減少傾向にあり、堆肥の原料であるふん尿が不足しがち
- 畜産農家と耕種農家が点在していると連携を取りづらい
- 鳥獣被害などリスク回避のため、飼料の保管場所確保と品質管理の手間がかかる
- 耕畜両サイドにメリットが生じるように輸送手段や費用負担などの協議が欠かせない
04耕畜連携の事例
耕畜連携の事例を、3つ紹介します。
水田の高収益利用としての子実とうもろこし生産
滋賀県では、2022年に県内8名の農業者で構成される「滋賀県子実コーン組合」が設立され、近畿において初となる組織的な子実トウモロコシ生産が開始されました。
他作物との組み合わせによる作業時期の分散、収益の安定化、地力アップなど、各組合員の目的は様々なものの、水田を有効活用するという共通の目的に向けて面積拡大や単収増に取り組んでいます。
そして2023年には販売会社を設立し、畜産農家との直接取引を開始しました。今後も取組面積と技術向上による単収の増加により、構成員でもある養鶏農家の年間需要を充足できる生産規模への拡大を目指しています。
飼料用米を用いた飼料による国産鶏のブランディング
青森県の常盤(ときわ)村養鶏農業協同組合では、地域の飼料自給率向上や循環型農業の推進を目的として、2006年から飼料用米(籾米)の活用をスタートしました。飼料米の提供元の農家へは、鶏ふん堆肥を還元しています。
飼料用米は、自場で配合飼料に混合して利用。飼料用米を68%配合した国産原料80%以上の飼料を国産鶏(後藤もみじ)に給与して生産された卵は、「こめたま(平飼い)」「青い森のこめたま(ケージ飼い)」と銘打ってブランディングを図っています。
飼料用米の利用で飼料費が約30%削減
青森県の立花牧場は2016年から飼料用米(籾米サイレージ)の生産・利用を開始し、畜産農家と稲作農家の連携による「三戸地域稲SGS生産利用組合」を設立しました。配合飼料の一部を飼料用米に代替しており(肥育牛で約20%の配合飼料を代替)、耕種農家に対しては牛ふん堆肥を提供します。
なお飼料用米は、粉砕・加水・乳酸菌添加に加え、入念な脱気を行うなど丁寧な調製を行うことで高い品質を維持しており、牛の嗜好性も良好とのことです。こうした飼料用米を活用する取り組みにより、飼料費の約30%削減を実現しました(2022年時点)。
05耕畜連携の補助金など支援策
耕畜連携の補助金など主要な支援策を、4つ紹介します。
耕畜連携国産飼料利用拡大対策
耕畜連携による3年以上の利用供給契約に基づき、畜産農家が、飼料作物を生産した耕種農家に対し、飼料分析・給与情報を提供する取り組みへの支援策です。
交付対象となる飼料は、「青刈りとうもろこし、ソルゴー、牧草 (7,800円/t以内)」「子実用とうもろこし(12,000円/t以内)」です。また、これらの飼料を生産するにあたり、必要となる機械等の導入支援を受けることができます。
飼料生産組織の規模拡大等支援
飼料生産を担う耕種農家の運営強化を図るため、規模拡大などに必要な機械や設備の導入、畜産農家との長期契約を推進・支援するための施策です。具体的には、生産作業機械、飼料専用運搬車、堆肥散布車の導入、簡易倉庫の設置に対して、補助(2分の1)を受けられます。
また、飼料生産を担う耕種農家が畜産農家と5年以上の長期契約を結び、飼料の生産販売、作業受託、稲わら収集の規模拡大を行う取組も支援します。具体的には、1年目は12,000円/10a以内、2年目は5,000円/10a以内で補助を受けられます。ただし、本施策において、飼料用米は対象外である点に留意しましょう。
国産飼料広域供給対策
国産飼料の広域流通を促進するため、品質基準の検討や品質表示による販売拡大、流通体制の構築に対する支援策です。
まず「品質基準の検討」については、国産飼料の流通を促進するため、品質基準を策定する取り組みやその基準を普及させる取り組みを推進します。
次に「品質表示による販売拡大」は、国産飼料生産者が品質表示を行いつつ販売を拡大する取組に対して奨励金を交付します。具体な交付対象は、「青刈りとうもろこし、ソルゴー(牧草 8,300円/t以内)」「子実用とうもろこし 12,200円/t以内」です。
また「流通体制の構築」として、国産粗飼料の取扱業者が、畜産農家と複数年の販売契約を締結して、国産粗飼料の広域流通を拡大する取り組みを輸送距離に応じて支援します。
輸送距離 | 50km~ | 100km~ | 500km~ | 1,000km~ | 1,500km~ |
補助単価 | 2,000円/t | 5000円/t | 10,000円/t | 15,000円/t | 20,000円/t |
耕畜連携マッチング
耕畜連携マッチングとは、農林水産省が都道府県と連携し、耕種農家の供給と畜産農家の需要を結び付ける支援策です。互いに飼料作物の供給先・供給元を見つけられるのはもちろん、農家同士の直接契約で販売価格を決定できます。
また、畜産農家の需要をより早期に把握できるようになったり、全ての飼料作物を対象にしたり 堆肥の要否および可否についても伝達可能となったりと、マッチングの仕組み・運営の改善も行われています。
06まとめ
耕畜連携とは、作物を栽培する「耕種農業者」と家畜を飼育する「畜産農業者」が協力し、資源を循環させる取り組みです。
耕畜連携のメリットは多岐にわたります。耕種農家にとっては「堆肥利用によるコスト減や地力増進」「省力栽培が可能」「連作障害の回避」など、畜産農家にとっては「国産飼料の安定的な確保」「飼料生産の外部化」「堆肥供給先の確保」などが挙げられます。
一方で、「畜産飼養数減による堆肥不足」「飼料の保管場所確保と品質管理の必要性」「輸送手段や費用負担などの協議が不可欠」といった課題もあります。
とはいえ本記事でも紹介した通り好事例は多く、国による支援策もあるため、検討する価値は十分にあるでしょう。
また、耕畜連携が有する「持続可能な農業の実現」の観点に共通して、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されているのはご存知でしょうか。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。
下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力
また、安定的かつ持続的な農業の実現に役立つ新着記事やセミナー、トレンドなどの最新情報を受け取れるメールマガジンもお勧めです。下記ページにて簡単に登録できますので、ぜひご活用ください。
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【参考】
耕畜連携ポータルサイト(農林水産省)
肥料をめぐる情勢(農林水産省)
放牧の部屋(農林水産省)
地域完結型による耕畜連携の現状と課題を考える(農林水産省)
近畿耕畜連携イニシアチブ(農林水産省 近畿農政局)
飼料用米の利用・需要拡大に向けた取組事例(農林水産省)
耕畜連携国産飼料利用拡大対策 (農林水産省)
飼料生産組織の規模拡大等支援(農林水産省)
国産飼料広域供給対策(農林水産省)
品質表示を行い飼料の販売量を増やしませんか?(農林水産省)
耕畜連携マッチングに参加しませんか(農水省)