2024.12.26
リモート農業とは?期待される効果や具体例、課題を紹介
リモート農業とは、インターネットやデジタル技術を活用して、遠隔から農作業や農場の管理を行う方法です。スマート農業のなかでも、リモート(遠隔)に関する技術を用いた農業を指しており、作業負担や労働力不足などの課題解消を期待されています。
そこで本記事では、注目のリモート農業について、期待される効果、具体例、導入する上での課題について紹介します。
01リモート農業とは
リモート農業とは、インターネットやデジタル技術を活用して、遠隔から農作業や農場の管理を行う方法です。IoT(モノのインターネット)、AI、ドローン、センサーなどのテクノロジーを活用することで、現地に直接赴かずにモニタリングや遠隔操作で農作業の一部を行えるのが特徴です。
なおリモート農業は、スマート農業(ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業全般)の一部でその中でも、遠隔(リモート)操作に特化したものと捉えると分かりやすいでしょう。
02リモート農業の導入で期待される効果
リモート農業の導入で期待される効果を、4つ紹介します。
作業負担の軽減
リモート農業の導入により、従来の手作業や現地での労働が多い農作業の負担を軽減できます。遠隔操作技術を活用すれば、トラクターや農機具を自宅や事務所から操作可能となり、移動や重労働を減らせます。
また、環境センサーと自動化技術を組み合わせることで、温室内の環境管理や収穫時期の判断なども自動化でき、農業従事者の肉体的・精神的な負担が軽くなります。
労働力不足の解消
日本の農業は高齢化や人口減少の影響を受け、労働力不足に直面しています。こうした状況に対してリモート農業は、少人数でも農地を効率的に管理できる技術を提供します。
例えば、リモートセンシングを使って作物の成長状況をモニタリングしたり、ドローンで肥料を散布したりすることで作業を効率化し、労力の負担を軽減します。また、農作業経験が浅い人でも遠隔でのアドバイスやテクノロジーによるサポートを受けることで早い段階から本格的な農作業が可能となり、即戦力となる労働力確保を期待できます。
経営規模の拡大
リモート農業の導入により、従来では手が回らなかった広大な農地や新たな作物への挑戦が可能になります。遠隔で複数の農地を一括管理できる技術を活用することで、効率的に経営規模を拡大可能です。
また、自動化された機器やシステムが日々の作業をサポートするため、管理にかかる時間や手間が削減され、他事業へのリソース配分もしやすくなります。これにより、収益拡大のチャンスを広げることが可能です。
生産性の向上
リモート農業は、自動制御技術を活用して農業資源(水や肥料など)の使用を最適化し、無駄を抑えられる点も強みです。例えば、センサーで土壌の水分量や養分量をリアルタイムで測定し、必要な場所に必要な量だけを供給することが可能となります。
また、AIを活用して病害虫の発生を予測し、事前に適切な対策を講じることで収量アップも見込めます。このように、リモート農業は持続可能かつ効率的な農業経営を実現し、生産性を向上させる手助けをします。
03リモート農業の具体例
リモート農業の具体例を、5つ紹介します。
トラクターなど農業機械の遠隔操作による農作業
トラクターや田植機といった農業機械を遠隔操作で稼働させる技術は、リモート農業の代表的な取り組みです。GPSや自動運転機能を搭載した機械では、オペレーターが現場にいなくても正確な作業が可能です。
これにより、広大な農地での作業効率を向上させるだけでなく、高齢化や人手不足に直面する農家にとっても、大きな助けとなります。特に、播種や収穫のように時間と精度が求められる作業で効果を発揮します。
遠隔リモートによる温室管理
センサーやIoTデバイスを活用することで、温室内の温度、湿度、CO2濃度、照明などの環境データを遠隔でモニタリングし、制御します。
スマートフォンやパソコンを使って、農場から離れた場所でもリアルタイムに温室内の状況を把握でき、必要に応じて設定を変更可能です。人の判断を要する遠隔制御だけでなく、システム上で完結する自動制御の技術研究も進んでいます。
リモートセンシングを用いた生育状況の遠隔管理
リモートセンシングにより、圃場の状態や作物の生育状況を遠隔地から正確に把握します。圃場に複数のセンサーを設置することで、温度、湿度、土壌水分量、日照時間といったデータをリアルタイムで収集し、農作物の成長状況や環境変化を「面」で監視できます。
これにより、適切なタイミングでの施肥や灌水が可能になり、省力化や資源の効率的な利用、生産性の向上を実現します。
スマートグラスを用いた遠隔指導
スマートグラスとは、メガネのような形状をした装着式の端末(ウェアラブルデバイス)です。
スマートグラスを装着すれば、遠隔地にいる営農指導者からの指導・アドバイスをリアルタイムで受けながらの作業が可能となります。
スマートグラスのカメラが作業者の視野を指導者に映し出し、ビデオ通話で会話しながら指導を行えるため、あたかも現地で直接アドバイスを受けているような感覚が得られます。また、両手がふさがっている農作業中でも使いやすいように、音声操作が可能なものもあります。
新規就農者や経験が浅い作業者でも、専門的なアドバイスを受けながら作業を進められます。そのため作業効率の向上だけでなく、技術習得のスピードアップも期待でき、農業現場全体の生産性向上を図れるでしょう。
オンラインによるリモート農業体験の導入
近年注目されているリモート農業体験は、農業の魅力を広く伝える新たな取り組みです。オンライン上で農作業の様子をライブ配信したり、参加者が遠隔操作で農作業に関わるプログラムを提供したりしています。
こうした体験型プログラムは、都市部に住む消費者や新規就農希望者にとって、農業への興味を深める貴重な機会となっています。また、地域農業のブランド価値を高める一助としても期待されています。
04リモート農業を導入する上での課題
リモート農業を導入する上での課題を、3つ紹介します。
導入コストが高くなりがち
リモート農業を導入する際には、高額な設備投資が避けられません。遠隔操作が可能な農業機械や、環境制御を行うためのセンサー、カメラなどの機器には初期費用がかかります。
また、それらの機器を運用するためのシステム構築やソフトウェアの導入、さらに保守・管理にかかるコストも考慮しなければなりません。特に中小規模の農家にとっては、これらの費用が大きな負担となることがあり、導入ハードルを高めています。
農場の舗装が必要な場合がある
リモート農業の機器を効果的に活用するには、農場の整備が求められる場合があります。例えば、無人トラクターや収穫ロボットを使用する場合、農場の地面が平坦で舗装されていなければ機械の動作に支障をきたすためです。
また、農薬散布機や収穫ロボットを利用する際には、これらの機械に適したほ場形成を行う必要があるため、新規でほ場を構えるなど追加の整備コストが発生する可能性があります。こうした整備には時間と資金が必要であり、導入ハードルを高める要因となっています。
実証中の技術も多く導入事例が限られる
リモート農業に使用される技術の中には、まだ実証段階にあるものも多く、導入事例が限られるのが実状です。例えば、ロボットを遠隔操作して作物を収穫する技術に関して、研究開発の最終段階に至っているものの、現場での活用はこれからというケースも見受けられます。
事例が少ない技術を導入するには、未知のトラブルや技術的課題への対応など一定のリスクを受け入れる必要があるため、どうしても導入ハードルは高まります。ただ、作業負担の軽減や労働力不足の解消など、リモート農業に対する期待は大きいため、今後の普及が望まれるところです。
05リモートワークで本業を行い、副業で農業を行う選択肢も
リモートワーク(テレワーク)の普及により、本業を自宅やリモート拠点で行いながら、副業として農業に取り組むスタイルも可能となりました。この選択肢は、農業に興味を持ちながらも、専業で行うには不安がある人にとって魅力的な働き方といえるでしょう。
副業として農業に取り組むことで収入源を多角化できるのはもちろん、自然に触れながらストレスを解消したり、地元の農産物を自給自足したりする喜びを味わえるといったメリットもあります。
一方で、リモートワークと農業を両立するためには、効率的な時間管理が求められます。農業に必要な知識や技術を学ぶための準備期間も必要です。それでも、働き方やライフスタイルの多様化が進むなか、この選択肢は新たな可能性として注目されています。
06まとめ
リモート農業とは、インターネットやデジタル技術を活用して、遠隔から農作業や農場の管理を行う方法です。スマート農業のなかでも、遠隔(リモート)に特化したものを指しており、作業負担軽減や労働力不足解消、経営規模拡大、生産性向上などを期待されています。
具体例として、トラクターなど農業機械の遠隔操作、遠隔リモートによる温室管理、リモートセンシングを用いた生育管理などを紹介しました。
高くなりがちな導入コストや導入時にほ場整備を要するケースなど課題はあるものの、農業の持続可能性を高める様々な効果から今後の普及が望まれます。また、機械技術側からのアプローチに応じて農業者側も積極的に変化していくことで、高効率な農業の実現へと加速度的に近づくことができるでしょう。
同様に農業の持続可能性を高める技術として、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が注目されているのはご存知でしょうか。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、産業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。自ら電力を賄いつつ収益の安定化を図ることで、高騰するエネルギーコストの低減や脱炭素への貢献、新たな付加価値の獲得などさまざまなメリットを期待できます。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。
下記ページでは、自然電力株式会社が持続可能な営農モデルの確立に取り組む「Re+Farmingプロジェクト」のもと各地で導入が進む営農型太陽光発電について、メリットや新型モデル、導入事例などを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Re+Farmingプロジェクト powered by 自然電力
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