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グリーントランスフォーメンション(GX)とは?GX推進事例を紹介

今世界中がグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みに関心を寄せています。日本でも、2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を政府が掲げたことで、企業や自治体が対応を求められている状態です。今回は、グリーントランスフォーメーション(GX)について解説したいと思います。

01グリーントランスフォーメーション(GX)とは?

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石エネルギー中心から太陽光発電などのクリーンエネルギー中心の産業構造・社会構造へ転換することです。日本では、2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指して、自治体や企業などが対応を進めています。

また、グリーントランスフォーメーション(GX)は、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して製品・サービスや組織そのものの変革を行う「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と合わせて取り組んでいくことで、より効率的で効果的な成果を発揮できます。例えば、太陽光発電などで得た再生可能エネルギーをより効果的に活用するには、やAIを活用した電力需要予測やデジタル技術を駆使したエネルギーマネジメントシステムの導入が不可欠です。また、カーボンニュートラルを達成するための重要な要素の一つである電気自動車は、さまざまなデジタル技術を駆使して製造されています。この様に、グリーントランスフォーメーション(GX)の達成の前段階で、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していることが大切です。

02グリーントランスフォーメーション(GX)が注目を集める理由

グリーントランスフォーメーション(GX)が注目される理由には、日本政府の2つの大きな方針があります。

2050年カーボンニュートラル宣言

2020年の10月に政府は温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルの実現を2050年までに行うことを宣言しました。当時の菅義偉首相が所信表明演説で発表したもので、「温暖化への対応は経済成長の制約とはならない。積極的に温暖化対策を行うことは、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる」と述べました。

GXを新たなビジネス機会と捉え、新しい産業である脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、次なる産業競争力の育成へとつなげていく機会として捉えられています。

ここから、日本はカーボンニュートラルのための政策立案に本腰を入れ、同年12月には、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」という14分野における実行計画を発表したのです。

環境省はウェブ上で2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを紹介しています。ここでは、新たな地域の創造として、ゼロカーボンシティーなど再生可能エネルギーの主力電源化の助けとなる施策支援などをあげています。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて(環境省)

また、その翌年の2021年6月に経済産業省が2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しています。経済産業省では、目標実現のための具体化と脱炭素効果以外にも国民生活にメリットを提示できるように、予算、税、金融、規制改革・標準化、国際連携などさまざまな政策を策定していくことを表明しています。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました(経済産業省)

グリーントランスフォーメーション(GX)が重点投資分野の一つに

2022年の岸田内閣では、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」が閣議決定され、その中で重点投資分野の一つとしてグリーントランスフォーメーション(GX)についても述べられています。そして、官民共同で150兆円規模の投資を実現する方針が掲げられたのです。

03グリーントランスフォーメーション(GX)の海外の取り組み事例

グリーントランスフォーメーション(GX)は、日本だけでなく海外でも取り組みが進んでいます。

1. Apple Inc.
Appleではデータセンターで使う電力を風力発電などの再生可能エネルギーでまかない、カーボンニュートラルを達成しています。さらに、製造工程などにおいても2030年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しています。

2. Microsoft
Microsoftでは実質的に排出するCO2よりも多くのCO2を除去する「カーボンネガティブ」を2030年までに達成し、2050年までには創業以来排出してきたすべてのCO2を回収することを目指しています。

3. Amazon
Amazonは2040年までに実質ゼロカーボンを実現すると表明。さらに、電気自動車メーカーに出資し、配送用電気自動車を10万台購入して、2030年までにCO2排出量を年間400万トン削減する予定です。

04グリーントランスフォーメーション(GX)に対する日本の戦略

先述のように、グリーントランスフォーメーション(GX)が政府主導で始められ、大きな目標が設定されました。日本がグリーントランスフォーメーション(GX)に対して行った具体的な取り組みを2つ紹介します。

GX実行会議

2022年7月岸田内閣は首相を議長とするGX推進会議を設置しました。このGX実行会議では、家庭・業務・産業・運輸の各分野において省エネを徹底することと、再生可能エネルギーや原子力などのエネルギー自給率を向上させることで、脱炭素電源への転換を進めることを決めました。

また、GX経済移行債などを活用して先行投資支援を行うことや、カーボンプライシングなどを使った先行するGX投資のインセンティブを設けるなど新たな金融手法を使うことも決定しています。

GXリーグ

さらに、経済産業省はGXリーグの設立を発表しています。GXリーグとは、産官学が協力し、カーボンニュートラルを実現するための議論と新しい市場創出のための実践を行う場です。企業の成長と国民の幸せ、地球環境への貢献が同時に実現できることを目指しています。

GXリーグ基本構想では、GXリーグの取り組みを通じて目指す世界や参加企業の考え方、設立準備に向けた進め方などについて大きな方向性を示しています。

05グリーントランスフォーメーションへの企業・団体の取組事例

1 一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)
経団連は、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けた提言を発表しています。政府に対して早急な実行策の提示を求めるとともに、エネルギーを使う側と供給する側がそれぞれで行うべき対応策を求めました。例えば、エネルギー供給構造の転換については、エネルギーミックスの実現に加え、電力システムの次世代化を求めています。また、使う側では生産プロセスの変革や自動車の電動化に向けた支援策も挙げています。

2 トヨタ自動車株式会社
トヨタ環境チャレンジ2050について
トヨタ自動車は、人と車と自然が共生する社会を目指して、トヨタ環境チャレンジ2050を掲げています。車両製造・物流・走行などの自動車のライフサイクル全体のCO2排出実質ゼロやグローバル工場のCO2排出実質ゼロなどを目標に掲げ、車による環境への負荷をゼロに近づけるためにあらゆる努力を行い、持続可能な社会の実現に貢献するためのチャレンジを実施していくと発表しています。

3 NTTグループ
NTTグループはグリーンボンドフレームワークという基本方針を掲げています。事業活動を通じた社会的課題の解決に取り組み、人と社会と地球がつながる安心・安全で持続可能な社会の実現を目指しています。例えば、ICT技術そのものが社会の環境負荷低減に貢献するものとし、テレワークやバリューチェーンのデジタル化・電子化など社会のエネルギー使用を抑制することを目指した取り組みをしています。

06グリーントランスフォーメーションへの自治体の取組事例

各企業だけでなく、さまざまな自治体でもグリーントランスフォーメーション(GX)への取り組みは行われています。具体的に各地の自治体の取り組みを見ていきましょう。

1 群馬県佐波郡玉村町
自然災害への備えと気候変動への対応策として2021年に「玉村町国土強靭化地域計画」を策定。防災拠点となる役場・保健センターの屋上への太陽光発電設備の設置、駐車場へのソーラーカーポート設置、蓄電システムの導入などを行いました。さらに庁舎入口に太陽光発電状況が分かるモニターを設置し、可視化することで、住民の環境意識向上に役立てているそうです。

関連記事【自治体にオススメ!】ソーラーカーポートとは?メリットや設置時に気を付けるポイントを解説

2 滋賀県米原市
滋賀県米原市は、脱炭素化と地域活性化を併せて進めるために「ECO VILLAGE構想」を打ち出しています。耕作放棄地に太陽光発電設備を設置し、ソーラーシェアリングを実施することで、農作物の栽培をしながらCO2の排出削減を目指します。

こうした耕作放棄地の活用モデルを行政が自ら示すことで、市民への啓発効果も期待されているようです。

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3 愛知県豊田市
愛知県豊田市では、東京大学や名古屋大学と協力して、山間地域における地域住民への超小型電動自動車モビリティのリース事業を行っています。

予算などさまざまな理由により、公共交通機関の維持が困難となった山間部で高齢者自らが運転をして移動できるように、超小型電気自動車を導入しました。月額6,600円という破格の値段で超小型電気自動車を借りられて、人気を集めています。

07グリーントランスフォーメーション(GX)のために自治体に求められること

グリーントランスフォーメーション(GX)を進めていくためには、国、企業、自治体がそれぞれできることをする必要があります。大手企業ではグリーントランスフォーメーション(GX)の動きが目立ってきていますが、まだまだ中小企業への浸透は十分ではない状態です。

地域経済を支えている中小企業が積極的にかかわっていくためには、自治体が率先してグリーントランスフォーメーション(GX)への動きを加速し、地域企業へのサポートを行う必要があるでしょう。

そのため自治体は補助金などの金銭的なサポート体制を整備することはもちろん、どのようなことをすればいいのかといった具体的な相談にも乗れるようなグリーントランスフォーメーション(GX)に対する知識、情報を集めておくことも重要です。また、グリーントランスフォーメーション(GX)に対する有用な人材確保や教育も不可欠だといえます。

例えば、京都大学先端政策分析研究センターの研究員 ⼭東 晃⼤氏が、グリーントランスフォーメーション(GX)の司令塔となるべき自治体について、体制・財源・人材を整備した上で、自主事業のみに頼らない協業やGXに取り組む地域内企業の窓口となる必要があると発信しています。

自治体がグリーントランスフォーメーション(GX)で実行可能なことを具体的に紹介しており、全国の地方自治体にとって参考になる内容が含まれます。

08まとめ

今後、グリーントランスフォーメーション(GX)は日本はもちろん、世界中の国にとって重要度がますます増していくと思われます。カーボンニュートラルに向けてグリーントランスフォーメーション(GX)を進めることは、国、企業、自治体にとって不可欠であり、それぞれが自分たちにできることを少しずつでも実行し、持続可能な地域づくりを目指すことが求められています。

【参考】
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて(環境省)
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました(経済産業省)
GX     実行会議(内閣官房)
GXリーグ基本構想(経済産業省)
Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束
2030 年までにカーボンネガティブを実現(Microsoft)
グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて(日本経済団体連合会)
2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする「気候変動対策に関する誓約」への参加企業が100社を突破(Amazon)
TOYOTA ENVIRONMENTAL CHALLENGE 2050(トヨタ自動車)
「自治体GX」の司令塔 日本版シュタットベルケの可能性(京都大学先端政策分析研究センター)
災害への備えと脱炭素化を目指し、再エネ設備の導入と空調・照明設備の更新で、平常時も快適な空間へとリニューアル。玉村町様[群馬県佐波郡](パナソニックホールディングス株式会社)
玉村町国土強靭化地域計画を策定しました(玉村町)
米原市:農山村の脱炭素化と地域活性 ~米原市「ECO VILLAGE構想」~(滋賀県)
名古屋COI拠点事業「足助プロジェクトにおける実証実験」(豊田市)

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