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アグリテックとは?実現している最新農業テクノロジー9選

アグリテックとは、ICTやロボット技術を用いて農作物を生産する新しい農業です。農業にテクノロジーを導入することで、栽培技術の継承や担い手の確保、作業の省力化など、農業の課題を解決に導くことが期待されています。

本記事では、農業者に向けてアグリテックの概要や市場規模などを解説します。アグリテックの導入事例も紹介しますので、「具体的にどのようなものであるのか」「導入すると農家の生活はどう変わるのか」といった疑問をもっている方は、ぜひ参考にしてください。

01アグリテック(Agritech)とは?

アグリテックとは、ICTやロボット技術を用いて農作物を生産する新しい農業です。ICTやロボット技術を活用することで、少人数で大規模かつ高品質な農業生産が実現できると期待されています。

アグリテックの導入が進めば、農業者の高齢化や担い手不足、栽培技術の継承問題など、農業界が抱えている課題を解決に導くことができます。

アグリテックとは、Agriculture(農業)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、現在までにさまざまな農機具やサービスが開発されています。日本の農林水産省が推進している「スマート農業」と同義で使用されています。

アグリテックの活用例をあげると次の通りです。

● ICT技術による農業技術の継承
● 自動走行ロボットトラクターや遠隔操作可能な水位管理システムによる農業の省力化・経営規模の拡大
● センシングデータの蓄積・分析による農作物の病気予防や品質向上

02アグリテック市場規模

近年注目されているアグリテックですが、どれくらい市場が拡大しているのでしょう。ここからは世界と日本のアグリテック市場を解説します。

世界の市場規模

世界のアグリテック市場の推移は次の通りです。

世界のアグリテック市場は年々上昇しており、2019年から2025年の間に約132億ドルから約220億ドルまで上昇するとされています。

日本の市場規模

日本のアグリテック市場の推移は次の通りです。

日本のアグリテック市場は2017年から2025年にかけて、約7億ドルから約14億ドルまで上昇するとされています。

03日本のアグリテック導入事例9選

日本ではさまざまなアグリテックが導入されており、労働環境の改善や農作物の品質向上に役立っています。ここからは、導入事例を参考にして「どのように役立っているのか」「農家の生活はどのように変化しているのか」を解説していきます。

除草作業の無人化・省力化の実現|ロボット草刈機

ロボット草刈機を導入したりんご園では、除草作業の無人化・省力化を実現しました。

除草作業の無人化・省力化により、農業者の生活は次のように変化しています。

●ロボット草刈機を導入したりんご園
・1年間の除草作業時間が20時間から1時間(10a)へと大幅に削減できた
・夏の炎天下のなかや傾斜地での作業が不要となったため、農業者の身体的負荷や人件費を削減できた

人手による除草作業は、草刈り機からの石跳ねやキックバック(刈刃の跳ね)により事故が発生する可能性があります。草刈りの自動化は、農業者の身体的負担を軽減するだけでなく安全な農業につながります。

また、将来的に追加導入を実施して、除草作業を完全に無人化・省力化できれば、さらに経営を効率化できるでしょう。

効率化だけでなく防災⼒も向上|ほ場⽔管理システム

ほ場⽔管理システムを導入した稲作農家は、スマートフォンやパソコンから水位・水温の確認と遠隔操作による水管理ができるようになり、天候に合わせてタイムリーな対応が実現、収穫量や品質が向上できています。

実際の効果は次の通りです。

●ほ場⽔管理システムを導入した稲作農家
・5月〜8月までの水管理の作業時間が76%削減できた
・深水管理により幼穂を低温から守ることができ、収穫量・品質向上につながった
・田んぼダムの防災・減災機能により洪水被害の対策としても期待できる

ほ場⽔管理システムのデータが蓄積していけば、その地域に適した水管理の方法が共有できるようになるでしょう。

以下の記事では、ほ場水管理システムなどを導入して稲作に取り組む方のインタビューをご紹介しています。

関連記事ソーラーシェアリング×スマート農業で難易度の高い米麦の生産に成功!讃岐の田んぼ 監崎さんの挑戦

初心者でも作業精度・速度の向上|ロボットトラクター

ロボットトラクターを導入した稲作農家では、自動運転システムにより経験の浅い農業者でも、熟練農業者と同等の作業精度・速度で作業ができています。

実際の作業の様子は次の通りです。

●ロボットトラクターを導入した稲作農家
本来の播種作業は、ハンドル操作をしながら播種の深さや覆土の状況を確認する必要があり、熟練農業者でも難しい作業であった。しかし、自動運転システムによりハンドル操作が不要になったため、経験の浅い農業者でも問題なく作業できるようになった

ロボットトラクターの導入は、農業者の熟練度によらない安定した作業精度と速度を確保するとともに作業の負担軽減につながります。

収穫作業の軽労化の実現|パワーアシストスーツ

パワーアシストスーツを導入したスイカ農家は、作業負担を軽減でき労働環境の改善を実現しています。

実際に活用している農業者からは次のような声があがっています。

●パワーアシストスーツを導入したスイカ農家
・果実を安定した姿勢で運搬できるため傷や割れなどが減少した
・収穫の際に落としてしまう事故が減少した
・長時間労働が原因である腰痛が軽減した

パワーアシストの利用が進んでいけば、高齢化や担い手不足などによる生産力の低下の助けとなるでしょう。

経営拡大の実現|環境制御システム

ビニールハウス内の環境制御システムを導入したトマト農家は、作業の省力化により農業経営の拡大が実現しています。

作業の省力化の内容は次の通りです。

●環境制御システムを導入したトマト農家
・ハウス内の天窓・側窓・遮光カーテン・暖房機・潅水装置など、あらゆる設備を遠隔操作できるようになり、日々の作業時間を削減できた
・作業にゆとりができたことで、作付け面積を20aから50aに拡大できた

環境制御システムなどを利用することで、家族経営でも農業規模を拡大することができた優良事例です。

安定生産と労働時間の削減に成功|かん水の自動化

かん水の自動化を導入した農家は、適切な水管理により安定生産と労働時間の削減を実現しています。

具体的な内容は次の通りです。

●かん水の自動化を導入した農家
・かん水に必要となる作業時間と労働経費が90%以上も削減できた
・肥料もデータに基づいて適切な量を撒くことができ、肥料代を40%以上削減できた

データが蓄積・分析することで、かん水施肥をより適正化できるため、さらなる収益向上が期待できるでしょう。

また、この農家は経験の浅い農業者でしたが、システムを導入することにより安定生産と労働時間の削減を実現しています。アグリテックの導入は新規就農者の後押しにもなるでしょう。

次世代へ新たな農業を提案|営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を導入した観光農園では、売電収入を得ながら経営をするという新たな農業を実践しています。

実際の取り組み内容は次の通りです。

●営農型太陽光発電を導入した観光農園
・10aの農地で年間200万円(単価36円/kWh)の売電収入を得ることができている
・パネル下で栽培するブルーベリーも大粒で色目も良く品質が良い
・パネル下は日陰が生じるため炎天下の作業が楽になり、乾燥も防ぐことができている
・観光農園の利用者からも涼しいと好評である

周辺の農業者からも協力したいという声があり、営農型太陽光発電の普及と未利用農地の再生が実現しています。このように、営農型太陽光発電は注目されつつあり導入件数も増えています。

導入件数が増加している理由などを知りたい方は、ぜひこちらを参考にしてください。

関連記事注目のソーラーシェアリング。導入件数増加の理由とは?

乳牛のストレスも軽減|搾乳・エサ寄せロボット

搾乳・エサ寄せロボットを導入した酪農家は、搾乳やエサ寄せの重労働を無くすことに成功しています。

その他にも次のような効果が見られました。

●搾乳・エサ寄せロボットを導入した酪農家
・重労働から解放されたことで、繁殖管理など他の作業に時間を割けるようになった
・乳牛のストレスが低下して乳量が増えた(10,069kg/頭→11,790kg/頭)
・労働時間が削減できた(9.6時間/⼈→ 7.4時間/⼈)

重労働を無くすことは、酪農家が労力を費やすべき繁殖・蹄管理などの時間確保につながります。

分娩の心理的負担・労力軽減|分娩監視システム・牛舎内監視カメラ

乳牛の分娩は、長期的な心理的負担や頻繁な見回りが必要になるため、酪農家に大きな負担が伴います。しかし、分娩監視システム・牛舎内監視カメラを導入したことで、分娩に対する心的負担や労力の削減が実現できています。

具体的な内容は次の通りです。

●分娩監視システム・牛舎内監視カメラを導入した酪農家
・分娩時期を予測して通報してくれるため、分娩準備と農作業のスケジュール調整が容易になった
・監視カメラにより牛舎から離れたところでも管理できるため、見回りの労力が削減できた

分娩の兆候を早期発見できるため、分娩事故も減少できるでしょう。

04まとめ:アグリテック市場は拡大しており将来性がある

国内だけでなく世界でもアグリテック市場は拡大しており将来性は高まっています。それぞれの農家の用途に合ったアグリテック製品・サービスを導入できれば、農家の作業効率や収益が向上するだけでなく、他の農作業やプライベートの時間確保にもつながります。

アグリテックの導入を考えている農業者は、それぞれの製品・サービスの特徴と現状抱えている課題を照らし合わせて、最大限効果を発揮できるように努めましょう。

【参考】
スマート農業とは、どのような内容のものですか。活用によって期待される効果を教えてください。(農林水産省)
特許出願技術動向調査 結果概要(特許庁)
農業新技術_製品・サービス集(農林水産省)
ロボット草刈機導入による除草作業の無人化・省力化の実現(農林水産省)
刈払機(草刈機)の使用中の事故にご注意ください!(消費者庁)
ほ場⽔管理システムの導⼊による⽔⽥の⽔管理作業の省⼒化(農林水産省)
ロボットトラクター及びほ場管理システムの導入による農作業の成熟化(農林水産省)
パワーアシストスーツの導⼊によるすいか収穫作業の軽労化(農林水産省)
環境制御システムの導入による経営規模拡大の実現(農林水産省)
ICT制御によるキュウリの安定⽣産と軽労化(農林水産省)
営農型太陽光発電 取組事例集(一覧)(農林水産省)
搾乳ロボット・エサ寄せロボットの導⼊による省⼒化(農林水産省)
分娩監視システムと牛舎内監視カメラの導入による家畜管理作業の省力化(農林水産省)

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