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【酪農家向け 】酪農ヘルパーとは?利用料金や依頼時のポイントを紹介

酪農ヘルパーとは、酪農家が休日を取得できるように、代理で牛の世話をしてくれる人のことです。

酪農家は生き物である牛を扱うため、休日を取得しづらいのが実状です。週末は休みたいからといって一時的に搾乳や世話をストップすることはできません。こうした課題を解消するための有効な手段として、酪農ヘルパーが注目されています。

そこで今回は、酪農ヘルパーの基本情報や現状、利用料金、依頼する際のポイントについて紹介します。酪農ヘルパーの利用を検討している方やより効果的に活用したい方にとって、役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

01酪農ヘルパーとは

酪農ヘルパーとは、酪農家が休日を取得できるように、代わりに搾乳やエサやりなど牛の世話をしてくれる人のことです。日本各地にある酪農ヘルパー事業実施団体から派遣されます。

乳牛が乳房炎などの病気にかかるリスクを避けるためには、毎日の搾乳や世話が欠かせません。ただ、酪農家にも冠婚葬祭やケガ、病気、家族との大切なイベントなどが発生します。酪農ヘルパーは、主にこうした場面で活躍しているのです。

また、酪農ヘルパーには、専任ヘルパーと臨時ヘルパーが存在します。専任ヘルパーは各事業実施団体に会社員と同様に勤務し、基本的には毎月決まった日数働きます。一方で臨時ヘルパーは、専任ヘルパーが不足した際などにサポートする役割であり、兼業で従事しているケースもあります。

02酪農ヘルパーの利用料金

酪農ヘルパーの利用料金は、酪農ヘルパー事業実施団体ごとで異なります。目安としては、搾乳牛30頭の酪農家が1名を1日派遣した場合で1万5000円ほどと捉えておきましょう。

料金は、以下の計算式が基本となっています。
酪農ヘルパー利用料金=(基本料金+牛頭数)×派遣人数×利用日数

加えて、以下のような条件により料金が変化する場合があるため、利用前に確認しておきましょう。

● 牛の種類(搾乳牛・乾乳牛・未経産牛・育成牛)
● 日曜・祝日の利用
● 非組合員が利用する場合
● パイプラインミルカーとバーンクリーナーの有無

03酪農ヘルパーの現状

酪農ヘルパーの現状について紹介します。酪農ヘルパーを利用にするあたり、以下のような現状を理解しておきましょう。

離農抑制に貢献

酪農ヘルパーの活動は、離農抑制に貢献しています。酪農ヘルパーのおかげで酪農家は休日を取得しやすくなっており、心身への負担が軽減していることが要因といえるでしょう。

酪農ヘルパー全国協会の調査結果によると、2005年から2020年で酪農ヘルパーを利用できる状態にあった酪農家は、そうでない酪農家に比べて減少数が約半分に抑えられたというデータもあります。

新たな人材確保が課題

酪農ヘルパーの人数が減少しています。専任酪農ヘルパー数は、ピーク時であった2005年の1,291名から減少傾向にあり、2020年時点で約20%減の1,024名となりました。さらに臨時酪農ヘルパー数は、ピーク時1997年の1,532名と比べると2020年には約50%減の749名にまで減少しています。こうした状況から、とくに臨時ヘルパーの確保が課題となっているのです。

利用戸数は減少

酪農ヘルパーの利用戸数は減少傾向が続いています。2019年の酪農ヘルパー利用戸数は、全国で9,043戸であり、前年比95.4%です。5年間の変化をみると2014年の11,117戸から2019年の9,043戸となり、2,000戸以上減少していることが分かります。この傾向は、全国的な酪農家数の減少が影響しているといえるでしょう。

酪農家ごとの年間平均利用日数が増加

酪農家ごとの年間利用日数には増加傾向がみられます。酪農ヘルパーの年間平均利用日数は2005年時点では17.2日でしたが、2019年時点では23.6日にまで増加しています。

前項で紹介したように利用戸数は減少傾向にあるものの利用日数が増加しているため、やはり酪農ヘルパーの人材確保は必要といえるでしょう。

非農家出身者の増加

従来は酪農家の子弟が酪農ヘルパーとなるケースが多かったのですが、昨今は非農家出身の酪農ヘルパーが増加しています。酪農の実作業経験が浅いものの知識や技術に関しては、酪農ヘルパー事業実施団体ごとに教育体制が整備されているため安心です。また、非農家出身者の育成やフォロー、定着化のための取り組みも推進されています。

04酪農ヘルパーへ依頼する際のポイント

酪農ヘルパーへ依頼する際のポイントを5つ紹介します。

対象エリア内であることが前提

酪農ヘルパーの利用は、対象エリア内であることが前提となります。酪農ヘルパーへの依頼を検討する際には、まずは自身の牧場が酪農ヘルパー事業実施団体の管轄内であることを確認しましょう。

なお、酪農ヘルパー事業実施団体の一覧は、酪農ヘルパー全国協会ホームページ内の「中央・都道府県団体名簿」にて確認可能です。

対応可能な業務を確認してから依頼する

酪農ヘルパーへ作業を依頼する場合は、事前に対応可能な作業を確認してから依頼しましょう。酪農ヘルパーに依頼できる業務は、搾乳・エサやり・牛舎の清掃・子牛の世話(ほ乳)などです。

なかには搾乳を中心に基本業務を設定して、その他の業務に関しては追加料金での対応とする団体もあるため、事前の確認が欠かせません。

現場での作業指示は具体的に行う

酪農ヘルパーに対する現場での作業指示は具体的に行うようにしましょう。搾乳やエサやり、清掃など酪農家によって、作業の進め方や扱う機器や道具なども異なります。

作業項目から作業の実施手順、機器や道具の使い方まで、認識違いや手違いが生じないように具体的な説明を心がけましょう。とくに昨今は非農家出身者も多いため、作業依頼は慎重に行うべきといえます。

依頼の予約は可能な限り早めに行う

依頼の予約は早めに行いましょう。なかには酪農ヘルパーが不足している地域もあります。そのため、急な依頼となってしまっては、酪農ヘルパーを確保できないといった事態になりかねません。

依頼予定日が明確になっているのであれば1~2か月前、遅くとも2週間前には予約するようにしましょう。ただし、ケガや病気など緊急の場合はこの限りではありません。

事業実施団体ごとの利用ルールを理解しておく

酪農ヘルパー事業実施団体ごとに、利用ルールは異なります。例えば、利用登録をすると毎月1回以上の利用が原則であったり、毎月の利用回数に5回などの制限が設けられていたりします。前項の依頼予約についても独自のルールが定められているケースがあるため、事前確認は不可欠です。

また、利用形態には「朝と夕方」「夕方と朝」の大きく2タイプあり、酪農ヘルパー事業実施団体ごとに異なるため、あわせて確認しておきましょう

05まとめ:より安定した酪農経営を実現するために

酪農ヘルパーとは、酪農家が休日を取得できるように、代わりに搾乳やエサやりなど牛の世話をしてくれる人のことです。日本各地にある酪農ヘルパー事業実施団体から派遣されており、専任ヘルパーと臨時ヘルパーが存在します。

酪農ヘルパーの利用料金は、搾乳牛30頭の酪農家が1名を1日派遣した場合で1万5000円ほどです。ただし具体的な料金は団体ごとで異なるため、あくまで目安と捉えておきましょう。

酪農ヘルパーの現状についても紹介しました。酪農ヘルパーは離農抑制に貢献する一方で、人材不足を課題としています。酪農ヘルパー利用戸数は減少傾向にあるもの、利用日数は増加しているため人材は不足しがちです。昨今は、非農家出身の酪農ヘルパーも増えています。

酪農ヘルパーへ依頼する際のポイントについて、「対象エリア内であることが前提」「対応可能な業務を確認してから依頼する」「現場での作業依頼は具体的に行う」など5つ紹介していますので、依頼時の参考としてください。


以上から酪農ヘルパーは酪農家の心身の負担を大きく軽減してくれるものの相応の費用は必要です。 そこで昨今、農畜産業において収益安定化の観点からも注目されているのが「ソーラーシェアリング」です。

ソーラーシェアリングとは、農畜産業を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、従来通りの農畜産業を営みながら太陽光発電も行う取り組みです。農林水産省による推進支援もあり、全国的に広がりつつあります。

作業に必要な電力を自ら賄うことでコストを削減しつつ、売電で新たな収入源にすることもできます。コスト削減や新たな収入によって確保できた予算を酪農ヘルパー利用に充てることも可能です。

こちらの記事では、ソーラーシェアリングのパネル下で豚の放牧を実践されている株式会社グリーンウィンドのインタビューを紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事家畜も育てる!ソーラーパネル下で広がるグリーンウィンドの循環型農業

【参考】
 一般社団法人 酪農ヘルパー全国協会ホームページ
酪農ヘルパー利用組合事例報告(一般社団法人 酪農ヘルパー全国協会)
酪農ヘルパー情報(一般社団法人 酪農ヘルパー全国協会)
酪農ヘルパーの利用実態調査結果(一般社団法人 酪農ヘルパー全国協会)

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